【金価格ディリーレポート】米インフレ率が40年ぶりの高水準に達したことを受けてドル・国債利回りが上昇 し、金は2週間ぶりの低値へ
米国のインフレ率が予想を上回り40年ぶりの高水準を更新したことで、米国ドルが上昇し、金価格は米国株や債券市場と共に急落していました。
木曜日に発表された米国の主要なインフレデータで、食品とエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは、9月に前月から0.6%上昇し、前年同月比では6.6%上昇し、1982年以来高さであった3月の水準を超えて、幅広い物価上昇圧力が明らかとなり、連邦準備制度が来月も大幅に利上げする方向に向かわせるものとなりました。
米国消費者物価指数では前月の8.3%から減速したものの、年率8.2%と市場予想の8.1%を上回り、依然として高い水準となっていました。
先のチャートの網掛けは米国の景気後退を示しています。
この発表を受けて金現物価格は30ドル近く下落してトロイオンスあたり1645ドルまで一時下げた後に1648ドルまで下げ幅を縮小したものの、2週間ぶりの安値をつけていました。
日本地金市場協会の代表理事の池水雄一氏は、「0.1%とはいえ予想を上回る根強いインフレは、FRBの今後の利上げがより強固になることを意味し、ドル高、金利高、そして他の資産安となる」と述べていました。
MKS PAMP SA の金属戦略責任者であるニッキー・シールズ氏は、「はっきり言って、8%前後の数値では、FRBの利上げ軌道を止めるには十分ではないだろう」と最新のレポートで述べていました。
ドルインデックス(主要通貨に対する米国の通貨価値の指標)は、この発表を受けて0.3%上昇し、2週間以上ぶりの高値となり、年初来の約15%の上昇幅を更に広げていました。
米国債の10年物利回りは4.028%に上昇し、2008年の世界金融危機以降で最も高い水準へと急騰していました。ちなみに 債券価格と利回りは反比例の関係にあります。
アメリカの株式先物は急落し、S&P500の先物は前日市場後の上昇分を一掃して2年ぶりの安値となり、ナスダック100の先物は3%近く下落していました。
市場は現在、FRBがさらに75bp引き上げて3.75%~4%の範囲に収める確率を98%としており、11月初旬に100bpの引き上げを行うとの見通しが2%となっていました。
そして、CMEのFedWatchツールによると、中央銀行は来年3月までにフェデラルファンドレートの目標を4.75%から5.00%、あるいはそれ以上に引き上げるとほぼ予想しています。
3月以降、FRBは主要短期金利をゼロ付近から3.25%の上限まで引き上げており、1980年代以降で最も積極的な引き締め策となっています。 中央銀行が先月発表した中央値予想によると、いわゆるフェデラルファンド金利を年内に4.4%、2023年に4.6%まで引き上げる計画を示していました。
連邦準備制度理事会が水曜日に発表した9月のFOMCの議事録によると、「多くの参加者は、インフレを低下させるためにあまりにも小さな行動を取ることのコストは、あまりにも大きな行動を取ることのコストを上回る可能性が高いと強調した」とし、インフレが予想されていたよりもゆっくりと低下していることを指摘していました。
ジャネット・イエレン財務長官は、水曜日にワシントンで開かれたブレトンウッズ委員会の国際評議会での発言で、「米国では、強い労働市場を維持しながらインフレを低下させることが経済の最優先事項だ」と述べていました。
経済協力開発機構(OECD)が2年ごとに行っている世界最大の経済に関する調査は、「インフレは驚くほど持続し、より積極的な金融引き締めを促すかもしれない」と述べていることが、水曜日に明らかになっていました。
ユーロ建ての金価格は1708ユーロと、1週間以上ぶりの安値となっていました。また、ポンド建ての英国金価格は、英国政府とイングランド銀行が対立する中、英国政府が減税を含む小型補正予算の一部を撤回する可能性があるとの報道から、ポンドが為替市場で急騰し、3週間ぶりの安値となる1474ポンドまで下落していました。
木曜日の午後、英ポンドは1.5%高で取引され、英政府の10年債利回りは水曜日に2008年の世界金融危機以来の高水準を記録した後に、徐々に下げていました。
クワシー・クワルテン財務相は水曜日遅くワシントンで、市場の新たな混乱は「(イングランド銀行の)総裁の問題」であると述べ、もし英国市場が金曜日に債券購入プログラムが終了した後に再び不安定になった場合、イングランド銀行の責任であると指摘していました。
このプログラムは、いわゆる小型補正予算がイギリス経済を混乱に陥れた後に、9月下旬にイギリスポンドと債券市場を安定させるためにイングランド銀行によって実施されたものでした。