ニュースレター(3月21日)イエレンFRB議長の金利上昇時期のコメントで金が急落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix価格は、トロイオンスあたり1336ドルと前週同価格から3.5%下げています。このように週間で価格を下げたのは1月以来となります。
週明け月曜日は、週末のウクライナのクリミア自治共和国におけるロシア帰属を問う住民投票の結果を受けて、ロシアが編入要請を決議し、プーチン大統領が同自治共和国を主権国家として承認する法令に署名したことから、前週の流れを受けてトロイオンスあたり1390ドル近い水準まで金価格は上昇したものの、利益確定の売りで押し戻されることとなりました。
また、欧米の制裁措置が想定されていたものよりも軽いものであり、事態を深刻化させたくない両サイドの思惑も感じられたことなどから、株式市場が上げる中、金は更に下げることとなりました。
火曜日は、ウクライナ情勢ではプーチン大統領が「ウクライナ分割は目指していない」と発言したことなどからリスクオフの傾向は緩和される中、米国FOMCが始まり更なる量的緩和観測も広がる中、金価格は緩やかに下げることとなりました。
水曜日は、同日発表されるFOMCの声明を待つ中金価格は下落を続け、声明で量的金融緩和の証券購入額を4月に現行の月額650億ドル(約6兆5000億円)から550億ドルに減らすことを決めたことが伝えられ、イエレンFRB議長が会見で「債券購入プログラムは段階的に縮小させて年末までに終了し、その後6カ月前後で利上げが実施される可能性がある」との認識を示したことで更に下落し、トロイオンスあたり30ドル下げることとなりました。
木曜日は、前日の大幅な下げの後、前日のイエレンFRB議長の「債券購入プログラム終了後6ヶ月前後で利上げが実施される可能性がある」というコメントを市場が消化する中、狭いレンジの取引となりました。
金曜日もまた、前日同様に重要指標の発表がない中、多少価格を上げたものの狭いレンジの取引となっています。
他の市場のニュース
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楽天証券が7月1日付でドットコモディティを吸収合併することが伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
今年年初からの15%増となっている金価格についての、英国主要経済紙City AMの「金価格の上昇の背景」の記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エイドリアン・アッシュのコメント「ウクライナ情勢を含む様々な要因で上昇している金がこのまま上げ続ける と安易に考えるべきではない」が取り上げられています。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールトリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「金価格に影響を与えるもの」 -
スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏の「WGC Mr. Albert Cheng氏によるゴールド市場における中国の現状」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国では、オズボーン英財務相が2014年度の予算案を発表しました。その発表の中で、年金制度に大きな改革が行われことが、主要メディアが伝えられています。
今回の改革とは、年金資金を個人がより柔軟に運用できる制度改革で、2015年4月から開始されます。これまでは、個人年金を行っている人々は、55歳以降、3つの選択肢がありましたが、税的な制限から、終身年金を個人年金で蓄えた額で購入することが一般的でした。この終身年金とは、保険のようなもので、死亡時まで月額の年金が保証されるというものですが、必ずしも個人に運用の自由が与えられているものではなく、多くの場合魅力的なものではありませんでした。
それが、今回の改革で個人が貯蓄した年金をより柔軟に運用できる事となったのでした。オズボーン英財務相曰く、「将来に備えて、年金を蓄えてきた人々を信じ て、彼らが自由に運用できるように制度を改革した」とのこと。つまりは、現在までの制度が「人々を信じず、老後のための貯蓄まで国が管理するもの」であっ たとも言えるのかもしれません。
ただ、この改革は、年金関係団体にも事前に知らされていなかったようで、このニュースが出ると終身年金を販売する会社の株価は軒並み大きく下げることとなりました。また、野党の労働党も寝耳に水のようで、反応に危惧していることも伝えられています。
保守党が目指す、個人の自由と裁量を尊重するための今回の年金制度改革を含む予算案は、例年に無く歴史に残るものとなりそうです。