個人投資家の金需要が5年ぶりの長期間継続
金への投資需要の高さは、ユーロ圏の選挙の数々を控え、2012年以来の長期的なものとなっていました。
個人投資家による金地金現物への投資傾向は、3月に再び5年ぶりの記録を生み出していました。ここで、ブリオンボールトのリサーチ主任のエィドリアン・アッシュが解説しています。
昨年11月に金投資家インデックスは2011年11月以来の高さとなり、2016年年間の金需要量は2012年以来の高い水準となり、今年1月の金需要もまた2012年以来の高い新年の需要ともなっていました。そして、3月は、8ヶ月間続けて顧客保有の金が増加したことから、過去5年間で最も長期間継続していたことが明らかとなりました。
これは、2012年6月までの20ヶ月という記録以来の最も長い期間に、ブリオンボールトの顧客の金購入量が売却量を継続して上回っていたことになります。
そして、重量においては、ブリオンボールトの顧客は、金保管量を131キロ増加させ、その総量は37.9トンと新記録を更新していました。
政治的リスクは継続していることが、個人投資家を金の需要へと向かわせています。それは、ユーロ圏における相次ぐ選挙結果に備えるためのユーロ圏内の幅広い需要でした。そして、この傾向は特にフランス、ドイツ、オランダなどの国々で特に見られていました。
そのような中、金価格が米国ドル建て、ユーロ建て、英国ポンド建てで大きな動きがなかったことからも、ブリオンボールト全体の月間ベースで金購入が売却を上回った顧客数は前月比23%増で、売却が上回った数は前月比22%減となっていました。なお、2月は過去13ヶ月で最も低いネットの月間購入者数(購入が売却を上回った数)となっていました。
そのために、個人投資家が実際に行った取引から算出する 金投資家インデックスは、2月の51.8から3月は54.2へと上昇していました。
この数値が50の場合は、月間の金購入量が売却量を上回る顧客数と金売却量が購入量を上回る顧客数が完璧に一致したことを意味します。そして、金投資家インデックスは、統計を始めた2009年10月以来、2010年2月にただ一度だけ50を下回り、過去最高値は、金価格が記録的な高さとなった2011年9月の71.7でした。
なお、ブリオンボールトにおける英国の新規顧客数は、3月に過去12ヶ月の平均から23%減少し、米国は21%減となっていました。しかし、全世界の新規顧客数は7%減に過ぎず、それはユーロ圏の新規顧客数が20%増となっていたことからでした。そして、ユーロ圏の顧客数の増加は、特にドイツ、フランス、オランダにおいて際立っており、オランダでは先月3月15日の総選挙で反ユーロ及び反移民のPVV(自由党)が与党VVD(自由民主国民党)に次ぐ議席数を獲得していました。
また、今月23日にはフランスの大統領選の第一回投票が行われることとなっていたことから、反ユーロの極右政党・国民戦線(FN)党首マリーヌ・ルペンが健闘することが予想されていたことが懸念材料となっていました。
このようなことからも、3月の新たな顧客はユーロ圏の個人投資家がブリオンボールト全体の3分の1を占めていました。そして、月間の金購入量が売却量を上回っていた顧客においては、ユーロ圏の顧客が40%とまでなっていました。この割合の高さは、2015年12月以来となります。
銀もまた、 3月にドル建てで価格が1.2%下げる中、金同様に銀購入者数は大きく上昇していました。
そのため、銀投資家インデックスは、2月の49.0から3月に52.2と上昇しています。この数値が50を割ったのは、過去3年間で2月も含めて5回のみとなっています。
銀の保管量は3月に2トン増加し、661.5トンとなっていました。これにより、14ヶ月連続で保管量が増加したこととなり、2014年5月までに19ヶ月連続で増加した時以来の長期の継続した保管量の増加となっています。