ニュースレター(9月19日)1219.75ドル スコットランド独立は否決されたものの、金価格はFOMC後早期金利引き上げ観測で急落
週間市場ウォッチ
先週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1219.75ドルと前週同価格から1%下げています。
週明け月曜日は、先週の金相場続落の反発からトロイオンスあたり10ドルほど上昇しました。しかし、その上げ幅は、今週FOMCとスコットランド独立を問う住民投票と2つの重大イベントを控える中、限られたものとなりました。
火曜日も週半ば以降のイベントを前に、先週の下げの反発から前日同様多少上げたものの、金の相場は狭いレンジで動くこととなりました。なお、主要メディアは、ウォール・ストリート・ジャーナルのFRB担当ジョン・ヒルゼンラス記者が、市場が注目しているゼロ金利政策を維持する期間について、従来の「相当の期間」の文言を維持すると指摘したことから、株が買われ、ドル高が一服し金のサポート共なった模様です。
水曜日には、中国人民銀行の国内5大国有銀行への計5000億元(約8兆7000億円)に及ぶ資金供給をしたことが伝えられ、FOMCの結果を待つ中、金価格を支える要因となりました。
その後ロンドン時間19時から発表されたFOMCの結果は、予想通り、 FF金利誘導目標 0.25%と据え置き、債券購入額を月150億ドルに縮小(国債購入額を月100億ドルへ、MBSを50億ドルに縮小)というものでした。
しかし、声明の内容が明らかになるとともに金価格は今年1月以来の低い水準であるトロイオンスあたり1217ドルまで、20ドルほど大きく下げることとなりました。
これは、FOMC委員による金利見通し(フェデラルファンド金利誘導目標)が前回よりも上方修正されていることが明らかとなり、金利引き上げのペースが思ったよりも早くなる可能性が示唆されたことからです。
ちなみに、市場が注目していた、資産購入が終了した後も事実上のゼロ金利政策を「相当な期間」維持する方針は、声明の中であらためて示されましたが、イエレン議長が記者会見で「相当な期間」は経済動向次第と述べたことからも、結果的にこの言葉が声明に残ったことは注目視されなかった模様です。
木曜日は、同日行われているスコットランド独立を問う住民投票の行方を見守る中、狭いレンジの取引となりました。
金曜日は、早朝に前日行われたスコットランドの住民投票の結果が伝えられ、独立反対55%賛成45%と、独立が否決されたことを受けて、前夜から下げていた金価格は一時1228ドルまで戻したものの、ドル高が続く中、ロンドン時間午後16時の段階で金価格はさらに下落しています。
これは、ロンドン時間午後にダラス連銀フィッシャー総裁が、市場予想よりも早い、来年4月の金利引き上げを見込むというコメントが伝えられたこともドル高を進め、金価格を押し下げている模様です。
他の市場のニュース
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インドの金輸入が8月に前年比176%増となり、評価額で20億ドルを超えたこと。 -
上海の自由貿易区の金取引所が木曜日にローンチしたこと。詳しくは、「中国が金相場への影響力を強める」をご覧ください。 -
今年8月15日に新方式へと移行した銀値決め同様に、今年終わりまでに移行することを予定している金の値決めの代替案として、15社が既に提案を出したことが伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
ブリオンボールトを利用するスコットランドからの顧客が、9月に入り42%増となっていることが、今週多くの主要メディアで取り上げられました。
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サンデー・タイムズ紙「(独立を)懸念するスコットランドの投資家によるゴールドラッシュ」 -
テレグラフ紙「スコットランドの投資家が安全資金である金に注目」 -
タイムズ紙「ヘッジファンドがスコットランド独立のリスクをカバーするためにポンドを売却」 -
ブルームバーグ「独立を問う住民投票を前にスコットランドの金需要が増加」 -
CNN「独立を問う住民投票前にスコットランドの金需要が増加」 -
MSN News「スコットランドが独立した際の資産への影響」 -
CNBC「スコットランドが独立を問う住民投票目前に金購入を急ぐ」 -
テレグラフ紙「富裕層が金塊の購入を進める」
また、日本経済新聞と共同通信もこのニュースを配信しました。この詳細は、日本経済新聞の「スコットランド独立警戒 英から資金逃避膨らむ 企業、投資抑制の動き 」、山梨日日新聞の「 企業に撤退の動き 英経済界、独立の混乱想定 」でご覧いただけます。
また、別途テレグラフでは、「歴史的に9月は金を買う時」というレポートで、1994年以来の金価格の月間の動きを示した上で、9月末以降のインドの結婚シーズンと共に通常金価格が上昇していると解説し、金のより良い購入方法の一つとして、ブリオンボールトが紹介されました。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールトリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「上海が金取引の中心であるロンドンに対抗することはできるのか?」
今週の主要経済指標の結果は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国では、やはりスコットランドの独立を問う住民投票に関わるニュース一色となっていました。
本日英国早朝に「独立否決」のニュースが入り、その後ロンドン時間16時過ぎに、スコットランド独立を率いたスコットランド自治政府首相のアレックス・サモンド氏が、本日の住民選挙結果を受けて行われている記者会見で辞任を表明したことが伝えられています。
独立派が予想以上の健闘を見せたのも、サモンド氏のカリスマ的人柄と、スコットランド人の愛国心に訴える彼の見事なスピーチであったようですので、これからのスコットランド国民党にとっては痛手となることでしょう。
今朝ほどの結果を受けて、懸念されていた英国経済への影響は遠のき、ポンドも対主要通貨の下げも取り戻しています。
しかし、今後のステップとしては、英国政府が独立を思いとどまらせるために、スコットランドへの更なる権限の移譲を住民投票前に約束したことから、キャメロン首相は、このロードマップが11月までに示され、1月には何らかの議案が出されることとなると今朝の記者会見で表明しています。
当然、このような連邦の一国のスコットランドのみへの権限の移譲を他のウェールズ、北アイルランド、イングランドが許すことはなく、それぞれが同様な権利を主張することになる模様です。
スコットランド独立は免れましたが、英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)の将来は、必ずしも平坦な道のりではないようです。