プラチナの記録的な供給不足がプラチナ価格1000ドルを支える 2023年5月18日 木曜日 15:48 パラジウムは自動車触媒用途需要がプラチナへ代替されることで28%下落の見通しとのこと。 主要アナリストによると、プラチナへの投資と自動車触媒の代替が進むことによって需要増となり、2023年にはプラチナの年平均価格がトロイオンスあたり1000ドルを超えることになるものの、プラチナの姉妹金属のパラジウムは過去5年間で最も低い価格まで下落するとのこと。 貴金属専門コンサルタントのMetals Focusは、プラチナの需要が供給を最も大きく上回っており、供給不足は総需要の11.7%に相当すると見ている。 2015年にドイツの大手自動車メーカーフォルクスワーゲン(VW)が起こした「ディーゼル・スキャンダル」の後、プラチナ価格がディーゼルエンジン車の販売減少で大きく下落し、貴金属の最大の需要先である有害な排出ガスを減らすための自動車触媒に必要なプラチナの在庫が世界的に蓄積されていたものの、これを減らすことができるだろう。 鉱山業界団体のワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)は、ロンドンで開催されるプラチナウィークの開始に合わせて月曜日に最新レポートを発表し、第1位の生産国である南アフリカの 電力不足の悪化により「鉱山生産が大幅に抑制された」と指摘していた。 また、生活費の高騰と中古車価格の高騰により、自動車スクラップの供給不足が続いており、リサイクル供給も「苦戦」していると、WPICの最新の 四半期レポートは述べている。 WPICによると、プラチナ需要は「引き続き堅調」であり、1~3月期 に前年同期比25%以上増加した。これは自動車用需要が牽引し、工業用需要も増加したためで、プラチナ投資は、南アフリカの上場投信への資金流入が好調で、日本の家庭による地金・コイン購入が増加したことからも、プラスへと転換していた。 ドイツの精錬グループであるヘレウスは、南アフリカの投資家がPGM生産者が直面している電力供給の問題をより強く認識しているため、南アフリカのプラチナETFへの純流入は「今年に入ってから毎月プラスになっている」と述べている。 ロンドンで開催されるプラチナウィークの開始を記念して月曜日に発表されたMetals Focusの新しい2023年の予想では、パラジウムの需要は0.9%減少し、2020年のコロナ危機下の暴落以外では少なくとも2013年以来の最低水準に落ち込むとみられている。 しかし、供給量の減少により、パラジウムの供給不足は25%以上増加し、それは予測需要の8.0%に相当し、2018年以来最も深刻なものとなる。しかし、この見通しは、Metals Focusの「PGM Focus 2023」の新しい予測で、パラジウム価格が28.0%下落し、年平均でトロイオンスあたり1520ドルまで下がり、ここ5年間で最も安くなることを止めることはできないとのこと。 昨年春のロシアによるウクライナ侵攻では、パラジウムはロシアが世界の40%以上の産出量を占めるために、金と並んで史上最高値を更新したが、この高値によってガソリン車メーカーが自動車触媒を安価なプラチナで代替する動きが進み、2022年には大きく下落することとなった。 精製と技術のスペシャリストであるジョンソン・マッセイ(JM)によると、2023年の白金族金属の自動車用消費量は4%増加したが、「プラチナがその成長のすべてを担っている」とのこと。 JMの新しい PGM市場レポートは、プラチナウィークの開始に合わせて発表され、「ガソリン車への三元触媒の採用拡大と堅調な工業用需要」によって、2023年にはプラチナが総需要の1.7%に相当する供給過多からわずかな供給不足に転じるとしている。 しかし、JMの市場調査チームは、「プラチナ市場のバランスの方向性は、依然として投資次第である」と述べている。同社の予測では、2023年第1四半期に日本と南アフリカでプラチナ購入が再開されるが、金利が上昇する環境では投資家の関心を持続させることが難しくなる可能性があるとのこと。