金市場ニュース

ニュースレター(2021年8月13日)金価格はフラッシュ・クラッシュの4ヶ月ぶりの低値から回復し上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1768ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.28%高と上昇しています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり23.41ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から6.27%安で、8ヶ月ぶりの低さとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1027ドルと、前週LBMA価格から3.05%高と先週水曜日の高さまで戻しています。

今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要

今週貴金属相場は、先週金曜日の良好な米雇用統計後の大きな下げ後の月曜にアジア時間早朝の流動性が低い際に、フラッシュ・クラッシュ(瞬間暴落)を起こし、その後金、銀、プラチナ地金の相場の動きが異なって推移することとなりました。

まず、金はトロイオンスあたり1700ドルを割る水準では現物の買いも多く入り、下げ幅をほぼ取り戻し、本日の経済指標が10年ぶりの低さであったことからも、本日は前週終値比上げて推移しています。

それに対し、銀相場はトロイオンスあたり23ドルを割って昨年12月の水準へ下げ、その後の戻りが鈍く前週終値比でも下げて推移し、本日の金銀比価は75台と昨年12月以来の高さ(銀割安傾向)となっています。これは、アジアでのデルタ変異種感染拡大による需要減少観測が背景にあるようです。本日は、金銀比価の推移のチャートを下記に添付します。

金銀比価は昨年3月世界でロックダウン規制が入る中で123を超えて上昇した後に、ワクチン接種の普及で経済の早期回復期待で今年2月に62台まで下げて直近では70台前半を推移していました。

金銀比価と銀価格の推移 出典元 ブリオンボールト

なお、先週の良好な米雇用統計後にトロイオンスあたり1000ドルを割って大きく下げていたプラチナは、下げ幅の大きさからも今週他の貴金属と比べても上げ幅を広げて、ロンドン時間夕方にはトロイオンスあたり1033ドルと金との差(ディスカウント)を月曜日から35ドルほど減少させています。

日々の金相場の動きと背景について

週明け月曜日はアジア市場開始時に金を含む貴金属はフラッシュ・クラッシュを起こし、金相場は短時間でトロイオンスあたり75ドルほど、前週終値比4%を超えて急落をすることとなりました。そのような中、同様に急落をした原油とは異なり、早い段階で金は下げ幅を4分の3ほど削ったものの、トロイオンスあたり1731ドルと前週終値比1.8%安で終えていました。

この下落の背景は、東京とシンガポールが祝日であり、またアジア時間開始時は流動性が低く、夏枯れ市場の中で、先物市場で大きな売りが出たことがきっかけとなり、ストップロスの売りも出たことが要因となりました。

火曜日金相場は、前日フラッシュ・クラッシュ(急落)をした後に戻した水準を維持して、トロイオンスあたり1730ドル前後を20ドルほどの幅で推移することとなりました。

この間米長期金利とドルはほぼ前日の水準となっていましたが、長期金利は一月ぶりの高さでドルは3月以来の高さとなっていることから、金の頭を抑えることとなりました。

ちなみに、前日の急落時に金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアと第2規模のiShareゴールドの残高も共に0.17%と0.02%それぞれ小規模ながら減少していました。

しかし、この価格水準で現物需要は高まっていることを示唆するように、中国の上海黄金交易所の金のロンドンとの価格差は、プレミアムで前日のトロイオンスあたり7ドルから同日はほぼ10ドルへ上昇していました。

水曜日金相場は、市場注目の米消費者物価指数の発表後、ドルと長期金利が多少弱含んだことに反応して若干上昇し、トロイオンスあたり1752ドルで終えていました。

この米消費者物価指数では、食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比で予想の4.4%を下回り4.3%、前月比では前月の0.9%と予想の0.4%を下回る0.3%であったことから、FRBによる早期の金融緩和縮小観測がやや後退したことが背景となりました。

木曜日金相場は、長期金利が上昇する中で、前日終値比ほぼ横ばいでトロイオンスあたり1751ドル前後を15ドルほどの狭い範囲で推移することとなりました。

長期金利が上昇したのは、同日発表された米新規失業保険申請件数が前回の38.7万人を下回り予想と同じ37.5万人で、米卸売物価指数が前月比1.0%と予想の0.6%を上回ったことで、再びFRBによる早期量的緩和引き締め観測が広がったことが背景のようですが、金は一時1742ドルへ下げたもののその下げ幅を早い段階で取り戻すこととなりました。

本日金曜日金相場は、ロンドン時間昼過ぎに発表された米ミシガン大学消費者態度指数が予想を下回りほぼ10年ぶりの低さとなったことで、ドルと長期金利が下げたことで上昇し、ロンドン時間夕方にトロイオンスあたり1777ドルへと上げています。

これは、欧州株価は1999年以来の長期の上昇基調で、米株価指数のS&P500種は史上最高値を更新して、パンデミックで急落した水準から倍となるなど、リスクオン基調の中での動きですので堅調といえるようです。

