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金価格の2019年:3つのチャートから見えること

悲観すべきリスクが将来に待ち構えているのでしょうか。

ブリオンボールト・リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュが、2019年の金価格として年末に書き上げた3部作のパート3をお届けします。

2019年は昨年から続いている様々なリスクがさらに高まるかもしれません。

それは、米中の貿易戦争(すでに中世時代の人質の取り合いに進んでいますが。)そして、ポピュリズムグローバリズムの行き過ぎによる弊害、そして前ユーゴスラビアのような紛争のリスク、さらには好調を続けていた世界の株式市場や金融資産市場の勢いの衰えなどでしょうか。

そのような中でも、世界の美術品市場は2018年に史上最高値を記録したことからも、いまだその勢いは衰えていないようですが。

先のリスクが現実化したとしても、金価格が上昇するとは保証されていません。しかし、多くの場合は、現物金地金を安全に保管しながら保有することは、賢い選択となることでしょう。

2018年に金価格はある一定の水準を保ちました。ドル建てにおいては2%、ポンド建て、ユーロ建てでにおいては、ほぼ年初の価格まで戻して終えています。

そこで、ここでは3つのチャートについて見てみることにしましょう。

下記のチャートは、金が米国ドル通貨以外でどのように取引をされたかを、トランプ大統領が就任した2017年1月の価格を基に再算出されて表示されています。

先のチャートでは、ドル建て価格が、ドル建て以外の金価格と比較しても、2017年に急騰していることがみられます。

2018年には「Trump Bump(トランプ大統領による経済刺激策)」が120ドル近く押し上げたことがご覧いただけます。

しかし、2018年にFX市場でドルが上昇した後に、他のドル建て以外の価格水準へ下げてきたことがご覧いただけます。

このような昨年のドル高水準を考えると、金は2018年に堅固であったことが分かります。

特に世界の金需要が10年ぶりの低さであったこと、金産出量が史上最高の水準であったこと、金利が上昇していたこと、世界の株価が史上最高値を更新する高さへと昇りつめていたことを考えると。

そして、ヘッジファンドが、これまで見たことのない水準で弱気ポジションを2018年に膨らませていたにもかかわらず、金相場を大きく押し下げなかったことは驚くべきことであるかもしれません。

先の経済環境の中でも金価格は銀とは異なる動きをしていました。銀価格はドル建てで2018年に9%下げていました。これは、金価格の4倍を超える下げとなります。

それは、銀の用途は大部分は工業用であることからです。

プラチナはそれ自身に問題を持っています。それは、ディーゼル車のスキャンダル南アフリカの産出減産の見込みの無さ、プラチナの姉妹貴金属とも呼ばれているパラジウムの急騰等となります。

そのようなことからも、プラチナ価格は昨年15%下げていたのです。

これらの価格からも、工業用途としてこれらのメタルを使う業界の動きが年初より年末にかけて衰えていたことが分かります。

それに対し、堅固な金価格には2018年の地政学リスクの高まりによるサポートがあったと言えるでしょう。そのために、金を保有している人々が売却を避けていたのです。しかし、新たな購入の勢いはありませんでした。

それでは、何が新たな金購入を促すのでしょうか。

弊社の2018年末のアンケートの回答では「戦争」という人々もいます。また、「システミックな危機」、「景気の停滞」、「ブレグジット後の混乱」、「金融システムの崩壊」、「新たな無責任な先進国の首脳」などとアンケートの回答は続いていました。

それでは、先の様々な危機とは異なり、どのような要因が金投資家が金を売却へと向かわせるのかという質問に対しては、「キリストの再臨」、「世界平和」などの回答がありました。

しかし、保有する金をすべて売却するとしたらその主要な理由は価格の急騰、もしくは価格の大暴落というものでした。そのような中で、最も多かった理由は「死」でもあったのですが。

また、2018年に新たに多く見られた理由が「金利の上昇」でした。

覚えているかもしれませんが、昨年9月に金融危機以前から初めて、世界のどの中央銀行も金利を下げなかったのです。これは、10月と11月にも続きました。しかし先月は、ハイパーインフレーションがあり、経済も破綻しつつあるアルゼンチンが政策金利を下げたのです。

