彷徨える過剰マネー
初心者にも分りやすい金のブログとして、経済アナリスト、そして金市場の第一人者の豊島逸夫氏にも推薦されている「はじめての金読本」で、諸外国の金融政策により市場に供給された過剰マネーの行方についてを、過去60年間の米国債の利回りの推移と共に解説しています。なお、この記事は先週金曜日に執筆されたものです。

先週取り上げたスペインがいよいよ風雲急を告げてきました。今週末にはギリシャ再選挙が実施されますし、マーケットはいやでも神経質にならざるを得ないようです。
さて、足元のマーケットのことは、これくらくいにして、今日はちと唐突な話題から入ろうと思います。
ワグナーに「彷徨えるオランダ人」というオペラがあります。主人公のオランダ人は呪いを受けて永遠の海を彷徨っており、七年に一度、港に停泊し陸に上がることができるわけですが、そこで乙女の愛を受けられなければ呪いは解かれることなく、黒いマストに真紅の帆を立てた幽霊船で彷徨うことになります。
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なぜそんなワグナーのオペラ作品の話をするのかといえば、先日たまたまこの筋書きを友人から聞いていて、「彷徨える過剰マネー」という言葉が浮かんできたからです。
そこで思ったのは、今のマネーの港はどこなんだろう、と。大量のマネーが安心して停泊できる場所といえば、やはりそれは、米国債という港になるんだろうな、と。
ここで、ちょっとチャートをご覧いただきましょうか。米国10年債の利回り(月間平均)の推移を表したものです。期間はおよそ60年、ちょうど二世代分の長さになります。この元データはFRBのウェブサイトから拾っています。
1953年の2%台から上下動を繰り返しながら上昇し、ピークを付けたのが1981年のことです。「双子の赤字」という表現が使われていた頃のことですが、当時の米国10年債の利回りは15%を超えています。(この年、金価格もピークを付けています。)
危険水域に達したスペイン10年債が7%前後ですから、当時の米国がいかにヤバかったか想像できようというもの。それがいまでは2%を割り込むところまで低下、米国が光り輝いていた黄金の50年代よりも低い水準です。
では、いまの米国が50年代より輝いているかと言えば、とてもそんな状況でないことは読者もよく知るところ。不動産金融バブル崩壊後の高い失業率に喘いでいます。
それにもかかわらず米国債が買われている理由はといえば、リスクを怖れた過剰なマネーが行き場を失って、豊富な流動性を持つ米国債に行き着いているということ。つまりは実質価値を伴わない買われ方をしているわけで、これをバブルと言わずしてなんと表現できましょうか。
ただ米国債バブルは相当進んでいると思われるものの、おおむねピークから30年を経ていまの水準です。この流れはいつか反転するだろうとはいっても、欧州がそれなりの着地点を見出すまで時間がかかり、反転の速度は緩慢としたものとならざるをないでしょう。
遠い将来、そういう局面が来るだろうということを頭の片隅に留めておくに越したことはありません。同じことが日本国債にも当てはまるでしょうから。
冒頭で紹介した「彷徨えるオランダ人」の物語は、大団円で天国でめでたしめでたしとなりますが、「彷徨える過剰マネー」の物語に終わりはなさそうです。
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