中国の「爆買い」後のコモディティ相場の暴落の可能性について
今年の日本の新語・流行語大賞に「爆買い」が選ばれました。
これは、直訳すると「爆発的な買い物」ですが、主に中国人観光客が大量に商品を購買することを意味します。
ここで、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、「爆買い」の波が過ぎ去る頃に起こりうるコモディティ相場の暴落を解説しています。
ウォルストリートジャーナルによると、今年1月から10月までの日本への中国の観光客は、2014年から50%増の430万人にとなったとのことです。また、これらの中国人観光客が消費する額は、一人あたり平均28万7000円と突出していると毎日新聞が伝えています。
事実、10月1日から7日までの国慶節連休期間中に40万人の中国人観光客が日本を訪れ、日本に1000億円の収益をもたらしたと、香港メディアが伝えています。これは、第2四半期と比較しても、第3四半期の中国人観光客は77%増ともなっています。
そのため、日本の小売店は中国語を話すショップアシスタントを増員することはもちろんのこと、中国人が好む金色の商品のパッケージを採用するなどと、中国人観光客の購買意欲を駆り立てることに努力を怠っていません。
特に、医薬品は「日本製が安全・安心」と人気が高いために、まとめ買いの需要が多いだけに、パッケージの色が売れ行きを左右するとのこと。
しかし、新語「爆買い」が生まれるほどの、日本における中国観光客の購買力が目立つ中、中国の輸出高は、今年大きく減少しています。今週8日に発表された最新のデータによると、11月に輸出高は人民元建てで3.7%減少し、5ヶ月連続の下げとなっています。
また、中国の輸入高は、人民元建てで13ヶ月連続で下げ、10月から5.6%更に下げています。
これは、ドル建てでも同様です。
そのため、中国経済の停滞が世界経済の減速への懸念を引き起こし、今週はベースメタルやエネルギー価格が大きく下げ、ベースメタルやエネルギー関連株が同時に下落しています。
それでは、このベースメタルやエネルギー価格の下げは何時終わるのでしょうか。中国の原材料の需要は、フォーブ誌の記事を見ると、先の数字が物語るほど悪くはないかもしれません。
しかし、中国の一般庶民がその消費を増加させている中、中国の10年を超えるコモディティ需要は以前程の勢いは見られないようです。そして、中国国内の「爆買い」もスローダウンしてきています。
これは、サウス・チャイナ・モーニング・ポストが伝える、世界の主要なブランドが中国での店舗を減らしていることなどからも見られています。それは、中国庶民の「爆買い」予算の70%が国外で使われているためです。
アナリストは、中国政府が、ベースメタルやエネルギー価格を押し上げる新たな経済刺激策を導入することを期待しています。しかし、以前のような膨大な中国の天然資源の需要を再び引き起こすのは難しいかもしれません。
それに対し、中国の庶民による金の需要は堅固としたもので、今年は、金相場急落でバーゲンハンター的需要の高さを見せた2013年の記録を塗り替えようとしています。
今後、このコモディティ価格の下落が続くようであれば、世界にデフレをもたらすかもしれません。それは、1989年の不動産と株式市場のバブル崩壊後、未だデフレ脱却に至っていない日本のように。
金は、工業用や商業用の用途はあまりありません。しかし、希少性が高く、世界共通の価値を持ち、長期的な財産保全の手段に適した実物資産であるために、世界経済の中でデフレ懸念が広がる中で、ワールド・ゴールド・カウンシルが発表した金需給の最新レポートでも確認できるように、中国庶民同様に、多くの世界の個人投資家がその魅力を感じつつあるようです。