金市場ニュース

ニュースレター(2026年1月30日)金・銀が歴史的高値から急反落、ドル高転換とFRB人事報道が引き金に

週間市場ウォッチ

今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格比較した一週間の変動率は以下の通りです。

今週の貴金属価格の変動率 出典元 ブリオンボールト

*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。

**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。

  • :ドル建て価格は週間の上昇で、金曜日のLBMA午後の価格で5週連続で史上最高値。
  • :週間の上昇で、LBMA金曜日価格で8週連続で史上最高値。
  • プラチナ:前週のLBMA金曜価格での高値から3週ぶりの週間の下落。
  • パラジウム:前週のLBMA金曜日価格で202211月以来の高値から週間の下落。

貴金属市場の動向(週間)

今週の貴金属相場は、年初来のトランプ政権の政策懸念を背景にドル安が4年ぶりの低水準へと進む中で、金と銀が新高値の更新を続け、プラチナも高値をつけていました。


その後、木曜日にベッセント経済長官が「ドル高」を望むと発言したことを受け、ドルが上昇に転じ、貴金属価格には調整の下げが見られました。

さらに本日は、トランプ大統領が次期米連邦準備理事会(FRB)議長として、タカ派として知られるウォーシュ元理事を指名したと伝えられたことでドル高が進行。これを受け、今週の上昇分を失う形で金・銀ともに下げ幅を拡大し、金は122日以来の低値(当時の最高値)、銀は113日以来の低値(当時の最高値)まで下落しています。

 

本日の1日あたりの下落率は、LBMA価格ベースで以下の通り、記録的な水準となっています。

  • 金:7.4%(2013415日以来の下げ幅)

  • 銀:12.7%(2020316日以来の下げ幅)

  • プラチナ:17.0%(1990年以降の記録で最大)

  • パラジウム:13.2%(2022314日以来の下げ幅)

ただし、今月の上昇幅を本日のLBMA価格が付く時間帯の価格ベースで見ると依然として大きく、今月の上昇ペースがいかに急ピッチであったかが分かります。今回の下落は、こうした急騰を受けた短期的な利益確定と価格調整が進んでいるものと考えられます。

 

貴金属価格の2026年の変動率 出典元 ブリオンボールト

今週の貴金属相場の動き(日次)

月曜日

金と銀は同日、トロイオンスあたりそれぞれ5,000ドル、110ドルという心理的節目を突破し、史上最高値を更新しました。
その結果、1月の上昇幅は、金が19999月の「中銀による金売却制限合意(ワシントン合意)」以来、銀がハント兄弟による銀相場高騰直前だった197912月以来の大きさとなりました。

背景には、トランプ政権の先行き不透明な政権運営に加え、日本円に対する日米政府の共同為替介入観測がドル安期待を強めていたことがあり、これが貴金属価格を押し上げていました。

 

火曜日

金相場は前日終盤の下げから反発し、一時トロイオンスあたり5,102ドルまで上昇。その後はやや押し戻されたものの、ニューヨーク時間に再び上昇し、5,190ドルと高値を更新しました。

銀相場も一時113.41ドルまで上昇後、105.04ドルへ下げたものの再び上昇に転じました。

背景には、トランプ政権の政策を巡る不透明感が続く中、ドルが同日も4営業日連続で下落し、4か月ぶりの低水準となっていたことがあり、貴金属相場を下支えしていました。

また、中国の金・銀需要も堅調で、上海黄金交易所では金に約32ドル、銀に約17ドルのプレミアムが付くなど、銀は史上最高値圏にあるにもかかわらず記録的なプレミアムとなり、需要の強さが際立っていました。

さらに、前日のCOMEXにおける先物・オプション取引量は2020年以来の高水準となり、投機的ポジションの積み上がりも示唆されていました。

 

水曜日

同日夜の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を待つ中、金相場はトロイオンスあたり5,311ドルと再び新高値を更新。今年のLBMA価格ベースの最高値更新は11回目となりました。

