ニュースレター(2023年1月13日)鈍化した米消費者物価指数で金は8ヶ月ぶりの高値へ
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週間市場ウォッチ
今週金曜日午前10時半の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1904ドルと、前週金曜日のLBMA価格のAM価格(午前10時半)から2.8%高と4週連続の週間の上昇となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から1%安のトロイオンスあたり23.7ドルと週間の上昇となっています。プラチナは本日午前10時半の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのAM価格から0.2%安のトロイオンスあたり1071ドルと週間の下落となっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムAM価格と比較して、本日午前10時半の弊社チャート上での価格は0.4%高のトロイオンスあたり1791ドルと週間の上昇となっています。
2022年の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週市場は木曜日に発表された米消費者物価指数に注目していましたが、それは予想を下回るもの(詳細は下記の今週の金相場の動きと背景についてを参照)で、インフレ鈍化とFRB利上げ減速観測が広がり、プラチナを除く貴金属は週間で上昇、金は特に8ヶ月ぶりの高さに上昇することとなりました。
今週のチャートとしては、米消費者物価指数と米政策金利の推移を表すものを添付します。ここで、米消費者物価指数(赤)が急激に上昇したものの、その上げ幅が鈍化したことが見られ、それに対し米政策金利は、急激な上昇をしてきたことも見ることができます。
なお、2月のFOMCでの利上げ幅予想は、CMEのFEDWatchツールによると、昨日の鈍化した米消費者物価指数を受けて、94%が0.25%の利上げ幅を予想しています。
今週の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、前週の米雇用統計の平均時給の上げ幅鈍化によるFRB利上げ減速観測による上げ基調を受け継ぐ中で、ロンドン早朝にドル安もありトロイオンス1880ドルと8ヶ月ぶりの高値をつけた後に、上げ幅を多少戻して1870ドルで終えていました。
火曜日金相場は、ドルと長期金利が多少ながら上昇する中で、トロイオンスあたり1878ドルへと上昇して終えていました。
前日のFRB高官のタカ派的コメントもあり、ロンドン時間午後に上げ幅を若干失っていたものの、パウエルFRB議長がタカ派的コメントを発しなかったことがサポートとなっていました。
水曜日金相場はトロイオンスあたり1886ドルと8ヶ月ぶりの高さへ上昇した後に、若干ながらドルインデックスと米長期金利が上昇する中で、利益確定の売りもあり上げ幅を削り、1877ドルで終えていました。
木曜日は市場注目の米消費者物価指数が発表され、12月の数値が6.5%と予想と同水準で前回7.1%を下回り、6ヶ月連続の鈍化、コアも予想と同じ5.7%と前回の6.0%を下回っていました。
そこで、FRBの利上げ減速観測からも、ドルインデクスが昨年6月以来の低さ、長期金利は12月半ば以来の低さへ下げたことで、金はトロイオンスあたり1900ドルを一時超えた後に、1898ドルで終えていました。
金曜日金相場は、ロンドン時間昼前にトロイオンスあたり1909ドルと昨年4月末以来の高さへ上昇した後に、ドルと長期金利がそれぞれ6月と12月半ば以来の低さから多少ながら上昇する中で、1894ドルまで下げたものの、ロンドン時間昼過ぎに1904ドルへ戻して推移しています。
なお、ドルが弱含んだことで、主要通貨は強含んでおり、週間の上げ幅は、LBMAのAM価格ベースで、ポンド建てで0.3%上昇しているものの、ユーロでは0.1%安、日本円建てでは0.8%下げています。
その他の市場のニュース
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前週末に中国の中央銀行の人民銀行のサイトで、中国が11月に続き、12月にも30トン2ヶ月連続で金準備を増加していたことが、明らかとなっていたこと。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週火曜日1月3日に、FOMC議事録前にドルが弱含み価格が上昇した際に、銀を除く全ての貴金属でネットロングポジションを増加させていたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、8%増の226トンと5週連続で増加して5月下旬の高さとなっていたこと。ロングは3.3%増で6月上旬の高さ。建玉は前週から4.7%増で、11月半ば以来の高さ。 -
コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、前週比2.7%減の4570トンと3週ぶりに4月19日以来の高さから減少。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションは、ネットロングで32%増の37.3トンと2週連続で増加。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットショートであったものの、38%減で2.7トンと2週ぶりの低さ。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で3.2トン(0.3%)減で912トンと、2週連続の週間の減少の傾向。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.59トン(0.13%)増で451トンと、2週連続で週間の上昇。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で27トン(0.19%)減で14,558トンで、前週に5週ぶりに週間の増加をした後に週間の減少傾向。 -
金銀比価は、今週78で始まり80へと上昇して終える傾向。2022年平均は83.39と前年の71.83からは増加。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。) -
プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、777ドルと830の間、830は昨年9月半ば以来の高さで推移。2022年平均は839.64。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。 -
プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、692ドルと732ドルの間を推移。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。 -
上海黄金交易所(SGE)のロンドン金価格との差は、今週人民元建て価格が昨年3月以来の高さへ上昇する中で23.14ドルと前週の14.71ドルから増加。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。 -
コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は22%増、銀は9%減、プラチナが16%減、パラジウムは29%減。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は木曜日の米消費者物価指数に市場は注目していましたが、来週も中央銀行の動向やその金融政策に影響を与える指標が重要となり、水曜日の日銀金融政策発表、英国とユーロ圏の消費者物価指数、米国の卸売物価指数等となります。
その他詳細は、主要経済指標(2023年1月16日~20日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週月曜日の金融市場を伝える会社四季報オンラインの記事で、弊社リサーチダイレクターのエイドリアン・アッシュの今週の米国消費者物価指数が弱い数字であれば、「1900ドル突破もありうる」というコメントが取り上げられていました。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2023年1月9日~13日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2023年1月16日~20日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2023年1月9日)金相場は「最も強気なシグナル」を見せた後ドル安で急伸、中国はさらなる金購入へ -
【金・銀投資家インデックス】価格急騰で銀投資家インデックスが過去最低を更新
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ロンドン便り
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