金市場ニュース

ニュースレター(5月13日)1265.90ドル コメックスのネットロングが記録的水準であることへの警戒感と米連銀総裁のタカ派的コメントで下落

週間市場ウォッチ

今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1265.90ドルと、前週同価格から1.8%下げています。

週明け月曜日金相場は、トロイオンスあたり1265ドルと大きく値を下げることとなりました。これは、先週金曜日に米雇用統計が予想を下回ったことから、発表直後は値を上げまし たが、その後ニューヨーク連銀のダドリー総裁のタカ派的コメントが市場の流れを変え、同日もその下げ基調を受け継ぎ、下げが下げを呼んだことからでした。

なお、ダドリー総裁のコメントとは、「(悪化した雇用統計にもかかわらず)今年の利上げ2回が妥当な期待値であることに変わりはない」というものでした。

翌火曜日金相場は、ドルが強含む中、昨日の大幅な下げからロンドン午後にさらに下げ幅を広げてトロイオンス辺り1260ドル割れを試しましたが、下げきれず戻すこととなりました。

先週末に発表されたコメックスの金先物・オプションのデータから、ネットロングポジションが2011年以来の高水準に増加していることからも、売りが売りを誘う可能性もあり、頭が抑えられている状態であった模様です。

水曜日は、特に大きな指標が発表されない中、ドルが弱含み、米国株式が下げる中、金相場は上昇することとなりました。

なお、金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は火曜日も839トンへと増加しており、過去2年半で最も高い水準へと至っていることが明らかとなっていました。

木曜日金相場は、ロンドン時間昼過ぎに発表された米国新規失業保険申請件数が、予想を上回ったことから上昇したものの、その後上げを失うこととなりました。

なおこの間、FOMCの投票権を持つローゼングレン・ボストン連銀総裁の「利上げの確率は市場が織り込むより高い」というコメントが再び(4月上旬同様に)伝えられていたことも、下げの要因であった模様です。

本日金曜日の金相場は、昨日の上げ基調を受け継いでいたものの、ロンドン時間昼過ぎに発表された米国小売売上高が予想を上回ったことから一転して下げることとなりました。なお、そのご発表された、ミシガン大学消費者信頼感指数も予想と前回を上回るものとなっています。

その他の市場ニュース


  • コメックスの銀先物・オプションの非商業筋のネットロングポジションは、先週再び記録的な水準となっていたこと。また、コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションもまた、先週記録的な水準に近づいていました。またこのネットロングポジションが、昨年12月のネットショートポジションから増加するスピードは、記録上最も早いものとなっていたこと。

  • ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)が、世界のプラチナの地金と硬貨商品の拡大のために、スイスの精錬会社Valcamibiとパートナシップを結んだことが発表されたこと。

  • 金の市場開発団体のワールド・ゴールド・カウンシルが、今年第1四半期の金需給の最新レポートを発表したこと。この詳細は、「2016年第1四半期に金の需要が記録的水準へでご覧いただけます。

  • JPモーガンが年末までに金価格が1400ドルになる可能性があると予想を引き上げたこと。

ブリオンボールトニュース

今週は下記の主要メディアでブリオンボールトが取り上げられました。

ワールド・ゴールド・カウンシルが今週発表した今年第1四半期の金の需給についての記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントの「(英国の需要が前年同期1%増となっていることに対し)第1四半期の需要は、危機の際に見られるものと似ていた。それは、ポンド建て金価格が 20%増となっていたことや、ブリオンボールトでも見られた過去3年間でも最も高い水準の需要などが物語っている。しかし、為替市場でポンドが安定した事 からも、金購入の緊急性は減っているようだ。」が紹介されました。

本日金曜日はキリスト教圏で忌み嫌われている13日の金曜日であることから、13日の金曜日の個人投資家の傾向をまとめ、ブリオンボールトにおける傾向も取り上げました。ここで、ブリオンボールトのリサーチ主任のエィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトにおける過去4回の13日金曜日の取引量が、その前後の週の取引量から45%減となっているというデータを紹介しコメントを取り上げています。

今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週の英国では、週末に選挙結果が発表となった統一地方選やロンドン市長選の結果に関連したニュースが週前半に広く伝えられていました。

先週のニュースレターでもお伝えしたように、大きく議席を減らす懸念が伝えられていた野党労働党は、スコットランドでの野党第一党の位置を与党保守党に奪われ、ウェールズでも議席を減らしたのの、イングランド全体では18議席減のみと、コービン野党党首が責任を取らなければならない結果とはならなかったようです。

また、同日行われたロンドン市長の選挙では、野党労働党議員のサディック・カーン氏が、保守党議員のザック・ゴールドスミスを破り当選しました。この両候補者は、バックグランドが大きく異なることからも、ロンドン市民以外も注目をした選挙でもありました。

労働党のカーン氏はイスラム教徒で、議員となるまでは人権派弁護士として活躍していました。そして、彼の父親はパキスタンからの移民でバス運転手をしていたとのことですが、カーン氏は低所得者向けの公営住宅で育ったとのこと。

それに対し、ゴールドスミス氏は、英国でも有名な資産家の家庭に生まれ、過去に19人の首相を出している名門校のイートン・カレッジにも通い、下院議員でも2番目の多くの資産を保有していると言われています。

最終結果は、カーン氏が56.8%を獲得しゴールドスミス氏の43.2%を大きく引き離すこととなりましたが、これにより欧州連合加盟国首都で初めてのイスラム教徒の市長、そして英国では初めての富裕層出身ではない市長が生まれたこととなりました。

今回の市長選関連で今週伝えられていたニュースをもう一つお届けしましょう。

ご存知のように、米国の大統領候補ドナルド・トランプ氏は、イスラム教徒の米国入国禁止を提唱しています。そのため、選挙の結果が発表された後に、米紙から対応を問われたトランプ氏はカーン新市長を「例外」とすると提案したようですが、カーン氏はその提案を一蹴したことも伝えられています。そして、「トランプ氏は西欧のリベラルな価値観と、イスラム教(の教え)の主流は相いれないと考えるが、ロンドンがそれは間違いであることを証明した」と強調したとのこと。

穏健派イスラム教徒のカーン氏の市長としての動向はより一層注目されることとなります。その結果、英国内のイスラム教徒への懸念などを払拭することができるのか、希望を持って見守りたいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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