金市場ニュース

ニュースレター(2026年8月28日)米債務懸念で上昇した金、ウォーシュFRB議長のタカ派発言で反落

週間市場ウォッチ

今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格比較した一週間の変動率は以下の通りです。

1週間の貴金属価格の推移(%) 出典元 ブリオンボールト

*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。

**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。

  • :ドル建て価格は、4週連続の週間の上昇で、金曜日価格で58日以来の高値。
  • 4週連続の週間の上昇で、65日以来の高値。
  • プラチナ:週間の下落。
  • パラジウム2週連続の週間の上昇で、58日以来の高値。

貴金属市場の動向(週間)

今週の金と銀相場は、前週のベッセント米財務長官による長期国債バイバック倍増の発表を受け、莫大な米政府債務とその利払い負担への懸念が高まり、5月以来の高値圏を維持していました。

 

しかし、水曜日に米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コアデフレーターが根強いインフレを示したことで上昇基調を緩め、本日のジャクソンホールでのウォーシュFRB議長のタカ派的なコメントを受けてFRBの早期利上げ観測が広がり、1週間ぶりの安値へ下げています。

 

そこで、LBMA価格ベースでは、今週はプラチナを除く全ての貴金属が上昇を記録する見込みですが、ロンドン夕方時点の価格では、パラジウムを除く全ての貴金属が週間で下落する傾向となっています。

 

ウォーシュFRB議長の本日の演説前に市場が予想していた年末の政策金利は3.9%と、年内1回の利上げを織り込む水準でしたが、演説後には4.0%と、悪化した米雇用統計以前の7月末以来の高水準となっています。これを受けて、2年物米国債利回りが10ベーシスポイント上昇し、ドルインデックスも上昇したことで、金利を生まない貴金属価格を押し下げることとなりました。

 

下記チャートは、CME FedWatchツールのデータを基にした市場の年末の政策金利予想と、ドル建て金価格の推移を示しています。

 

市場の年末の米政策金利予想とドル建て金価格の推移 出典元 FEDWatchツールとLBMAデータからブリオンボールトが作成

今週の貴金属相場の動き(日次)

 

月曜日

金相場は、前週の上昇基調を受け継ぎ、トロイオンスあたり4,680ドルと5月半ば以来の高値へ一時上昇していました。

この間、ドルインデックスは前週につけた5月末以来の低水準から若干上昇。一方、10年物及び30年物米国債利回りは4ベーシスポイント程度低下し、30年物国債利回りは前週につけた2007年以来の高水準から下げていました。

前週の米財務省による長期国債バイバック倍増計画を受けて、米国をはじめ主要国で拡大する政府債務とその利払い負担が注目され、こうした懸念が金需要を支えていました。

それに対し、銀相場は前週金曜日の価格からほぼ横ばいで、こうした通貨価値への懸念を背景とした需要がより強く意識されている金とは、やや異なる値動きとなっていました。

 

火曜日

金・銀相場は、早朝にそれぞれトロイオンスあたり4,696ドル、69.94ドルまで上昇した後、上げ幅を削ったものの、ロンドン午後には再び上昇に転じていました。

同日は、米国が中東の大使館に外交官を戻すとの報道を受け、イラン戦争が一段と激化するとの懸念が後退。原油価格が大きく下落していました。

これを受けてインフレ懸念が和らぎ、米長期金利も低下。米国の債務拡大に伴う利払い負担への懸念もやや後退したことで、直近で急騰していた金・銀には利益確定を含む調整が入っていました。しかし、中東情勢を巡る不透明感は残っており、下落局面では買いも入ることとなりました。

 

水曜日

金、銀相場は、市場が注目していた、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コアデフレーターが根強いインフレを示唆したことで、FRBの利上げ観測が広がり、ドルが強含んだことから押し下げられることとなりました。

データ発表直後には、一時、金はトロイオンスあたり4,583ドル、銀は67.54ドルへと急落し、前週終値も割っていました。その後は安値での買いも入り、金、銀ともに多少上昇していました。

7月の米個人消費支出(PCE)コアデフレーターは、前月比0.2%上昇と6月の0.1%から伸びが加速。前年同月比では3.3%と前月と同水準だったものの、FRBの目標である2.0%を引き続き上回っていました。

そこで、このデータ発表後、市場が予想するFRBの政策金利は3.89%と、前々週に鈍化を示した米消費者物価指数(CPI)が発表される前日の812日以来の高水準へ上昇していました。

金はドル建てで今月、19999月以来となる14%を超える上昇を見せていることからも、前日に金ETF最大銘柄のSPDRゴールド・シェアが4営業日ぶりに残高を減少させていたように、利益確定を含む調整の売りも出ていました。

 

木曜日

金、銀相場は、翌日のジャクソンホールでのウォーシュFRB議長のスピーチを待つ中、早朝の高値から上げ幅を削り、一時トロイオンスあたり4,568ドル、67.70ドルまで下げたものの、その後は下げ幅をほぼ取り戻していました。

同日発表された米新規失業保険申請件数は市場予想を下回り、今月半ばに記録した57年ぶりの低水準に近づき、米雇用市場の堅固さを示したことから、金と銀を押し下げる要因となっていました。

しかし、先週の米財務省による長期国債バイバック倍増の発表を受けて高まった、膨大な米政府債務への懸念は根強く残っており、30年物米国債利回りは2007年以来、10年物米国債利回りは2023年以来の高水準となっていたことから、金・銀ともに下落局面では買いが入っていました。

 

金曜日

市場が注目していたジャクソンホールでのウォーシュFRB議長の演説がタカ派的と受け止められたことで、金・銀相場は演説後に急落し、金は一時4,467ドル、銀は66.41ドルと、ともに1週間ぶりの安値をつけた後、若干値を戻して推移しています。

