金市場ニュース

金だけじゃない!まだあがる貴金属、銀、プラチナ、パラジウム(前編)

昨今史上最高値を記録し続ける金がメディアで頻繁に取り上げられる中、スタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、他の貴金属である、銀、プラチナ、パラジウム市場と相場の先行きを「池水雄一のゴールドディーリングの全て2」で解説しています。

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ここ数年金価格の上昇が続いている。テレビや新聞、雑誌など多くのメディアで金特集が組まれているので、金に興味がない人でもおそらくは一度ならず目にしたり耳にしたりしたのではないだろうか。確かに金価格は過去10年もの永きにわたって一貫して上昇してきており、2008年には1980年に記録した850ドルという高値を越えて、2009年には1000ドルの大台に乗せた。それからというもの、ほぼ一貫して歴史的高値を更新した。金価格の上昇にはさまざまな理由があるが、乱暴な言い方をあえてすれば、世界経済の将来への不安感、ドルやユーロに対する不信感が、そのものに価値があり、発行体のリスクのない現物資産としての金に投資マネーを大挙して向かわせた結果であるといえる。

 

もちろん上がっているのは金だけではない。一般的に金よりもなじみが薄いが、他の貴金属、つまり銀、プラチナ、パラジウム(この四つのメタルがいわゆる貴金属、Precious Metalsである)も金と同様に、いや実は金以上に上昇しているのである。同じ貴金属でも金とほかのメタルとではずいぶんと事情が異なる。今回は金以外のメタルの紹介と現状の分析をしてみよう。

 

金との対比で銀、プラチナ、パラジウムの大まかな特徴をつかんでおこう。まずはそのマーケット規模。単純に生産量で考えると、金の年間の生産量が2570トン、これに対して銀の生産量は年間22,000トンで金の8.5倍。一方PGMはプラチナ190トン、パラジウム200トンとほぼ1/10以下の規模である。もちろん、生産量の違いがそのまま価格に反映されるわけではない。下の図は2009年の金と他の貴金属の生産量及び2010年11月初旬現在の価格の関係である。

 
 

まず最初に注目したいのは、金とその他のメタルの需要構造の違いである。その加工用の需要をみたときに、金とその他のメタルでは全く対照的なのである。金は宝飾の需要が80%、工業用の需要は20%であるのに対して、銀、プラチナ、パラジウムはおおよそ宝飾需要が20%、工業用需要が80%を占める。宝飾というものは本来なくても構わないものである。つまり価格が高騰すれば、買うことをやめる人間が多い。

 

一方工業用需要はそれが無いと、最終商品が生産できない場合が多く、価格に関わらず銀、プラチナ、パラジウムが必要なのである。自動車には排気ガスから毒性成分を取り除くために触媒が使われている。今世界中で排ガス触媒なしでは自動車の販売そのものができないのである。ガソリン車にはパラジウムが、ディーゼル車にはプラチナが触媒として主に使われている。自動車メーカーは自動車を生産する限りこれら白金属のメタルが必要なのである。

 

各メタルの特徴と今後の相場のポイントを以下にまとめてみた。

 
「銀」
 

銀の最大の需要分野は銀塩フィルムであった。10年前、デジタルカメラの登場によって事情が一挙に変わってしまうまでは、コダックや富士フィルム、コニカといったフィルムメーカーが圧倒的な銀のユーザーであった。その当時から日本は世界最大の銀の需要国であったが、最大のユーザーは前出の二社であり、特に富士フィルムはまさにガリバー的な存在であった。しかしデジカメの登場により、この需要は急速に萎んでいくことになる。

 

もはや銀の工業用需要はジリ貧になっていくと思われていたのであるが、次々と新しい用途が開発されていき、銀塩フィルム減少分を補ってあまりある量の産業需要が生まれている。たとえば鉛フリー半田。ヨーロッパでRoHSと呼ばれる電気・電子機器に有害物質を使うことが禁止され、本来、半田に使われてきた鉛がその指定を受けたことにより、半田メーカーは一斉に鉛半田から、鉛を使わない半田に生産をシフト。そしてこの半田は銀を鉛の代わりに使用したのである。またここ数年特に注目を浴びているのが太陽光発電装置。これにも銀から使ったペーストが使われている。このように10年前には陰も形もなかったような新たな応用分野が銀にはまさに日々増えているのである。

 

現在、銀は30年来の高値にあるわけだが、これだけの高値にもかかわらず産業用需要は堅実であり、銀使用量は増えつつあるのを日々感じる。産業用需要はおそらくしばらくは増加の一途をたどりそうである。また投資の対象として新たに銀に目を向ける投資家も増えている。絶対的な価格レベルとして、ほかの貴金属と比べても格段に安く、それを投資妙味としてとらえているのだ。

 

特に米国の投資家の銀選好は昔から抜きんでている。30年前、世界中の銀を買い占めようとし、一時銀を史上最値値55ドルまで買い上げたテキサスの石油王ハント兄弟からはじまり、近年ではウォーレン・バフェットによる巨額の銀投資や、ジム・ロジャーズの銀投資推奨まで、アメリカ人はとにかく銀好きだ。そういった投資資金が産業用の需要と相まって、30年ぶりの高値でもまださらに上値を負う可能性が大きいと思われる。

 

次週に続く

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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