金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2022年10月10日)英国債市場の混乱の中で金と銀は下落し、パラジウムはロシアによるウクライナ攻撃激化で上昇

イングランド銀行が国債の購入枠を倍増するサプライズ発表をしたことを受けて、英国の長期債利回りが急上昇する中で、主要通貨建ての金価格が銀とプラチナ価格と共に下落したものの、ウクライナ戦争激化を受けて、ロシアが年間供給の40%であるパラジウム価格が急騰していました。
 
ドル建て金地金現物価格は、先週金曜日に9月の米国雇用統計が予想を上回り、失業率が3.5%と再び過去最低になったことから1%下落したのに加え、本日もロンドン時間昼過ぎにトロイオンスあたり1%下げて1677ドルとなっていました。
 
一方、ユーロ建て金価格は、欧州の株価が4日連続で下落する中で、0.5%安の1730ユーロに留まっていました。
 
また、 ポンド建て金価格は、英国国債が売られたにもかかわらず、月曜日の朝の為替市場でポンドがわずかに上昇したため、ロンドン昼過ぎに0.9%安の1515ポンドとなっていました。
 
イングランド銀行は本日、新首相の減税を含む小型補正予算発表後の市場の混乱が続く中で、年金基金や他のレバレッジを効かせた投資家を守るため、当初の期限である金曜日までに緊急の量的緩和の国債購入額を1日あたり100億ポンドに倍増すると発表し、アナリストやトレーダーを驚かせていました。
 
英国財務省も本日、財政計画(クワシー・クワーテング財務相の歴史的減税公約の財源計画を示す)を10月31日に前倒しし、ギルト市場の沈静化に努めようと試みていました。
 
しかし、英国債券価格は本日の新たな動きを受けて下落し、30年物ギルト債利回りは17ベーシスポイント高の4.56%に達し、5日前のクワーテング氏の「小型」補正予算を受けて9月28日にイングランド銀行が最初の介入を行って以来最も高い水準になっていました。
 
英国30年祭利回りの推移 出典元 Ivesting.com
カナダの銀行Toronto-Dominionの金利ストラテジストPooja Kumra氏は、「市場はイングランド銀行が上限まで 注文を満たすかどうか疑っており、発表された新しい措置は一時的な債券購入の延長はありそうにないことを示唆している」と述べていました。
 
イングランド銀行がこれまでに購入した国債はわずか46億ポンドで、これまでのプログラム最大容量の400億ポンドの約12%でしかありませんでした。
 
同中銀はまた、市場の混乱の中心となっている負債主導の投資戦略をとる年金基金への負担を軽減するために、新たな 短期融資制度を発表していました。
 
英国の株式市場は本日下落し、FTSE100種指数はロンドン時間昼過ぎまでに0.3%下落で、9月23日の小型補正予算以降に2.6%下落していました。
 
それに対し、金融引き締めとウクライナ戦争に直面する経済成長への懸念から、ストックス欧州600指数は、月曜日の朝に1週間ぶりの安値をつけて、その下げ幅を取り戻して横ばいで推移していました。
 
プーチン大統領が、クリミアとロシアを結ぶ唯一の橋が 「テロ」攻撃を受けたとしてウクライナを非難した翌日の月曜日の未明に、ロシア軍はキエフとその他のウクライナの都市を攻撃し、欧州連合から「野蛮で卑怯」と非難されていました。
 
このニュースを受けて、ロシアが世界最大の供給国である パラジウム相場は3.3%高のトロイオンスあたり2262ドルと上昇していました。ちなみに、パラジウム価格は今年3月に米国とEUが主にガソリンの自動車触媒システムに使用されるパラジウムのロシアからの供給を禁輸する動きを見せた際に急騰し、史上最高値3444ドルをつけていました。
 
なお、プラチナは、工業用需要の3分の2を占めて世界供給量の12%をロシアが占めていますが、0.6%安のトロイオンスあたり911ドル、また工業用需要の60%近くを占める銀は、1週間ぶりの安値となるトロイオンスあたり19.80ドルに下落していました。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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