ニュースレター(8月21日)1156.50ドル 中国懸念が株安を進め、利上げ観測の後退からも、金相場上昇
週間市場ウォッチ
先週金曜日のLBMA金価格のPM価格は、トロイオンスあたり1156.50ドルと、前週同価格から3.3%上げ、週間ベースで1月以来の大きな上げ幅となっています。
週明け月曜日は、同日発表されたニューヨーク連銀製造業景気指数が、大きく予想を下回り、2009年4月以来の低い水準となったものの、狭いレンジでの取引となりました。
翌火曜日は、市場注目の米国住宅着工件数が、120.6万件と予想の119万件と前回修正値の120.4万件も上回り、4ヶ月連続で100万件を上回りま した。 これを受けて、一時金相場はトロイオンスあたり10ドル下げましたが、その後直ぐ反発し、終値は前日とほぼ同水準となりました。
これは、同日上海株が6%と大きく下げたことからも、中国経済への懸念が金相場を支えた模様です。
水曜日は、市場注目のFOMC議事録の発表を待つ中、ロンドン時間午後に発表された米国消費者物価指数は、前月比0.1%と予想の0.2%、前回の0.3%を下回ったものの、6ヶ月連続でプラスとなりました。
この発表を受けて、金相場は一時下げたものの、直ぐに反発し、FOMC議事録の発表を待つ中、中国経済の懸念などから欧米株価が下げる中、緩やかに上昇を続けました。
そして、同日情報が漏れたために10分ほど早く発表されたFOMC議事録では、参加者の大半が「利上げの条件を満たしていないが、その時期が近づい ている」と指摘したものの、最終的には雇用と物価の動向を更に見極めることで一致したとされていたために、前回FOMC後に人民元切り下げなどで広がった 中国経済懸念などもあり、利上げ観測は後退することとなりました。
これにより、金相場は上昇し、ショートカバーを引き起こしながら更に上昇することとなりました。
木曜日は、前日の上昇基調を受け継ぎ、7月半ば以来の水準のトロイオンスあたり1150ドルを超える事となりました。
これは前日夜発表のFOMC議事録で、9月の利上げの観測が後退したこと、同日中国株式が3%ほど再び急落し、中国経済への懸念が更に広がり、ギリ シャ首相が解散総選挙を同日夜発表すると伝えられ、ギリシャ情勢への懸念も広がり、世界経済の先行き不安から欧米株式市場が大幅に下げていたことが要因で した。
また、この数週間積み増していたショートポジションを買い戻す動きも価格上昇と共に起こり、更に金価格を押し上げることとなりました。
金曜日は、ロンドン早朝にアジアの株が全面安となる中、1164ドルまで上げたものの、その後反発からトロイオンスあたり10ドルほど下げることとなりました。
なお、本日注目されたのは、中国の製造業購買担当者指数(PMI)が、6年半ぶりの低水準となったことでした。これを受けて、香港、台湾、インドネシア等のアジア株が下げ、日経も3ヶ月ぶりの安値となりました。
その他の市場のニュース
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先週銀価格が5%急騰したことで、先週末発表のCFTCデータで、ヘッジファンド等の銀先物オプションのネットロングポジションが、7週間ぶりにプラス数値となったことが明らかとなったこと。 -
金の強気派として著名なヘッジファンドマネージャーのジョン・ポールソン氏のファンド会社が、第2四半期にSPDRゴールドトラストの持ち分を10%減らしたことが伝えられたこと。 -
「ウィーン金貨ハーモニー」の世界の販売量が今年前半期に増加したこと。 -
ドイツにおける金購入がギリシャ債務問題などからユーロの通貨安が生じ、前半期に50%増と急増したこと。 -
ドイツ銀行が、ロンドンの金と銀のOTC取引のクリアリングサービスから撤退することが関係者の話として伝えられたこと。 -
18世紀の希少なスペインの金貨を含む450万ドル(約5億5800万円)相当の金貨350枚がフロリダ沖で発見されたこと。 -
1945年に金を積んだまま行方がわからなくなっていたナチスの金を運搬していたとされる列車が、ポーランドで見つかったこと。 ポーランドのニュースウェブサイトからの情報によると、この列車には300トンの金が積まれていた可能性があるとのこと。
ブリオンボールトニュース
先週木曜日のファイナンシャル・タイムズの「金が輝き始める」の記事で、ブリオンボールトがオンラインで金地金保有サービスを提供していることが取り上げられました。
この記事では、先週の人民元切り下げがFRBによる金利引き上げも遅らせる可能性があるとし、個人投資家の金の需要の高さを、英国王立造幣局へのギリシャ からの需要が倍増していること、ドイツにおいては、金のETFが今年前半期の購入が売却を上回っていることを上げて紹介しています。
ブリオンボールト市場分析ページに、今週の主要経済指標が掲載されています。
ロンドン便り
今週のロンドン便りでは、国際陸連(IAAF)で今週会長に選出されたセバスチャン・コー氏についてお届けしましょう。
セバスチャン・コー氏は、80年のモスクワと84年のロサンゼルスオリンピックで、男子1500メートルで金メダルを獲得した金メダリストであり、 引退後は国会議員を務め、2012年のロンドンオリンピックの大会組織委員会会長として、誘致はもちろんのこと大会を成功に導き、その組織運営の能力も高 く評価されている、英国スポーツ界を代表する人物です。
そして今回は、2007年から副会長を務めていた国際陸運の会長に、会長選挙を経て就任したのでした。
ロンドンオリンピックの開会式用に準備された、ジェームズ・ボンドが登場する短編のフィルムに、エリザベス女王がゲスト出演することを可能としたのも、このセバスチャン・コー氏とのこと。
スポーツ界と政界に強いネットワークを持つ彼だからこそ、現在ドーピング問題が波紋を広げる陸上界の改革に根本から着手することに期待が寄せられています。
私は、2012年のロンドンオリンピックで、翻訳サービスのボランティアを務めさせていただきましたが、現場にも頻繁に足を運び、ボランティとも言葉を交 わす、とてもざっくばらんなコー氏が、心から望んでいたというこの役職で、持てる力を最大に発揮することを期待して止みません。