この演説でウォーシュ議長は、基調インフレ率がFRBの目標から上振れしたままなら「やるべき仕事がある」と述べ、利上げなど金融引き締めに含みを持たせました。

そこで、FRBの利上げ観測が急速に広がり、市場の年末の政策金利予想は4%を超え、年内少なくとも1回の利上げを織り込む水準となりました。これを受け、2年物米国債利回りは10ベーシスポイント、10年物国債利回りも5ベーシスポイント上昇し、ドルインデックスも0.5%上昇したことで、金と銀は押し下げられることとなりました。

 

1週間のドル建て金価格チャート 出典元 ブリオンボールト1週間のドル建て銀価格チャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

 

  • コメックス(COMEX)のデータによれば、ベッセント米財務長官が米長期国債のバイバック額を倍増すると発表する前日の18日、長期金利の上昇を受けて金・銀相場が下落する中、金と銀のネットロングポジションは増加する一方、プラチナのネットロングは減少し、パラジウムのネットショートは拡大していました。

  • 金のネットロングは前週比2.9%増の453.87トンと、昨年930日の週以来の高水準へ増加していました。2025年の平均は465.8トン、2024年は555.8トン。

  • 銀の先物・オプションのネットロングは4.4%増の1,675トンと増加していました。2025年の平均は5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。

  • プラチナのネットロングは9.2%減の11.9トンと、2週連続で減少していました。2025年の平均は16.2トン、2024年は9.4トン。

  • パラジウムは、23日の週以来のネットロングから317日の週にネットショートへ転じた後、ネットショートが9.5%増の16.7トンと、前週に623日の週以来の低水準まで縮小した後、再び拡大していました。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。

  • ETF最大銘柄のSPDR Gold Sharesの残高は、今週木曜日までに0.57トン(0.05%)減の1,046.636トンと週間で減少し、3週ぶりの週間減少となる傾向です。2025年は累計で198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は6.59トン(0.75%)減、2023年は38.53トン(4.4%)減、2022年は57.2トン(5.9%)減、2021年は195トン(6.8%)減。

  • ETF2位のiShares Gold Trustの残高は、今週木曜日までに3.04トン(0.55%)増の460.85トンと83日以来の高水準となり、2週連続の増加傾向となっています。2025年は累計で101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、2022年は42トン(8.9%)減、2021年は36トン(7.0%)減。

  • ETF最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに70.27トン(0.45%)増の15,345.86トンと821日以来の高水準となり、週間で増加傾向となっています。2025年累計では2,120.59トン(14.45%)増と2年連続の年間増加ペースとなっています。2024年は720.44トン(5.3%)増、2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1,937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。

  • 金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週67台半ばで始まり、火曜日に68台前半へ上昇した後、本日は65台半ばと6月半ば以来の低水準へ下げて推移しています。2025年の平均は87.852024年は84.752023年は83.27、過去5年平均は82.44です。比価が高いほど銀が相対的に割安であり、低下するほどその割安感が薄れていることを示します。

  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の価格差は、227日の週からプレミアムへ転じていたものの、今週の平均は0.50ドルのディスカウントと、前週の3.20ドルのプレミアムからディスカウントへ転じていました。2025年の平均プレミアムは2.85ドル、2024年は15.15ドル、2023年は29ドル、2022年は11ドル、過去5年平均は6.9ドルです。

来週の主要イベント及び主要経済指標

 

今週の貴金属相場は、水曜日に発表された、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コア・デフレーターと、本日のジャクソンホールでのウォーシュ米FRB議長のスピーチに注目し動くこととなりました。

 

来週も、引き続き国債利回りやイラン情勢に注目しながら、米国の雇用関連データが多く発表されることから、火曜日の雇用動態調査(JOLTS)求人件数、水曜日のADP雇用統計、金曜日の非農業部門雇用者数、失業率、平均時給などが重要となります。

 

その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026831日~94日)をご覧ください。

 

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。

ロンドン便り

今週英国では、引き続きイラン情勢やウクライナ戦争について連日伝えられていますが、それに加え、英国人観光客も巻き込まれたネパールの大規模洪水、バーナム首相の就任後初となる外国訪問としてのウクライナ訪問、そして警察官2名を含む7名が犠牲となった逆走車による衝突事故も大きく報道されています。

この事故をめぐっては、公道を逆走したり、警察から高速で逃走したりする危険運転の映像がTikTokなどのSNSに投稿され、拡散されていることも問題となりました。今回の事故がSNSへの投稿を目的として起きたことを示す証拠はないものの、英国政府はこうした危険行為を称賛・助長するコンテンツを「到底容認できない」として、SNS各社に削除を求め、対応が不十分な場合には規制当局Ofcomによる厳しい措置を支持する姿勢を示しています。

こうしたSNS企業の責任をめぐる議論は英国だけではありません。今週米国では、FacebookInstagramを運営するMetaが、同社のサービスが子どもを依存させるよう設計され、若者に害を及ぼしたとする米各州との訴訟で、最大180億ドルを支払うことで和解しました。これに伴い、未成年者の利用時間制限や夜間の利用制限などの安全対策も導入されることになり、英国政府も同様の措置を英国の子どもたちにも適用するようMetaに求めています。

A66の事故とMetaの訴訟は直接関係するものではありませんが、相次ぐ出来事によって、SNS上で危険・有害な行為が拡散されることや、利用者の関心を引き付け続けるプラットフォームの仕組みに対して、運営企業がどこまで責任を負うべきなのかという問題が、英国でも改めて注目されています。

 

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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