金市場ニュース

金価格ディリーニュース(2023年5月22日)投機家が強気ポジションを減少させる中で、金相場はパウエルFRB議長のハト派的コメントの上げ幅を半減

金相場は、投機筋がコメックス先物・オプションの強気ポジションを3月上旬以来最も早いペースで減少させる中、パウエル米連邦準備制度理事会議長が米中央銀行の利上げを停止する可能性を示唆したことによる上げ幅の30ドルを15ドル戻していました。
 
米国がデフォルトに陥る6月の期限を前に、バイデン大統領とマッカーシー共和党下院議長との間で債務上限に関する協議が続く中で、ドルインデックス(米国通貨の主要通貨に対する価値を示す指標)は、前週金曜日に6日間の上昇を止め、6ヶ月ぶりの高値から下げた水準から、月曜日昼過ぎに多少下げて推移していました。
 
米国債10年物利回りは、政府機関や多くの金融機関、商業施設の借入コストの指標となる利回りですが、月曜日午前中の下げを回復して、3月中旬以来の高水準となる3.69%まで上昇していました。
 
パウエルFRB議長は、金曜日にベン・バーナンキ前FRB議長との意見交換の中で、「(FRBの)政策金利は、我々の目標を達成するために、銀行業界の動向が信用状況の逼迫に寄与しており、経済成長と雇用とインフレに影響を与えていることからも、そうでなければならないほど 上昇する必要はないかもしれない。」と述べていました。
 
また、6月の会合で利上げを行うかどうかは「 僅差だ」と、利上げを決定する連邦公開市場委員会の2023年投票メンバーであるミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は月曜日に述べ、 同僚のFRBメンバーが先週行ったコメントとも矛盾した意見を述べていました。
 
コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションとドル建て金価格の推移 出典元 ブリオンボールト
 
米国の規制機関であるCFTCの最新のデータによると、ヘッジファンドやその他のレバレッジを効かせた投機家が、先週火曜日までの週で、グループとして金に対する強気のポジションをを6%減らしていました。
 
この資金運用業者は、弱気なポジションも17%増やし、3月21日に終わる週(金価格が史上3度目の2000ドルに達する前)以来の高さとなり、全体としてはネットロングポジションを10%減少させ、金価格がロシアのウクライナ侵攻を巡る米国と欧州の対ロシア制裁で急上昇した2022年3月初旬以来の高さから、10週間ぶり大規模な急落となっていました。
 
また、投機筋はこの同時期の一週間に、より工業的に有用な貴金属の銀の価格が7%近く下げた際に、銀に対するネットロングポジションを半分に減少させていました。
 
この年間需要の約50%を工業用途である 銀の価格は、7週間ぶりの安値からの前週金曜日に上昇していたものの、その上げ幅を半分失い、月曜日にはトロイオンスあたり23.70ドルまで下げていました。
 
米ドル建て金価格はロンドン時間昼過ぎに、トロイオンスあたり1969ドルまで下落し、スポット市場の地金卸売価格は、英国ポンド建てで0.3%下落し1585ポンド、ユーロ建てにおいては0.6%下落し1823ユーロとなっていました。
 
あるFXストラテジストはロイター通信に対し、「市場は 債務上限に関しては合意されると見ており、同時にFRBが利下げ時期を先延ばしにしたこと、結果的にドルにとってプラスに働いている」と述べていました。
 
債務上限をめぐる議論により、米国がこれほどデフォルトに近づいたのは2011年夏のことで、この時も民主党の大統領と上院、共和党主導の下院という組み合わせでした。
 
この際に議会は最終的にデフォルトを回避しましたが、 米国のトリプルAの信用格付けが初めて引き下げられ、これをきっかけに株価が大きく下落し、1ヵ月後には金価格がトロイオンスあたり1920ドルにまで上昇していました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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