金市場ニュース

金価格ディリーニュース(2023年4月3日)OPEC減産による不透明性からも金価格は過去最高値へと近づく

金価格は、石油輸出国機構(OPEC)とロシア等非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の突然の減産発表を受けて原油価格が月曜日市場開始とともに跳ね上がったため、一時的に下落した後、先週の月間終値の新記録を取り戻し、さらに上昇していました。
 
原油輸出国23カ国は、市場に「 安定」をもたらすために、巨大生産国サウジアラビアを中心に、日量100万バレル以上の減産を行うと発表し、原油価格は月曜日早朝に8%も急騰していました。
 
スイスの精錬・金融グループMKSパンプの金属戦略担当のニッキー・シールズ氏は、「これは、短期的には、ドルが上昇し、高騰する金価格に 歯止めをかけるだろうが、インフレ率の変動を強めるため、中央銀行の取り組みを複雑にする」と述べていました。
 
米国のウェスト・テキサス・インターミディエートと欧州のブレント原油先物は、ロンドン早朝に8%上昇後に、昼過ぎには、それぞれ5.6%と5.4%の上昇と、過去1年間で最も急激な上昇に近い値動きをしていました。
 
ドル建ての金価格は、当初アジア時間で1%近く下落してトロイオンスあたり1950ドルへ下げた後に、金曜日のロンドン終値である1979ドルまで上昇し、月曜日午後のロンドン・ベンチマーク・オークションの頃には1985ドルを超えて急騰していました。
 
金地金は先月8%以上上昇し、この貴金属の月末の最高値と2020年7月以来の月間の上げ幅を記録していました。
 
WTI原油価格と金価格の推移 出典元:セントルイス連銀とLBMA価格からブリオンボールトが作成
 
「エネルギー商品全体は、米国の(消費者物価指数の計算データの)7%に過ぎない。」と、StoneXの貴金属分析責任者Rhona O'Connell氏は述べていました。
 
「ここでは経済の不透明性の方が重要な要素であり、原理的には経済の不透明性性が金に有利に働くとも言える。」と続けていました。
 
OPECプラスの突然の減産のニュースを受けて、投資家が5月の米連邦準備制度理事会(FRB)の次回会合で再び 金利が上昇することへの賭けを高めたため、為替市場では米ドルが主要通貨に対してロンドン早朝に上昇し、その後金利引き上げ予想が先週後半の水準へ戻す中で、上げ幅を失っていました。 
 
ロシアは、ウクライナがサンクトペテルブルクのカフェで「軍事ブロガー」を爆弾で 暗殺したと非難し、2月に発表した日量50万バレルの減産を「自発的」かつ無関係に延長すると 発表しました
 
原油価格は、コロナ危機の第一波で暴落して一時マイナスになったものの、ロシアのウクライナ侵攻に伴う市場の急反発で15年ぶりの高値をつけていました。今回の減産は、 米銀シリコンバレーの破綻に端を発した「信用収縮」懸念や、旧大手クレディスイスがライバルであるUBSに「ショットガン」的に 緊急救済で買収されたスイスの銀行の影響で原油価格が3月に15カ月ぶりの安値に下落した後の反応とも分析されています。
 
石油輸出国機構とロシアおよびその他の同盟国は、米国ホワイトハウスのバイデン政権がサウジアラビアの同盟国に価格上昇を避けるよう働きかけたにもかかわらず、2023年に 一日あたり2百万バレルの削減ですでに合意していました。
 
今回の削減により、OPECプラスが合意した総削減量は、 世界需要の3.7%に相当することになります。
 
米国国家安全保障会議の報道官は、「市場の不透明性を考慮すると、現時点では削減が望ましいとは考えておらず、 我々はそれを明確にしている」と述べていました。
 
米国債の利回りは月曜日に上昇し、2年物の米国債利回りは約8ベーシスポイント上昇し4.11%、10年物の米国債利回りは約4ベーシスポイント上昇し3.51%になりました。 債券価格が下落すると、利回りは上昇します。
 
この動きは、FRBが推奨するインフレ指標であるコアPCE価格指数が2月に前年同月比4.6%と予想を下回り、前月の4.7%から低下したことを受けて、金曜日に債券市場が上昇したことによる利回りの下げをある程度打ち消すものとなっていました。
 
第2四半期の最初の取引日、欧州の株式は上昇に転じ、汎欧州のストックス600指数は、石油・ガス株が上昇を主導する一方、旅行・レジャーが下降したため0.1%上昇しました。 銀行株は、人員削減の噂が流れたUBSが4%下落したものの、1.6%上昇していました。
 
スイスの報道によると、合併後の銀行では、従業員の 30%が解雇される可能性があり、スイスの連邦検察官は現在、買収に関わった人々(政府や規制当局から銀行幹部まで)が機密情報を報道機関に漏らしたことで 刑法に違反したかどうかを調査するとのこと。
 
一方、スポット市場における地金卸売価格は、英国の投資家が本日午前中の0.5%の損失を回復し、金曜日の終値である1598ポンドまで上昇ていたのに対し、ユーロの投資家の価格はトロイオンスあたり1820ユーロまで早朝の下げ幅を取り戻してさらに上昇していました。
 
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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