金市場ニュース

WGC Mr. Albert Cheng氏によるゴールド市場における中国の現状

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、今月日本で行われた、ワールド・ゴールド・カウンシルのセミナー{ゴールド・アカデミー)でのワールド・ゴールド・カウンシル極東地区代表のAlbert Cheng氏の中国市場についてのスピーチをまとめています。

3月12日、三越前のマンダリンオリエンタルホテルでWGCによる「ゴールド・アカデミー」が開催されました。僕は時間の都合上午前中だけでしたが、久 しぶりに聴き方にまわって、話を聴いてきました。なかでもアルバート・チャン氏の中国のゴールド市場に対するスピーチは興味深かったので、今週はそれを書 いてみます。アルバートは僕も昔からよく知っている友人です。2002年の上海黄金交易所の開所前の準備段階から中国の市場の発展に大きくかかわってきた 彼だけに、彼のマーケットの現状の捉え方はとても参考になります。彼のプレゼンテーションの要旨を紹介します。

「過去10年に市場構造は大きく変化」
 
1999年から2003年までの間は金需要の圧倒的な部分は宝飾需要でした。この構造は2004年から2008年の間にはETF需要が伸び、2009年 から2013年の間は宝飾需要が50%を割り込み、変わってバーとコインという実物投資需要が伸び、ETFが本格的に増加し、投資分野が現物・ETFを含 めて大きく伸びました。
 
「市場シフト- 金需要は西から東へ」
 
 

ゴールドの需要は西から東へ移動。2013年の「東洋」の国々のゴールド消費者需要は2840トンで、「西洋」の需要573トンの約5.4倍にもなりました。過去5年間の平均でも3.7倍となっています。

「中国市場 - 2013年の統計から」

・宝飾、金地金・コインを含む消費者需要は1066トンに達し、世界の消費者需要の28%を占めた。
・宝飾需要は前年比29%伸び、669トンに達した。
・投資需要は前年比38%伸び、397トンに達した。
・香港からの金輸入は1158トン。
・国内金産出量は430トン。
・上海黄金交易所の金現物受渡しは2150トン。
・人民元ベースの金価格は29%下落。

昨年のゴールドに関する中国の統計数字は驚異的の一言。確かにほぼ1年を通して価格が下がり続けたこともbargain hunterである中国人を刺激したと思われます。

「中国最大の純金積立プログラム - ICBC(中国工商銀行)」

WGCは世界最大の銀行であるICBCと組んで、2010年12月に純金積立を導入。

・WGCは導入前後の促進活動を担当:
 -マーケティング:パンフレット・ポスター等の創作、広告、宣伝
 -PR:投資家教育、新聞、雑誌広告等を含む。
 -トレーニング:消費者向けロードショー;金を保有する意義等ICBC販売部隊向け教育
 -WGCは継続的に商品開発や市場情報をアドバイス(例:2012年中国消費者調査)
・結果として、2013年12月までの36ヶ月間に900万口座開設、60トンの金が蓄積された。
・2012年12月までの17ヶ月で3トン超のOnly Goldギフトバーが販売された。

 
「消費者意識はポジティブ」
 
 

今後1年間にゴールドを買うことがどれくらいありえるかという質問を中国とインドで行ったところ、インド中国とも平均すると75%以上の人が買うと思うという答えをしています。

「新しい市場のパラダイム - 主要指標」
 
・アジアは豊かになっている。
・GDP世界シェアは10年前の24%から31%に上昇。
・中産階級の成長
 -中国
  2010年 1億5千万人
  2020年 5億人
 -インド
  2010年 5千万人
  2020年 2億人
・アジア金融セクターは世界の銀行・保険のキャピタリゼーションの37%を占める。
 
これらの状況を元に、彼は、中国の需要は今後も維持されうるとの見解を示し、一部に広がっている中国需要限界説をはっきりと否定しています。

以上

池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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