そして、モザンビークも。

これは、「Straw in the wind(将来起こりそうなことを示している)」のでしょうか。金や他の貴金属は金利を生み出しません。そのために、預金で金利が稼げるのであれば金の魅力は落ちることとなります。

そして、貴金属にとって最も重要な指標はインフレーション、生活費の上昇でもあります。

そこで、3つ目のチャートをご覧いただきましょう。

先のチャートは金と、インフレを考慮した米国債10年物の利回りと金価格を示しています。

先からも金価格と金利がどのように動くかを見ていただくことができます。

金価格と動きを比較するためにこの実質金利は、0から差し引くことで逆にしています。そのため、左の軸の実質金利は、実は負ではなく正の数値なのです。

ということは、2015年と2016年の短い期間に実質金利はマイナスとなっていました。しかし、2018年のチャートを見ると、この実質金利は+1%を上回っていたこともご覧いただけます。

それでは、その際の金の動きをご覧ください。米国の実質金利と強い相関関係となった2017年には、見事な逆の動き(先のチャートでは同じ動き)をしていたのです。その後、実質金利が上昇する前に金は上昇しています。

昨年春から夏にかけては金価格は低迷しましたが、その後8月から11月には実質金利が上げる(チャート上は下げる)中でも金はドル建て価格でも上昇を始めました。

金は、将来の金利上昇を予想して上げたのではありません。また、長短金利の逆転10年物と2年物のスプレッドが金融危機以前以来初めて0に近づいたことが要因となったとも思えません。

長期金利が短期金利より下げた場合、投資家は短期金利が将来的に下げることを示唆していると考え、さらに経済停滞もしくは収縮が起これば中央銀行が金利を下げると判断します。

また様々な経済指標が、2009年以来の量的緩和やゼロ金利政策や経済刺激策でで拡大を続けていた米経済活動に停滞の兆候があることを示していました。

米連邦準備制度(FRB)は、米国の経済成長の衰えを予想し、今後の成長の見通しを切り下げています。そのため、昨年12月の政策金利発表時には2019年の金利引き上げは2回もしくはそれ以上へと、それまでの3回から4回から引き下げていました。

しかし、今後のFRBによる利上げのペースを予想し取引をするCMEの先物市場のデータによると、投機家の人々は2019年には2回の利上げも無いと見ています。

「すべての状況はクリスマスから年初までに変わる可能性はあります。」とニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は、年末の株式市場の急落時にCNBCのインタビューで答えていました。

「これから行うことは、2019年に入り経済を確認し、市場のみでなく多くの人々と対話して、私たちの見解を再考することです。そして、それはホワイトハウスで執務を行う大統領も含んでいます。」と続けていました。

ユーロ圏においては、年末にタイミング悪く、ドラギECB総裁のチームがECBが新たな量的緩和をついに終了するとし、今年には利上げを開始することを示唆したところでした。この際に、ユーロ圏10か国のインフレ率は上げておらず、将来のGDP予想を切り下げていたにも拘わらずです。

イングランド銀行はこの間に、英国のEU離脱という「リスクイベント」が2019年3月にあり、もしポンドが急落するようなことがあれば金利が下がることを止めるかもしれません。それは、総選挙で社会主義の党首ジェレミー・コービン氏の労働党が勝利するような可能性があればポンドが急落する可能性があり、影の財務層のジョン・マクドネル氏は必要であれば為替コントロールを行うことを示唆していることからも、預金引き出しに人々が殺到する可能性等があるからです。

それでは、2019年の金の先行きはどのようなものでしょうか。

地政学リスクからのサポートは継続することでしょう。そして、株式市場が昨年の好調さを続けることは難しいと思えます。また、金利上昇ペースが今年速まることも。

昨年米国政府機関の一部閉鎖が行われる前に発表された12月11日のコメックス金先物・オプションの資金運用業者ポジションが、21週ぶりに強気ポジションへと切り替わっていたことも、注目すべきでしょう。

私は少なくともそのように、西ロンドンの弊社オフィスから眺めるテムズ川の川面の輝きを見ながら2019年を迎える中で思えるのです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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