金価格ディリーレポート(2020年3月30日)コメックスのショートが記録的に減少後にコロナウイルスのロックダウンで金価格のプレミアムが下げる
金価格は月曜日に先週の2008年来の週間の上げを記録後多少下げています。
先週は、コロナウイルスの感染が拡大する中で、コメックスの金先物・オプションのショートポジションが過去最速で減少し、金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアへの資金流入は世界金融危機以来の最大の量となっていました。
先週末にトランプ大統領が外出自粛を求める措置を4月半ばの復活祭から来月末まで延長する方針へと変え、同政権の対策チームの感染症専門家が、数百万人が感染し、10万から20万人が死亡する恐れがあると言う見解を示す中で、月曜日昼過ぎに世界の株価が下げ、ドルインデックスが4営業日連続の下げから反発する中で現金化と思われる金売却が起こっている模様です。
本日昼過ぎの金現物価格は、先週の週間の8%の上昇から、トロイオンスあたり1618ドルと先月末から0.7%下げていました。その間、コメックス先物の4月限月の金価格はトロイオンスあたり1642ドルと、先週の100ドルの乖離から、24ドルと多少狭めていました。
コロナウイルス感染拡大を防ぐために主要国が人の移動を制限することで、スイスの主要精錬所の閉鎖や、航空便の欠航などにより、このロンドンから他の主要地金取引場所への地金の移送問題は継続しています。
そして、コメックスの強気トレーダーが現物のデリバーリーを望んだ場合に備え、資金運用業者のショートポジションは先週火曜日に78%前週比減少させていたことが、最新のデータで明らかとなりました。
この減少率は過去最大のもので、そのショートポジションは2009年9月以来の低さへと下げていました。
「金の先週月曜日と火曜日の急激な上昇は、信用リスクに直面した資金運用業者による大幅なショートカバーによるものでした。」とブリオンバンクのFCStoneのRhona O'Connell氏は述べています。
また、金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は先週週間で6%増加し、10年ぶりの週間増加量となっていました。そして、その残高は3年半ぶりの高さでもありました。
ブリオンボールトにおける金購入需要も3月は記録的な数値となっており、先週火曜日までにすでに1.2トンの金が購入され、顧客が保有する金の総量は40.2トンと過去最高となっていました。
そして、欧州ではすでに金貨や小型の金地金が売り切れとなる中で、ユーロ建て金価格は、本日昼過ぎにトロイオンスあたり1466ユーロと先週終値から0.3%上昇していました。この間、コロナウイルスの感染が拡大しているイタリアでは、昨日までに1万人が死亡していることが伝えられ、すでに外出禁止令が今週の金曜日を超えて延長することが発表されていました。
また、英国ポンド建ての金相場は、先週の史上最高値からほぼ6%下げのトロおインスあたり1304ポンドへと下げていました。この間、すでに新型コロナウイルス感染で7日間の自宅での休養をしていたチャールズ皇太子は体調を戻し自宅待機を終えています。しかし、ボリス・ジョンソン首相の主席アドバイザーのドミニク・カニング氏もまたジョンソン首相、マット・ハンコック健康省大臣同様に新型コロナウイルス感染陽性が明らかとなっていました。
欧米の一般投資家による金投資が進む中で、中国の上海黄金交易所のロンドン受け渡し価格との差は、トロイオンスあたりほぼ20ドルと、世界最大の金消費国の需要が減少していることを示唆するものとなっていました。
なお、新型コロナウイルス感染拡大が昨年11月にまず伝えらえら、その当初の震源地でもあった湖北省の外出禁止令は先週水曜日に解除されたものの、他の地方で働いている6百万人の湖北省の住民は、他の省が政府の意図に反してその受入を拒んでいるために、未だその地に戻ることが許されていません。
そのような中、本日人民銀行は予想外の7日物リバースレポ金利を20ベーシスポイント下げる利下げを行っています。この下げ幅は5年ぶりの大きさとなります。
また、金消費世界第2のインドに於いても、本日の現地通貨建て金価格とロンドン価格との差は、インド政府が3週間の外出禁止令を出したことで、6ヶ月ぶりの大幅なディスカウントとなっていました。
新型コロナウイルスによる経済的打撃を軽減するために、主要国は立て続けに景気刺激策を発表する中、オーストラリアは本日今後6ヶ月間に行われる1300億豪ドル相当の賃金保障を含む政策の発表しています。
また、日銀は本日4度目の大量の株価指数連動型上場投信信託購入を行い、商業銀行への規制緩和の可能性も示唆されています。