不安を織り込み始めた金と原油、当面の上値はどこか
丸紅経済研究所代表柴田明夫氏が、コモディティ専門情報サイトのrigoo.netで,金と原油の価格の動向を分析、予想しています。この記事は3月7日付けで先サイトに掲載されています。
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原油と金価格が一段高となっている。緊迫化する中東情勢、欧米にも浸透しはじめたインフレ懸念など将来不安を織り込み始めた格好だ。
ニューヨークWTI原油価格(期近)は、中国の利上げや米国の潤沢な原油在庫が嫌気され2月前半にかけて1バレル=85ドル近辺まで値を下げた。しかし、チュニジア、エジプトの政変が瞬く間にバーレーン、イラン、リビアなど中東諸国に波及したことで、再び原油は買い戻され3月4日には104ドルを付けた(図1)。この間、欧州の北海ブレントは、寒波の影響もあり年明け早々100ドルを突破し、2月には110ドル台後半まで上伸するなど欧米原油価格の逆転現象が生じている。
中国やインドなど新興国の需要が旺盛な中、中東産油国での供給懸念が強まれば、原油価格は一段と騰勢を強めかねない。IEA(国際エネルギー機関)は2月のレポートで、2011年の世界石油需要見通しを日量8930万バレルと1月から20万バレル上方修正した。過去最高をさらに更新する形である。一方、OPEC(石油輸出国機構)も12月の臨時総会で合意した生産目標(日量 2,485万バレル)を掲げながらも実質増産を行っている結果、スペアキャパシティ(生産余力)が2年ぶりに500万バレルを下回った。さらにここにきてサウジアラビアが市場を鎮静化させるため40万バレルの増産を発表した。これにより着実にOPECのスペアキャパシティは削がれていくことになる。
一方、金も急反発している。ニューヨーク金相場(期近)は、1月28日の1オンス=1307ドルを底に再び上昇基調に転じ、2月後半には1400ドル台を回復するなど騰勢を強めている。3月に入って1430ドル台を付け、昨年12月7日に記録した史上最高値1431ドルを更新した(図1)。チャート的にも、11月9(1423ドル)、12月(1431ドル)、1月(1423ドル)のトリプルトップを上抜いたことで、金は新たな上値追いの局面に入った可能性が大きい。この背景は中東情勢の緊迫化や世界的なインフレ懸念、そして原油価格の急騰がある。なお、昨年までの先進国でのデフレ懸念⇒安全資産としての金買いといったシナリオは考え難くなった。問題は当面の上昇の目安である。金の上値を占ううえでは、原油価格の行方が重要である。
原油は言うまでもなくあらゆる産業に不可欠なエネルギー・原料の代表であり、原油価格が上昇すれば、その他資源の原油との相対価格も調整される。金も例外ではない。図2は、金/原油比価を見たものだ。以前にも触れたが、金/原油比価は、大きく3つの局面を経ている。第1は、1990年代前半の金/原油比価が20倍前後で推移していた時代である。金は350~400ドル、原油は20ドル弱で推移するなど、両者が安定していた時代である。第2は、1990年代後半から2002年まで、同比価が10倍前後に低下した時代である。1990年代後半、原油が引き続き20ドル弱で推移するなか、金はヨーロッパ諸国の中央銀行の売りなどから続落基調に転じ、1999年と2002年に250ドル台の安値を付け、同比価は一時8倍程度まで低下した。そして第3が、金、原油ともに上昇基調に入った2003年以降である。図2に見るように、原油が強い騰勢を示すなかで、金/原油比価も再び上昇基調にある。ただ、足元を見る限り、原油が2月に入って一気に20ドル近く上昇したのに対し、金の戻りが遅れていることから、同比価は16倍から14倍に低下している。今後は、原油が100ドルを定着させるようであれば、金は当面、同比価16倍への修正が進むとして1600ドル(原油100ドルの16倍)もありそうだ。また、同比価が1990年代前半の20倍に戻るとすれば、金は2000ドル(100ドル×20倍)が長期的目標となる。
(図1)

(図表2)

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