金市場ニュース

ニュースレター(2023年4月21日)良好な経済指標で金・銀価格は下落し、プラチナとパラジウム価格は上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1973ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午前3時)から2.28%安で前前週末の低さへ下げています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から3.4%安のトロイオンスあたり25.14ドルと3週ぶりの週間の下げとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から8.26%高のトロイオンスあたり1129ドルと3週連続の週間の上昇で前年3月初旬以来の高さとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は9.65%高のトロイオンスあたり1627ドルと2週連続の上昇で2月初旬末以来の高さとなっています。

金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、金と銀の動きと、プラチナとパラジウムの動きが異なることとなりました。

金と銀は安全資産の需要からも前月銀行不安などもあり、8.5%、16.4%高と大きく上昇しいたのに対し、工業用途需要が高いプラチナとパラジウムは3.1%と5.5%と上げ幅がおさえられていました。

しかし、今週に入り金と銀が主要経済指標の改善もあり景気後退懸念が後退することで下げているのに対し、プラチナとパラジウムは中国のGDPが予想を上回ったことによる中国需要の増加観測や供給不足等の要因で上昇することとなりました。

プラチナはそれに加えて、最大の供給国である南アフリカの電力事情が悪化しており、停電による供給不足懸念も高まり、昨年ロシアのウクライナ侵攻時の高値以来の高さへ上昇しています。

今週のチャートとしては、プラチナの過去5年間の価格の動きを下記に添付します。

プラチナ価格が今年に入り、一時トロイオンスあたり900ドル近くまで押し下げられた後に、今週1134ドルを一時つけるなど大きく上昇していることがご覧いただけます。

過去5年間のドル建てプラチナ価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

今週の金相場の動きと背景について

週明け月曜日金価格は午前中の上げ幅を失ってトロイオンスあたり1994ドルで終えていました。

これは、ロンドン時間午後に発表されたニューヨーク連銀製造業景気指数が4ヶ月ぶりに増加に転じたことで、前週金曜日のFRB高官の対インフレのための利上げ継続と述べ、同日もリッチモンド連銀総裁もタカ派的コメントを発していたこともあり、前週米インフレ指標が軟化していたことで、広がっていた近い将来のFRBの利上げ停止観測が後退したことが背景となりました。

また、前週2000ドルを数回超えるなど強い上昇を見せていたことからも、直近のデータでは金先物・オプションや金のETFの持ち高が減少を見せていたことからも、価格高騰の調整が入っていた模様です。

火曜日金相場はドルと長期金利が下げる中でトロイオンスあたり2006ドルと前週終値を上回る水準へ上昇して終えていました。

同日はセントルイス連銀のブラード総裁は根強いインフレからも利上げ継続が必要と述べていたことも伝えられていましたが、すでにFRB高官のタカ派的発言は価格に織り込まれていることからも、この反応は限定的となっていました。

水曜日金相場は、長期金利がひと月ぶりの高さへ上昇する中で、トロイオンスあたり1970ドルを一時割って2週間ぶりの低値をつけたたものの、1993ドルへ戻して終えていました。

これは、同日英国の消費者物価指数が10.1%と前回の10.4%を若干下げたものの予想の9.8%を上回り、インフレの高止まり観測からもイングランド銀行の継続利上げ観測で英国債利回りが上昇し、米国債利回りも引き上げられていました。

木曜日金相場は、ドルインデックスと長期金利が下げる中で、トロイオンスあたり2012ドルまで一時上げて、2005ドルで終えていました。

これは、同日発表の主要経済指標の米フィラデルフィア連銀製造業景気指数と新規失業保険申請件数が経済停滞を示すものであったこと、テスラ等の注目決算も予想を下回るものであったことから、米景気後退懸念からも米株価が全般下げ、安全資産の金の需要が生まれていた模様です。

なお、同日タカ派として知られているクリーブランド連銀のメスター総裁は他のFRB高官同様に、高インフレに対応するために追加利上げを支持すると述べていました。しかし、金融引締が終わりに近づいていることを指摘し、銀行問題は金融環境の引き締めに拍車をかけることからFRBの政策判断に影響を与え、政策運営に「慎重」であるべきとハト派的内容ともなっていました。

本日金曜日金相場は、本日発表された米国製造業とサービス部門PMIが予想を上回り、ドルと長期金利が上昇する中で、トロイオンスあたり1971ドルまで下げたものの、その後多少戻して1976ドル前後を推移しています。

本日発表された主要国の製造業とサービス部門のPMIは、ドイツとユーロの製造業PMIは予想を下回り拡大と縮小の境目の50を共に下回っていたものの、サービス部門のPMIは50を上回り予想も上回っていました。そこで、すでに金価格はロンドン午前中に下げていましたが、その後発表された米国の製造業とサービス部門のPMIが共に50を上回り予想も上回っていたことで、今週他の経済指標の悪化から経済停滞懸念が広がっていたものの、それが後退したことで下げ幅を広げている模様です。

