ニュースレター(2023年4月6日)米主要経済指標の悪化で景気減速懸念で金価格は13ヶ月ぶりの高さへ
英国は明日から復活祭の休暇で月曜日までお休みとなります。そこで、一日早く弊社ニュースレターをお届けします。
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり2002ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午前3時)から1.12%高で昨年3月初旬以来の高さとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から4.29%高のトロイオンスあたり24.91ドルと2週連続の週間の上げで2022年4月以来の高さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から1.95%高のトロイオンスあたり1000ドルと2週連続の週間の上昇で2月初旬以来の高さとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は2.98%安のトロイオンスあたり1446と3週ぶりの週間の下げとなっています。
金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属相場は、発表された米主要経済指標が予想を下回り景気減速観測、そしてFRBによる利下げ停止、早い段階の利下げ観測も広がり、ドルインデックスと長期金利が下げることで、本日上げ幅を多少戻してパラジウムは週間の下げとなっているものの、その他の貴金属は大きく上昇することとなりました。
そこで、来月開催される次回FOMCの25ベーシスポイントの利上げは、利上げなしとほぼ半々とこの一週間ほどの間は動きは少ないものの、年末の金利予想は、すでに3回の利下げが最も多くの予想と、FRB高官が繰り返し今年の利下げは無いというものとは異なった動きとなっています。
そこで、今週のチャートとして、市場の年末の金利予想をお届けしましょう。ここで、見れるように、年末の金利は4~4.25%が最も高い予想となっており、ひと月前に、年末の金利は5.25~5.50%と年内の少なくとも2回の利上げを予想していたものと大きく変化していることが分かります。
今週の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、週末のOPECプラスによるサプライズ減産ニュースで、インフレ高観測→FRBのさらなる利上げ観測→ドル・金利上昇で市場明け後に下げたものの、その後下げ幅を取り戻して更に上昇し、1985ドルで終えていました。
これは、消費者物価指数の7%を占めるに過ぎない原油高によるインフレ懸念よりも、原油高やOPECプラスがよりロシアや中国よりとなることによる将来の不透明性が安全資産としての金の需要を高めた模様です。
火曜日金相場は、市場注目の雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想の1040万件を下回る993.1万件と2021年5月以来の低さで、FRBの利上げの一時停止観測からドルと長期金利が下げ、トロイオンスあたり2022ドルと前日比1.8%高で13ヶ月ぶりの高さで終えていました。
また、前日発表されたISM製造業景況指数も5ヶ月連続で下げていたことも、景気懸念をより強くすることとなりました。
なお日本円においてはグラムあたり8581円と前月つけた史上最高値の8497円を再び超えて更新していました。
水曜日金相場は、一時トロイオンスあたり2032ドルをつけて今年最高値を更新した後に、前日と同水準の2020ドルと前日終値の水準へ下げて終えていました。
これは、今週の重要米経済指標の月曜日のISM製造業景況指数、火曜日の雇用動態調査(JOLTS)求人件数に続き、同日のADP全国雇用者数とISM非製造業景況指数が予想を下回ることで、米景気停滞懸念からもFRBによる利上げ停止観測が広がり、ドルインデックスと米長期金利が、それぞれ今年2月初旬と昨年9月以来の低さへ下げていたことが背景となりました。
本日木曜日は、欧米がイースター休暇に明日から入ること、そして明日米雇用統計が休暇中にも関わらず発表されることからも、ポジション整理もあるようで、今週の上げ幅を多少削ってトロイオンスあたり2013ドルへ多少下げて推移しています。
なお、本日発表された米新規失業保険申請件数は予想の20万件を上回る22.8万件と今週の他の主要経済指標と整合する米景気減速を示唆していました。
その他の市場のニュ―ス
- 金のETFの残高が3月に9ヶ月ぶりで32トン増加していたことをワールド・ゴールド・カウンシルが発表しています。
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に最新データの3月28日分が発表され、シリコンバレーバンクとクレディ・スイスによる銀行業界への懸念が後退したものの、株価が下げていた際に、金と銀においては3週連続で強気基調を維持したものの、プラチナとパラジウムは弱気ポジションが増加していたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週から22%増加して405トンと、米消費者物価指数が予想を下回りFRBの利上げがピークアウトした観測が広がった前年4月半ば以来の高さへ急増していたこと。この間建玉は、1%減と3週間ぶりに減少していたこと。価格は前週比0.53%高でトロイオンスあたり1962.85ドルへと上げてLBMA価格では2020年9月初旬以来の高さとなっていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは2週連続でネットロングで、前週の11倍の1685トン。価格は2.58%高でトロイオンスあたり23.05ドルと4週連続に上昇して1月末以来の高さとなっていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングは、12%減で3.5トン。価格は前週比1.73%安でトロイオンスあたり966ドルと2週連続の下げ。
