金市場ニュース

ニュースレター(2023年6月9日)来週のFOMC等重要イベントを前に、金は終わり値ベースで上昇

私は今週から日本に入っていますので、今週からのニュースレターは、英国からのニュースを除く簡易版となることをご了承ください。

また、来週は休暇をいただいていますので、ニュースレターは翌週月曜日に同様に簡易版をお届けします。

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1961ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午前3時)から0.1%安と週間の下げとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から1.9%高のトロイオンスあたり24.33ドルと2週連続の週間の上げとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から0.46%安のトロイオンスあたり1003ドルと4週連続の下落で4月半ばの低い水準となっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は5.8%高のトロイオンスあたり1337ドルと4週連続の下げで2019年初頭以来の低さとなっています。

金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、FOMC前のFRB高官のコメントが自粛されるブラックアウト期間に、注目する材料が少ない中で、発表された米指標や他の主要中銀の利上げから、市場がFRBの今年中の政策金利の動きを予想する中で、ドルインデックスと長期金利が動き、それに反応する形で動くこととなりました。

そこで、金価格はLBMA価格ベースで前週末とほぼ同じ水準で、終値ベースでは1%の上げで終える傾向となっています。

この間、米政策金利の今年年末の予想は5.07%(現在5~5.25%)と2ベーシスポインㇳと若干ながら前週から高くなっており、今年3月の米地域銀行やクレディ・スイス破綻以前の水準で、今年中の一回の利下げが予想されています。ちなみに、銀行不安が金価格を高める前の3月初旬の価格は、FRBの政策金利は年末までに5.6%へと上げているという観測であったことからも、トロイオンスあたり1835ドルまで下げていました。

そこで、来週のFOMCにおける声明とパウエル議長の年末金利予想関連内容が重要となりますが、今週のチャートは年末のFRBの政策金利の予想と金価格の動きを見ることができるものをお届けしましょう。

FRBの政策金利の2023年末の予想と金価格の推移 出典元 ブリオンボールト

ちなみに銀は、金よりも市場の規模が小さいことからも通常ボラティリティーが高く、上げ幅を広げて5月11日以来の高さとなり、金銀比価もまた、同時期以来の低さとなっています。

それに対し、工業用途需要の割合が高いプラチナとパラジウムは、今週発表された中国貿易指標の悪化からも景気停滞懸念からも今週下げ、パラジウムに関しては4年半ぶりの低値をつけています。

今週の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は、発表されたISM非製造業データが予想を下回るものであったことで、金曜日の好調であった米雇用統計データ後の下げ基調を転換して上昇し、トロイオンスあたり1961ドルで終えていました。

ISM非製造業景教指数は、50.3と前回の51.9、予想の52.2も下回り、5ヶ月分の低水準であっていたことで、経済停滞からもFRBの利上げ停止観測の広がりで、ドルと長期金利が下げていたことが金を押し上げることになりました。

火曜日金相場は、主要指標の発表がなく、FRB高官の発言が控えられるブラックアウト期間であることからも、相場を動かす材料がない中で、一時トロイオンスあたり1966ドルまで上昇したものの、多少押し戻されて1963ドルと、ほぼ前日の終値の水準で終えていました。

この間、直近で金が強い逆相関関係となっているドルが前日の下げを取り戻して3月半ばの高い水準で高止まりし、長期金利も同様に前日の下げを取り戻していたことで、金の頭を重くしていました。

なお、同日はロシアが併合したウクライナの南部のカホフカ水力発電所のダムが爆破された事による安全資産の需要が金を支えたという分析もされていました。

水曜日はロンドン昼過ぎにトロイオンスあたり1970ドルをトライした後に1944ドルで終える大きな動きとなっていました。

この背景はカナダの中銀が政策金利を据え置きの予想に反して25ベーシスポイント引き上げたことで、米長期金利とドルが下げたことに反応したことからでした。 しかし、米中銀がたとえ6月に金利を据え置いたとしても、7月以降の利上げの可能性は残っていることからも、金は上げ幅を失って、高インフレ対応の利上げ観測もより意識され、大きく下げることとなりました。