銀相場も上昇し、116.11ドルを付けた後、113ドル前後で推移。銀もLBMA価格ベースでは再び最高値を更新(今年14回目)していました。

この間、ベッセント米財務長官が「強いドル」を支持する姿勢を示したことで、ドルインデックスは4年ぶりの安値から4営業日ぶりに上昇。S&P500種指数も初めて7,000を超えたものの、その後は上げ幅を縮小しました。

同日のFOMCでは予想通り政策金利が据え置かれ、記者会見でパウエル議長はさらなる利下げを急ぐ考えはないと述べましたが、市場への影響は限定的でした。

なお、この日は金の上昇幅が銀を上回るなど、イラン情勢の緊迫化による安全資産需要の高まりも背景にあったことが示唆されました。

 

木曜日

金相場は同日早朝、トロイオンスあたり5,594ドルと最高値を付けた後、ロンドン午後にかけて5,108ドルまで大きく下落しました。その後は下げ幅を削り、5,450ドルまで戻しています。

銀価格も金同様に、ロンドン時間午前中に121.62ドルを付けた後、107.14ドルまで下落。その後は持ち直して118.45ドルまで回復しました。

今回の貴金属価格の下落は、同日にAI関連株を中心とした株価急落がきっかけとなり、その後株式市場が落ち着きを取り戻す中で、貴金属の現金化の動きも一服していました。

今週の金の上げ幅は、同日ロンドン時間早朝の5,594ドルの高値時点でLBMA価格ベース13%超となり、金融危機の最中であった20089月半ば以来の大きさでした。

さらに今月の上昇率は28%を超え、ニクソンショックによるブレトンウッズ体制崩壊と第一次オイルショックが重なった1973年以来の月間上昇率となり、これを上回ったのは当時の一度のみという記録的な動きでした。こうした急騰を受け、価格調整が入り始めていました。

 

金曜日

本日、貴金属相場は大きく下落しました。金価格は本日の高値であるトロイオンスあたり5,450ドルから約650ドル(12%)下落。銀価格も同日高値の118.46ドルから約45ドル(38%)下げるなど、記録的な値動きとなっています。

背景には、トランプ政権がFRB議長候補としてタカ派と見られていたウォーシュ元理事を指名したとの報道を受けてドル高が進行し、これまで上昇一辺倒だった貴金属価格に大きな調整が入っているものと見られます。

 

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト今週のドル建て銀価格チャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックス(COMEX)のデータは、トランプ大統領がグリーンランド領有に反する主要国への関税を示唆していた120日までのデータが前週末に発表され、金はネットロングを2週連続で増加させて、1.9%増の432.84トンと昨年930日の週以来の高さに増加していたこと。2025年のネットロングの平均は465.8トンで、2024年は555.8トン。

  • 銀の先物・オプションは24.7%減の1,761トンと、2024227日の週以来の低さとなっていたこと。2025年の平均は、5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。

  • プラチナはネットロングを0.6%増加させて16.41トンと、5週連続で増加させて129日の週以来の高さ。2025年平均は、16.2トン、2024年は9.4トン。

  • パラジウムは、2週連続でネットロング後にネットショートに転換し、0.075トン。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。

  • 木曜日までのコメックスの取引量においては、トランプ政権が中国との貿易協定を結んだ場合カナダへの100%の関税を課すとするなどの政策への懸念からも、貴金属が木曜日まで大きく上昇した後に調整の下げを見せている今週一週間で、金が週間で前週比27.8%増加して20202月末以来の高さ、銀も52.7%増で20208月半ば以来の高さ、プラチナは11.8%増で、12日までの週以来の高さ、パラジウムは、78.3%増で12月末の週以来の低さとなっていたこと。

  • ETFの最大銘柄であるSPDRゴールド・シェアの残高は、今週木曜日までに全く変化無く、1,086.53と、前週までの2週連続の週間の増加が止まる傾向であったこと。年間ベースでは2025年は、198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間の増加。2024年は6.59トン(0.75%)減少。202338.53トン(4.4%)減、202257.2トン(5.9%)減、2021195トン(6.8%)減。

  • ETFの第2規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までにやはり全く変化無く、494.56トンと202292日の週以来の高さで、前週までの2週連続の増加を止める傾向。年間ベースでは、2025年は101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、202242トン(8.9%)減、202136トン(7.0%)減。