そこで、来月5月のFOMCでの25ベーシスポイントの利上げは前日の85%からも上げて90%を超えて確実と見られていますが、6月のさらなる利上げ観測も広がっています。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • ワールドゴールドカウンシルによると、ロシアの中銀が2022年2月からの金準備の増減を発表し、今年3月に3.1トン減となりながらも、前年2月から総計28トン金準備を増加させていたことが明らかとなったこと。
  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に最新データの4 月11日分が発表され、軟化した米消費者物価指数が発表される前日に、金と銀は4週ぶりに強気ポジションを減少させ、プラチナも前週2週ぶりに強気ポジションを増加後に、同ポジションを減少させ、パラジウムは10週週連続で弱気ポジションを増加させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週から5%減少して427トンと、前週のロシアのウクライナ侵攻に対して欧米が経済制裁をしたことで強気ポジションが急増していたた前年3月半ば以来の高さから4週ぶりに下げていたこと。この間建玉は、1.6%減と前年4月半ば以来の高さから減少し、価格は前週比0.34%安でトロイオンスあたり2002.70ドルへと、前週のLBMA価格では2020年3月初旬以来の高さから若干下げていたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは4週連続でネットロングで、前週比1.3%減の2991トンと前週の1月末以来の高さから下げ、価格は4.3%高でトロイオンスあたり25.06ドルと6週連続に上昇して昨年4月半ば以来の高さとなっていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングは、36%減で8.7トンと前週の1月後半以来の高さから下げていたこと。価格は前週比0.99%安でトロイオンスあたり1001ドルと前週の前年11月半ば以来の高さから下げていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットショートで、1.3%増の2.9トンと10週連続で増加して12月末以来の大きさへ増加。価格は前週比3.4%安でトロイオンスあたり1432ドルと前週の2週ぶりの高さから下げていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で1.1トン(0.1%)減で926.57トンと、2週連続の週間の下げの傾向。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で3.83トン(0.85%)増で452.58トンと2月初旬以来の高さで、6週連続の週間の上昇傾向。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で177.18トン(1.21%)減で14,435ンと、3週ぶりの週間の減少傾向。
  • 金銀比価は、今週79台前半で始まり、木曜日78台半ばまで下げて本日79経戻して終える傾向。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、961ドルで始まり、その後減少して本日891まで下げて3月初旬の低さで終える傾向。2022年平均は839.64ドル。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、444で始まり徐々に上げて本日496と上昇して終える傾向。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。
  • 上海黄金交易所(SGE)のプレミアムは、今週人民元建て価格が前週の史上最高値から下げる中で、週間の平均が5.90ドルと前週の4.95ドルの前年7月初旬以来の低さから多少上昇していること。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は昨日までで、今週多少価格を下げた金と銀は2%と16%前週から下げて、今週価格が大きく上昇したプラチナとパラジウムは18%と56%増加して、それぞれ3月末と2月末以来の高さとなっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週も5月2日と3日のFOMCを前のFRB高官の発言ができなくなるブロックアウト期間が明日22日から始まることから、高官の発言も多く発信されて、主要経済指標とともに市場を動かすこととなりました。

そこで、来週も主要中央銀行の金融政策を動かす指標やイベントへ市場は注目しますが、木曜日の米国第1四半期GDPと、金曜日の日銀の政策金利発表、同日のFRBがインフレ指標として注目する金曜日発表の個人消費支出PCEコア・デフレーター等が重要となります。

詳細は、主要経済指標(2023年4月24日~28日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、看護師団体が団体幹部が合意した政府案を受け入れなかったこと、英国のインフレ率が10%を超えて高止まりをしていること、本日はドミニク・ラーブ副首相兼大法官が本日公務員に対するいじめの独立調査結果を受けて辞任したことが大きく伝えられています。

そこで、本日はこのラーブ副首相の辞任についてお伝えしましょう。

昨年11月にボリス・ジョンソン政権でラーブ氏が外務大臣と大法官であった際の行動の問題で、2件の正式な苦情が公務員から入り、ラーブ氏の要請でスナク首相が独立調査を行うこと同意して調査が行われていました。

そのレポートが昨日スナク首相へ提出され、今朝発表されるとほぼ同時に、ラーブ氏は副首相と大法官を辞任することを発表していました。

レポートによると、この調査ではテリーザ・メイ政権の際のEU離脱担当相時代からを含む8件の苦情が調査され、2件の苦情のラーブ氏が外務大臣であった際に、ミーティングや仕事のフィードバックを行う際に「理不尽かつ執拗に威圧的」な行動があったと認められたとのこと。

しかし、このレポートはラーブ氏が個人を怒鳴りつけたり、コントロールを失ったことがあるという説得力のある証拠もなかったとも結論付けています。

ラーブ氏は辞任を発表した際に、2件の苦情以外は認められなかったことを指摘した上で、その認められた2件を含む調査結果は「いじめの閾(しきい)値を低く設定したことで、この調査は危険な先例を作ってしまった」と付け加えていました。

スナク首相はラーブ氏が辞任したのは「正しい」としながらも、調査のプロセスには「欠点」があったとし、この経験を生かして今後このような問題を扱うより早い良い方法を見出すべきとしています。

野党第一党の労働党は、スナク首相が、いじめ問題がありながらもラーブ氏を副首相という要職から一時的にも停職としなかったこと、レポートを受領後も解任をしなかったことは、リーダーとしての弱さを浮き彫りにしたと非難していました。

ボリス・ジョンソン前政権時にも、プリティ・パテル元国務大臣もまた、内務省の職員からの苦情が調査されたものの、ジョンソン元首相はパテル氏を解雇しないことを決めいました。

スナク首相は就任時に新政権は「誠実、プロフェッショナリズム、説明責任を果たす。」とし、「信頼は勝ち取るものであり、皆さんの信頼を勝ち取るつもりです。」と述べていました。

そこで、今回は有権者に対して、独立調査結果を受け入れて、ラーブ氏の辞任を受領したことで、説明責任を果たしたということなのでしょう。

国を動かす政治家とその政治家の政策立案を支え、政策の実行を行う公務員の関係がより良いものであることは必要と考えます。

そして、いじめとより良い結果に達するための建設的な批判を政治家と公務員が混同することが無いことを希望したいとも思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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