木曜日金相場は、発表された米新規失業保険申請件数が予想を上回ったことで、前日の下げ幅をほぼ取り戻して、トロイオンスあたり1966ドルで終えていました。

同日発表された米新規失業保険申請件数は、26.1万件と前回修正値の23.3万件と予想の23.5万件も上回り、2021年10月以来の高さとなっていました。

そこで、前日の今週のオーストラリアとカナダ中銀の予想に反する利上げによる、FRBが7月以降にさらなる利上げを行うという観測が多少後退していたようで、ドルインデックスと米長期金利が下げていたことがサポートとなっていました。また、前日の大きな下げの調整もあった模様です。

本日金相場はドルと長期金利がロンドン昼過ぎに下げてトロイオンスあたり1972ドルまで一時上げたものの、その後ドルと長期金利が上昇に転じたことで、1961ドル前後まで下げてほぼ前週終値の水準で推移しています。

来週には米消費者物価指数、FOMC、欧州中銀と日銀の政策金利発表等、重要イベントが続くことで、週末を前にポジション整理が行われている模様です。

ドル建て金価格の一週間のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • 中国の中銀が、5月にも16トン金準備を積みまして、7ヶ月連続で金準備を増加させて2092トンとなっていたことが明らかとなっていたこと。
  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に最新データの5月30日分が発表され、米債務上限関連協議が合意した翌日に価格が上昇していた際に、金と銀とプラチナは強気ポジションを減少させ、パラジウムは3週連続で弱気ポジションを減少させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、4週連続で減少して前週から8%減で335トンと3月21日の週以来の低い水準であったこと。この間建玉は、11.5%減と2週連続で減少し、価格は前週比0.85%安でトロイオンスあたり1952.45ドルと下落していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは3週連続で減少し、前週比22%減の1598トンと3月21日の週以来の低さ。価格は0.48%高でトロイオンスあたり23.26ドルと2週ぶりに上昇していたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングは、21%減で27.3トンと4月11日以来の低さ。価格は前週比3.66%安でトロイオンスあたり1027ドルと3週連続で下げていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションはネットショートで、1.6%減の2.924トンと3週連続で減少していたこと。価格は前週比2.95%安でトロイオンスあたり1417ドルと3月28日以来の低さへ下げていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で3.5トン(0.4%)減で934.65トンと、3週連続の週間の減少の傾向。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.47トン(0.1%)減で453.98トンと、2週連続の週間の下げの傾向。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で14.28トン(0.1%)増で14,534トンと、3週ぶりの増加傾向。
  • 金銀比価は、今週82台後半で始まり、本日80台と5月半ばの低い水準へ下げて終える傾向。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、936ドルで始まり、本日950ドルまで上げて終える傾向。2022年平均は839.64ドル。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、419で始まり、本日334と2018年11月末以来の低さへ下げて終える傾向。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。
  • 上海黄金交易所(SGE)のプレミアムは、今週人民元建て価格が5月半ば以来の高さへ上げる中で、週間の平均では5.80ドルと前週の8.40ドルから下げて5月半ば以来の低さ。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は昨日までで、前週平均比金は20%減で3月始め以来の低さ、銀は9%減で3週ぶりの低さ、プラチナは2%増で3月末ぶりの高さ、パラジウムは34%減で9週ぶりの低さ。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週は、米国、欧州、日本の中央銀行の政策金利発表が、それぞれ水曜日、木曜日、金曜日行われ、米国の消費者物価指数が火曜日、卸売物価指数も水曜日に発表され、重要イベントが続く一週間となります。 

詳細は、主要経済指標(2023年6月12日~16日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

5月31日に私がパネリストとして参加した日本のコモディティ先物会社のサンワード貿易株式会社の金投資ウェビナーのビデオがYouTubeチャンネルでご覧いただけることとなりました。よろしければ、下記のリンクでご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=8nHZTHH4vn4

サンワード貿易株式会社の金投資ウェビナーへのリンク

 

 

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週から日本に入っていますので、ロンドン便りはお休みさせていただきます。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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