ブリオンボールト・リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週3日、米雇用統計が発表される前に、金と銀が増加し、プラチナとパラジウムは減少していました。特にプラチナはネットショートへと転じていました。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、0.8%増の332トンと増加していたこと。また、建玉は3週連続で減少していたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比22%増の4,028トンと3週ぶりに昨年5月19日以来の低さから増加していたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのポジションは、ネットショート6トンと前週のネットロングから、昨年良好なワクチン臨床試験のニュースが発表される以前で需要減が懸念されていた11月3日以来初めてネットショートへ切り替わっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.5%減で7.8トンと3週連続で減少し、6週ぶりの低さへ下げていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で1.7トン(0.17%)減少し1023.5トンと、少量ながら2週連続の週間の減少傾向となっていること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高も、木曜日までに0.83トン(0.17%)減少し498トンと、2週連続の週間の減少となる傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で63.40トン(0.37%)増加し17,277トンと7月21日以来の高さで、2週連続の増加の傾向となっていること。

  • 金銀比価は、今週月曜日の価格の急落時に1月半ば以来の高さの73台を付けて、その後緩やかに上昇して、本日は75台と昨年12月15日以来の高さとなっていたこと。

  • 上海黄金交易所(SGE)の価格は今週月曜日の価格の急落で人民元建てでも4ヶ月ぶりの低さとなり、ロンドン価格に対し、プレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で、週間平均は7.39ドルと前週の2.21ドルから増加していたこと。

  • コメックスの金、銀、プラチナの先物の取引量は、今週月曜日の価格の急落で全ての貴金属で直近の週平均を上回っていたものの、木曜日までの平均では金は前週と同レベルで、銀は前週比増加し、プラチナは前週比減少していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

先週金曜日の良好な米雇用統計以来、FRBの早期の金融緩和縮小観測が広がっていますが、来週の重要イベントは、水曜日に発表される、よりハト派的内容となった先月のFOMCの議事録要旨となります。

その他、月曜日の中国小売売上高と鉱工業生産、米国ニューヨーク連銀製造業景気指数、火曜日の米国小売売上高と鉱工業生産、水曜日のユーロ圏消費者物価指数、木曜日の米新規失業保険申請件数とフィラデルフィア連銀製造業景気指数等も主要国中銀の金融政策に絡んで重要となります。

詳細は主要経済指標(2021年8月16日~20日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

週末のサンデー・タイムズに弊社の7月の金投資家インデックスのデータが取り上げられ、ブリオンボールトにおいて、その顧客数がパンデミック前と比較して31%増加していることが紹介されています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、東京オリンピックから帰国した選手達へのインタビューを多く伝え、未だオリンピック熱から冷めていないメディアですが、そのような中でも、今週発表された、英国の大学入学資格として認められる統一試験Aレベルの結果と、16歳で受ける全国統一試験GCSEの試験結果について大きく伝えられていました。

そこで、これについて簡単にご紹介しましょう。

Aレベルは一般的に2年間のカリキュラムで、1年目のカリキュラムを修了するとASレベルの試験を受け、この結果を基に希望の大学に申請し、2年目のA2レベルで一定の結果を出すことを条件として、大学からオファー(入学許可)が出ます。

しかし、パンデミック最中の昨年3月からのロックダウンでは対面の授業ができず、生徒の試験準備に与える影響を考慮して、昨年同様に今年も2年連続でAレベル試験が中止となり、教師が最終成績を決定するという事になっていました。

前年は、教師が判定した成績を英試験団体監督機関のOFQUAL(Office of Qualifications and Examination Regulation)が開発したモデルを利用して標準化したものの、その結果40%の受験生の成績が教師の判定よりも低く調整されていたことから問題となり、教師の判定のみと変更になっていました。

そして、GCSEは義務教育終了時に受ける全国統一試験ですが、これも2年連続して教師による判定となっていました。

なお、GCSEの結果はAレベル過程へ進む際に学校ごとに結果を考慮することに加え、Aレベルと共に就職時に履歴書に記載する結果でもあるために、重要なものでもあります。

今年の結果はAレベルとGCSEで、教師判定ではなかった頃と比べてそれぞれ75%と40%高くなったとのこと。

しかし、その伸び率は、選抜制の私立学校と選抜制を取っていない公立を比べると明らかに私立のほうが上回っているとのこと。そこで、WIFI環境が整い、生徒がそれぞれコンピューターを所有していることで、ロックダウン中もオンライン授業を問題なく受けられる環境を持つ生徒と、そうではない生徒の家庭の経済的不平等も顕著となり、パンデミックを経てこの不平等が教育レベルに与える影響が議論されています。

新型コロナウイルスの感染が経済に与えている影響については広く伝えられていますが、経済的不平等による教育への影響は、今後時間をかけて明らかになっていくのでしょう。

コロナ禍を経て学び改善すべきことは多くあると思いますが、その一つとして、これを機に教育機会が経済格差に関わらず、更に均等なものになることを希望したいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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