金市場ニュース

金価格ディリーニュース(2023年3月6日)パウエル議長の議会証言と米雇用統計を前にインフレ期待指数が上昇して金を支える

金価格は、インフレの期待を示すブレークイーブンインフレ率の高まりが債券市場の実質金利を押し下げ、トレーダーがパウエル連邦準備制度理事会議長の議会証言と最新の米雇用統計を待つ中で、前週6週間ぶりの上昇を記録した後に月曜日に少し下げて推移していました。
 
金地金現物価格は、国際的に認知されているロンドンの 日次金価格ベンチマークで、1月末以来の1週間ぶりの上昇を記録した後に、月曜日昼過ぎにトロイオンスあたり1851ドルと0.3%下落していました。
 
ドルインデックスは、米国の通貨の価値を主要な通貨に対して測定するものですが、6週間の続いていた傾向を止めて、先週新年以来の高値から下げて週間の下落を記録した後に、本日は0.1%高く推移していました。
 
デリバティブのプラットフォームであるサクソバンクの戦略チームの最新のレポートでは、「市場が長期的なインフレ率の上昇を予測し始め、それによって(FRB)自身の目標が困難であると見たことで、金は先週強く上昇していた」と述べています。
 
債券市場の価格設定から推測される今後10年間の米国のインフレ率のいわゆる「ブレークイーブン」インフレ率は、金曜日に年率2.52%と4ヶ月ぶりの高さに上昇し、先週初めから16bp上昇、月曜日には2.48%まで後退していました。
 
金価格は2021年からこのブレークイーブンレートと強い相関性を示し、昨年春のロシアのウクライナ侵攻のニュースで10年物のインフレ率が年率3.0%を超える直近の記録を作った時に、ドル建て史上最高のトロイオンスあたり2075ドルにほぼ近い高値を付けていました。
 
米10年間のブレークイーブンインフレ率とドル建て金価格の推移 出典元 LBMAとセントルイス連銀のデータを元にブリオンボールトが作成
「米10年債利回りが低下したことがサポートとなったが」とサクソバンクのレポートは伝えるとともに 、金価格がインフレ保護債のいわゆる「実質金利」と通常強い逆相関があることを指摘し、「金の回復を支えたのは、ブレークイーブン(インフレ)率が週間で上昇、実質利回り低下したことだ」と続けていました。
 
FRBがインフレデータとして注目する指標であるPCEコアデフレーターのインフレ率は、2022年半ばの高値である約5.2%から低下し、1月は4.7%となっていましたが、1 2月のペースからは上昇していました。
 
サンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー総裁は土曜日、「インフレと雇用市場のデータが予想を上回るような状況が続けば、金利は上昇し、 さらに上昇を続ける必要がある」と述べていました。
 
今週金曜日には、労働統計局による2月の 非農業部門雇用者数が発表され、水曜日には民間部門のADP報告書が発表されます。
 
パウエルFRB議長は、22日に予定されているFOMC後の金融政策発表を前にFRB高官によるコメントが差し控えられるブラックアウト期間が今週末に始まる前に、金融政策に関する半期に一度の議会証言を火曜日に行う予定となっています。
 
CMEの FedWatchツールによると、3月のFRBの会合で利上げが行われる確率は、依然として25ベーシスポイントの小幅な利上げであるとされていますが、50ベーシスポイントの利上げを見込む予想が30%近くを占め、1カ月前のわずか3%から上昇していました。
 
ラガルド欧州中央銀行総裁は土曜日のスペイン紙エル・コレオに、19カ国からなる通貨同盟の政策会議で何が起こるかとの質問に対し、「50bpの利上げを行う可能性は 非常に高い」と述べていました。
 
先週木曜日に ユーロスタットが発表したデータによると、ユーロ圏の2月までの1年間のヘッドラインインフレ率は8.5%と予想を下回りましたが、燃料と食品を除くコア指標は5.6%と史上最高値を付けていました。 
 
ユーロ建ての金価格は、為替市場で単一通貨がドルに対して強まったことから、0.4%下落しトロイオンスあたり1739ユーロとなり、ポンド建ての英国金価格は3週間ぶりの高値1541ポンドから横ばいとなっていまそた。
 
週末に中国の李克強首相は施政方針演説にあたる政府活動報告で、2023年の実質国内総生産(GDP)の成長率目標を「5.0%前後」にすると表明していました。ちなみに、 昨年の成長率は前年比3.0%で、政府目標の「5.5%前後」を大幅に下回っていました。
 
そこで、より中国経済先行きに左右される自動車排ガス浄化触媒需要を中心とした工業用途の割合が6割のプラチナは、1.4%下落してトロイオンスあたり969ドル、やはりガソリンエンジンからの排ガス浄化触媒の需要が工業用途需要の8割を占めるパラジウムは、本日昼過ぎまでに2.5%下落してトロイオンスあたり1420ドルとなっていました。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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