【金投資家インデックス】欧米の金投資が過去最安値から反発 2024年5月10日 金曜日 18:39 史上最高値を更新した金価格は依然として利益確定売りに拍車をかけていました。 全体の9割が欧米在住の投資家であるブリオンボールトのデータを基に算出された金投資家インデックスは、4月に金価格が2024年の史上最高値を更新する中で、過去4年間で最も速いペースで上昇し、3月の記録的な低水準から回復していました。 4月は新規顧客の数も回復し、既存の金地金保有者の更なる利益確定の売却を相殺し、購入量を差し引いた売却量のネット売却量は3月の記録的な量を7割程減少させていました。 先月の金地金投資の回復は劇的なものではありますが、それが3月の非常に低い水準からのものでもあります。そして、金を裏付けとするETF信託ファンドにおける残高の減少や、欧米で続いている金貨や小型の金地金の売却を止めるものでもありません。 そのため、4月に金価格がさらに史上最高値を更新し、わずか1ヶ月前には新記録であった価格を維持していることは、アジアの投資家や貯蓄家、特に中国の民間の金需要がいかに旺盛であるかを示しています。 ウクライナとガザでの戦争が大国間の地政学的・金融システム上の緊張を悪化させる中で、新興市場の中央銀行も金準備の増加を継続させています。 それでは、欧米の投資家もついに中央銀行や中国の投資家に加わろうとしているのでしょうか。 金投資家インデックスのチャート。出典 BullionVault 金投資家インデックスは、世界有数の個人投資家のための貴金属マーケット市場をオンラインで提供するブリオンボールトにおいて、金地金を月間で売却量を上回る購入をしたネット購入者数と、購入を上回る売却をしたネット売却者数のバランスを指数化したものです。 ブリオンボールトは、世界175カ国の10万人を超える顧客の、金、銀、プラチナ、パラジウムを保管し、その評価額は史上最高の44億ドル(6,990億円)に達しています。 先月のブリオンボールトの金インデックスは、3月に記録した47.5という新たな安値を覆し、4.1ポイント上昇し、2020年8月に金価格が初めてトロイオンスあたり2000ドルを超えて以来、最も早いペースで急騰し、51.6となっていました。 過去10年間の平均は54.4であり、ネット購入者数がネット売却者数と同じであれば、金投資家インデックスは50.0となるように設定されています。世界金融危機の真っ只中であった2011年9月には71.7を記録し、2020年3月にはコロナ危機下に導入されたロックダウンが世界を席巻する中、再び65.9のピークを記録していました。 上海黄金交易所の金地金価格の史上最高値更新に牽引され、ロンドン金地金市場は4月初旬に8営業日連続で金価格の新記録を更新し、金価格はトロイオンスあたり2400ドルを超えを記録していました。 月平均では、ドル建て金価格は3月より8.2%上昇し、2月より15.4%上昇し、2335ドルの新記録をつけていました。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)を筆頭とする中央銀行がリーマンショック後に金融の量的緩和(QE)とゼロ金利を開始したために、欧米の株式市場が12年ぶりの安値をつけた2009年2月以来の、2ヶ月間の力強い上昇ペースでした。 つまり、今年年初に始まった金の静かな上昇は、ついに欧米の投資家の注目を集めることとなったのです。実際、金価格の顕著な急騰は、1970年代と2000年代の貴金属の強気相場と呼応しています。現段階では、上海とコメックスのデリバティブ金取引は明らかに熱を帯びていますが、金の基本的な上昇トレンドは維持されているといえるでしょう。中国において、投資の上で、また経済的なストレスが高まる、欧米における「リーマンショック」に近い危機を経験している一方で、欧米とそれ以外の国々との間の緊張は悪化し続けています。 注:欧米の主要な金投資市場は先月、金の買い手が売り手を上回るプラスバランスに転じていました。しかし、ブリオンボールトにおいては4月も投資家の売りが買いを上回っていました。 そこで、先月金の保有量は0.6%減となり、顧客の金地金保有量は、コロナ危機時の金価格高騰のピークであった2020年9月以来の低水準である45.2トンとなっていました。 しかしながら、ネット売却量は大きく減速し、3月の記録的な約1.0トンの減少に比べ、70.9%減少していました。そのため、金地金価格の上昇によって、顧客の金地金保有評価額は、月末にはドル建てで3.5%増の33億ドルとなり、2ヶ月連続で過去最高を記録しました(日本円建てでは7.8%増の5,290億円)。 先月の金投資家インデックスの回復を牽引するように、ブリオンボールトで初めて金地金への投資を行った新規顧客数も4月に急増し、3月の数値から65.0%増加し、5年ぶりの低水準に落ち込んだ12ヶ月間の平均から86.7%増加していました。 先月の新規利用者の急増は、コロナ危機が記録的な数の欧米の投資家による金需要を引き起こした2020年4月以来の急増となり、英国からの新規顧客では12ヶ月の平均から95.9%増、フランスからは88.1%増となりました。この間、ドイツは24.6%の上昇に留まっていました。 4月の銀価格は、金と同様に2ヶ月連続で上昇し、ドル建てで3月から12.8%上昇し、2月から21.6%上昇していました。そこで、トロイオンスあたり27.58ドルと、2013年3月以来の高値となった2021年5月の月平均を上回っていました。 しかし、金とは異なり、銀投資家インデックスは、3月の過去最低の45.0から多少反発したものの、47.3に達しただけでした。これは、昨年11月に始まったインデックスが下げを続ける前においては、最低記録と言えるものでした。 その一方で、銀の重量ベースでの顧客の保有量は、32トン減少したことから、2か月連続の過去最高の月間減少量となっていました。しかし、評価額においては、2010年の新年に、ブリオンボールトが金地金に銀地金サービスを加えて以来、初めて10億ドルを超え、2ヶ月連続で過去最高を記録していました。 全体的に見ると、先月の貴金属投資家の新規顧客数の増加は、非常に低い水準から始まったものであり、注目を集めるためには、記録的な価格の上昇が必要となっていました。金投資家インデックスの反発も過去最低の水準からのものであり、銀は10年来の高値を更新する中、利益確定の売却が継続して進んでいました。 このような状況下においても、金と銀の価格は継続的に上昇しています。そして、欧米の既存の金銀投資家は、現在はその結果もたらされる利益を享受しているようです。