  • ETFの最大銘柄であるiShareシルバーの残高は、今週566.62トン(3.54%)減で15,523.35トンで週間の減少傾向で、1125日の週以来の低さ。一週間の減少量は、2023320日の週以来の大きさ。年間ベースでは2025年は2120.59トン(14.45%)増と2年連続で増加。2024年は720.44トン(5.3%)増。2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。

  • 金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週46台半ばで始まり、火曜日に45半ばと2011年以来の低さになった後に、本日50台後半へ上昇して終える傾向。2025年の平均は87.852024年平均は84.752023年は83.275年平均は82.44。値が高いと銀が割安、低いと割安感が薄れていることを示します。

  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の差は週平均で、今週史上最高値を本日以外はつける中で、プレミアムを維持し、週間の平均は、前週の0.86ドルのディスカウントから25.23ドルのプレミアムと昨年5月半ば以来の高さとなっていたこと。2025年の平均は、2.85ドルのプレミアム。2024年平均は15.15ドルのプレミアム、2023年は29ドル、2022年は11ドル。需要増に加え、中国中銀の輸入許可制限も背景。過去5年平均は6.9ドルのプレミアム。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週も金相場は、トランプ大統領の先が読めない政策及びその変更に反応して動いていました。その後、株価の動きや米ドルの動きに反応していましたが、金曜日のトランプ大統領の次期FRB議長氏名のニュースで、調整局面へと大きく動きました。

 

来週は木曜日にイングランド銀行と欧州中央銀行の金融政策発表が行われ、米国の雇用関係データ、雇用動態調査(JOLTS)求人件数が火曜日、ADP雇用統計が水曜日、非農業部門雇用者数、失業率等が金曜日に発表され重要となります。

 

その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(202622日~6日)をご覧ください。

 

ブリオンボールトニュース

今週木曜日の日経新聞に、日本円建ての金価格が3万円を超えたことを伝える記事が掲載され、私のコメントも引用されています。購読者の方は、下記のリンクからご覧いただけます。

1グラム、初の3万円台 ドル資産から分散・地政学リスクが押し上げ

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。

ロンドン便り

今週の英国では、米ミネソタ州ミネアポリスでデモ参加者が米国境警備隊に銃撃され死亡した事件と、その関連報道が大きく取り上げられました。

また英国国内のニュースとしては、キア・スターマー首相の中国公式訪問、野党第一党の保守党から大臣経験者が第3勢力と目されるReform UKへ移籍したこと、さらに次期労働党党首候補とも目されているマンチェスター市長の補欠選挙への国会議員出馬を、与党労働党幹部が認めなかったことなども広く報じられています。

こうした中、今週は現在の支持率で与党労働党と最大野党保守党を上回りトップを維持しているReform UKへ、保守党の大臣経験者議員が相次いで移籍している動きについてお伝えします。

2026年に入り、英国政界では保守党の幹部級経験者が相次いでReform UKへ移籍する動きが注目を集めています。象徴的なのは、今週移籍を発表した元内務大臣のスエラ・ブラバーマンや、前週に移籍した、党首選で現ケミ・ベイデノック党首と争い敗れたロバート・ジェンリック、すでに移籍を発表していた元財務大臣のナディム・ザハウィといった、党内でも知名度と実績を持つ政治家の合流です。

彼らはいずれも、保守党が移民政策や国家主権、ブレグジット後の路線において有権者との約束を果たしていないと批判し、より明確な右派路線を掲げるReform UKへの参加を正当化しています。一方、Reform UK側は、党首ナイジェル・ファラージの下、こうした「大物」の取り込みによって、抗議政党から本格的な政権選択肢へと脱皮する狙いを強めていると言えるでしょう。

この動きは、保守党の右派基盤の動揺と党勢低下を象徴すると同時に、Reform UKが次回総選挙(現時点では約4年後が想定)に向けて影響力を拡大しつつあることを示しています。英国右派政治の再編が、より現実味を帯びてきた局面と言えるでしょう。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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