金価格ディリーレポート(2022年2月21日)ロシアが米ロ首脳会議を否定する中で金ETF残高は増加し日本円建て金相場は史上最高値を記録
金価格は月曜日市場開始とともに上昇し、その上げ幅を失ったものの堅固に推移しています。
バイデン大統領とプーチン大統領のウクライナ戦争回避のための首脳会談計画をめぐるワシントンとモスクワの意見の不一致を背景に世界の株式市場が下落する中、金価格は市場明けに全ての主要通貨で急騰して、日本円建てにおいては史上最高値を更新していました。
そして先週は、 金ETFへの投資家の資金流入が増加し、債券市場の長期金利は数ヶ月ぶりの高水準から低下し、マネーマーケット・トレーダーは、米国FRBが来月の政策会合で政策金利を0.5%引き上げるという賭けを減少させていました。
米国のコアPCE価格指数は、FRBが最も参考とするインフレ指標で、今週金曜日に1月分が発表される予定ですが、エコノミストは、年率4.9%という12月の4桁台の高水準から5.1%へと加速すると予想しています。
アジア時間開始とともにドル建て金価格はトロイオンスあたり1908ドルと2021年6月2日以来の高値まで上昇し、その後15ドル下落した後、先週末の終値の水準を安定して横ばいで推移しています。金価格は先月末から先週末の段階ですでに5.8%の上昇していました。
英国ポンド建て金価格はトロイオンスあたり1403ポンドと14ヶ月ぶりの高値を付け、ユーロ建て金価格は1686ユーロと18ヶ月ぶりの高値を付けて、2月は前週末までに両通貨建てでそれぞれ4.5%上昇していました。
一方、日本円建て金価格はgあたり7048円と、2020年8月6日に達した史上最高値の7039円を更新していました。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、昨夜バイデン米大統領とプーチン露大統領がウクライナ危機に関する首脳会談の開催で基本的に 合意したと発表していました。
しかし、欧州の株式市場は、クレムリンがそのような首脳会談の「 具体的な計画はない」と述べた後、ユーロストックス600指数が1週間ぶりの安値となり、当初の上げ幅を失って更に下げていました。マクロン大統領府とバイデン政権は、首脳会談の詳細はアントニー・ブリンケン米国務長官とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が木曜日に会う際に合意するだろうと述べていました。
米国のジェン・サキ・ホワイトハウス報道官は、「首脳会談は、 ロシアがウクライナに侵攻しない場合にのみ開催されるだろう」と先週述べていました。
ロシアは侵略の意図をこれまでも度々否定していますが、同盟国ベラルーシの国防省は、ウクライナと国境を接する同国での日曜日に終了する予定の軍事訓練を延長すると発表していました。
米国市場はプレジデント・デーの祝日のために、月曜日は休場となります。
米投資銀行ゴールドマン・サックスのアナリスト、ミハイル・スプロギスは、「弱い米経済データが出始めると、投資家が株式から一部資金を分散させるために、 金(ETF)への資金流入が加速すると予想される」と述べていました。
先週、金ETFはグループとして拡大し、世界最大の金ETFのSPDRゴールドシェア(NYSEArca: GLD)と第2規模のiShareゴールド(NYSEArca: IAU)の両商品は、共に投資家の資金流入を記録していました。
ニューヨーク上場のGLDの残高は先週0.5%、新年から重量にして48トン増加していました。
GLDは、2020年のコロナ危機の中で金価格が史上最高値の2000ドルを超えた際に278トン急増した後、2021年には195トン減少させていました。
また、銀のETFの最大規模のiShares Silver Trust (NYSEArca: SLV)の残高は、先週1.2%、今年に入ってからは3.8%増加しています。これは重量にすると634トンで、2021年の減少分738トンの86%を回復したことになり、2020年の6,099トンの急増を思い起こすペースとなっています。
このような状況の中、 銀価格はロンドン昼過ぎに0.6%下落してトロイオンス23.77ドルとなっていました。
また、需要の3分の2を工業用途で占めているプラチナは、昨今水素エネルギー技術における燃料電池の触媒として需要が注目されていますが、トロイオンスあたり1080ドルと0.8%上昇していました。
「個人的には、最初に大きな一歩を踏み出す十分な理由があるとは思えない」と、ニューヨーク連邦準備銀行のJohn Williams総裁は金曜日に述べ、3月に0.5ポイントの引き上げを行うという考えに反対していました。
投票権を持つメンバーで副議長と目されるLael Brainardは、米中央銀行が「 一連の利上げを開始する」べき時期に来ていると述べていました。
米金融大手シティグループのアナリスト、Aakash Dooshi氏は、「(インフレによる)金融政策の誤りの可能性と景気後退リスクの高まりが金ETFと価格の支えになっている」と述べ、5月末までに1950ドルになると予測していました。
CME取引所の FedWatchツールによると、3月のFOMCにおいて50ベーシスポイントの引き上げを17%の確率で予想しており、1週間前の60%から減少していました。