- コメックスのパラジウム先物・オプションのネットショートで、2.5%増の2.86トンと8週連続で増加して12月末以来の大きさへ増加。価格は前週比0.71%高でトロイオンスあたり1416ドルと2019年6月初旬以来の低さ。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週水曜日までに週間で2.9トン(0.3%)増で930.91トンと、昨年10月半ば以来の高さで4週連続の週間の増加傾向。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週水曜日までに週間で2.68トン(0.6%)増で447.04トンと2月半ば以来の高さで、4週連続の週間の上昇傾向。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週水曜日までに週間で98.7トン(0.68%)増で14,575ンと、2週連続の週間の増加傾向。
- 金銀比価は、今週82台前半で始まり、本日81台後半まで下げて終える傾向。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、976で始まり、再び1000を多少割る水準へ上昇して終える傾向。2022年平均は839.64ドル。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、478で始まり徐々に下げて本日440と6営業日ぶりの低さで終える傾向。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。
- 上海黄金交易所(SGE)のプレミアムは、今週木曜日までで人民元建て価格が史上最高値をつける中で、週間の平均が7.24ドルと昨年7月初旬以来の低さで、前週の10.94ドルから更に下げていること。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は昨日までで、今週貴金属価格が全般大きく上昇したことで、金を除くすべての貴金属で上昇し、金は0.5%減、銀は36%増、プラチナが0.5%増、パラジウムは10%増。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は発表された米主要経済指標が経済停滞を示唆するもので、FRBの将来の利上げ観測に変化が起きて金融市場が大きく動きました。
そのような中で、重要指標の米雇用統計は明日欧米がイースターの休暇中に発表され、その内容次第では月曜日のアジア時間と休暇中の欧州を除き米国での市場の動きが注目されます。
そして、来週も引き続き主要中央銀行の経済政策に影響を与える指標や主要中央銀行の高官のコメントは注目されることとなります。
主要なものとしては、火曜日の中国の消費者物価指数、水曜日の米消費者物価指数とFOMC議事録要旨、木曜日の米卸売物価指数、金曜日のミシガン大学消費者態度指数等となります。
詳細は、主要経済指標(2023年4月10日~14日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2023年4月3日~7日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2023年4月10日~14日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーニュース(2023年4月3日)OPEC減産による不透明性からも金価格は過去最高値へと近づく
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、英国のTPP加盟について、中国系企業のTikTokに英国関連機関が制裁金を課したこと、スコットランドの自治政府の元首相で先月辞任したスタージョン氏の夫でスコットランド国民党の元代表が逮捕されたこと等が大きく伝えられています。
そのような中で、個人的に嬉しいニュースとして、英演劇界で最も権威のある「ローレンス・オリビエ賞」で舞台版の「となりのトトロ」が演出賞などの6部門で受賞していますので、簡単にご紹介しましょう。
これは、1988年に公開された宮崎駿監督のアニメ映画を世界で初めて英国名門劇団ロイヤル・シェークスピア・カンパニーが日本テレビと共同制作をしたもので、この映画版の音楽を担当した作曲家の久石譲氏がエグゼクティブ・プロヂューサーとなり、昨年10月から今年1月まで上演されていました。
この演劇は上演開始後即座に高い評価を得たこともあり、ロンドン演劇史上最も早く切符が完売した作品となったとのことです。
私も家族で昨年11月に行きましたが、映画のストーリーを最大に活かしながら、非日常の世界を舞台で見事に表現をしていて息を呑むものがありました。
そして、やはり映画の音楽がふんだんに含まれていたことも、映画のファンにとっては嬉しいところでもあります。
観客の層は私達が行った際は、大部分が日本人以外の様々な国の方たちで、年齢層も子供からお年寄りまで広く、このオリジナルの人気を感じさせるものでした。
今年11月から来年3月に再演されるということですが、今回の受賞からも前回同様に切符が完売するのはほぼ間違いないことでしょう。