金市場ニュース

プラチナ(PGM)のコストカーブ分析

貴金属ディーリングにおいて世界でも第一人者のスタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、プラチナの価格動向の背景を解説した上で、採掘費用に注目して価格を分析しています。

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このところ頭が重たいPGM(Platinum Group Metals:白金系メタル)ですが、現在は底値圏にあると考えます。その理由を見ていきましょう。

「プラチナ」

「パラジウム」

プラチナは昨年9月の急落時から年末そして6月末と3回下値のトライをしています。2011年年末は一時1350ドルを割り込むところまで下げその後上 昇、6月末も1400ドルを割り込み、一瞬ですが1380ドル台を記録しました。しかしいずれも1400ドル割れはごく一瞬で、すぐに1400ドル台に戻しています。欧州の不景気の中、プラチナをメインの触媒として使うディーゼル車の売れ行きが伸び悩み、需要サイドが弱いことが相場の頭を押さえているとはいえ、1400ドルを大きく割り込むところまでは行きません。(下のFigure4は2007年からの毎年の欧州での新車登録状況です。2012年はやは り台数として最も少なくなっています)

しかし、おそらくはこれを材料として、NymexのJulyとOct Platinumをここ数週間、大きくショートをもっている投資家がおり、Julyの期限が来る前にそのショートカバーをする向きが多かったことで、下げが緩和されたという内部要因がありました。下のFigure3はネットのNymexの投機家ポジションの推移です。Sepculative shortが急増していたのがよくわかります。Julyの期限となり、このポジションが急減しています。投資家の多くがOctにショートをスイッチして持ち越すよりもカバーするほうを選んだようです。その結果(もちろんユーロサミットの「サプライズ」がそのきっかけとなりましたが)1400ドル台を回復、7月第一週現在1450ドルまで戻しています。

しかし何よりもプラチナ1400ドルから大きく下がらない理由は、やはりその採掘コストにあります。下のTable1は南アランドとPGMの価格との組み合わせによって、採掘コストに合わなくなる(コスト割れする)メタルの量が表されています。この表によると現在のレベル(ZAR8.20 / Pt 1450 / Pd 575 / Rh 1200)にもっとも近いところでは、プラチナ334k toz(10トン)、パラジウム170k toz(5.3トン)、ロジウム38k toz(1.2トン)が採算割れをするレベルとなっています。これは南アのPGM生産の、おのおの7%、6%、6%を占めます。2011年のPGMバス ケット価格はZAR10,177/PGM tozでしたが、現在はZAR9,690/PGM tozに下がっており、採算はより厳しくなっています。 ※PGMバスケット価格とは、プラチナ60%、パラジウム30%、ロジウム10%のランド建て価格です。南アではたいていPGMが一緒に採掘されます。わずかにゴールドとニッケルも含まれますが、無視できる単位なのでゴールドとニッケルは含みません。

ランドが高くなればなるほど、メタルの価格が下がれば下がるほど、採算に合わない鉱山が増えていきます。下のFigure 5は南アのPGMの採掘コスト別に鉱山の生産を並べた表です。赤い線が現在のPGMバスケットプライス(ZAR9,690/PGM toz)で損益分岐点と考えていいでしょう。現在このラインを超えている鉱山が4つあります。いずれもAngloplats社の鉱山です。 Angloplatsの持っているPGM鉱山すべてのトータル採掘コストがZAR8,338/PGM tozということなので、ほかの鉱山での利益でこの4つの鉱山での損をカバーできる範囲であれば操業は続けられます。しかしもちろん限度があり、もっとも コストの高いMarikana鉱山は操業停止になる模様です。 

Nymexにおけるショートポジションとこの生産コストの関係を考えるとプラチナとパラジウムがこのレベルから大きく下落するリスクは小さいと思われます。特にゴールドとプラチナが大きく逆転している今は、数年という長期的な観点から考えるとプラチナはお買い得と言えるのではないでしょうか。 「ゴールド&プラチナスプレッド」

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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