金市場ニュース

ニュースレター(2021年7月2日)良好な雇用統計にも関わらず金価格は2週ぶりの高さへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1785ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.09%安と下げています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり26.20ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.27%高と多少ながら2週連続の上昇となっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1095ドルと、前週LBMA価格から0.5%安と下げています。

今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要

今週金はLBMA価格では週間の下げですが、終値ベースでは上昇で終える傾向です。

今週も金相場は、主要経済指標の結果によって、FRBの金融緩和縮小が早期に行われるかという観測の広がりと後退に反応する動きとなりました。

しかし、米雇用統計の先行指標と見られている良好なADP全国雇用者数で下げたもののその後長期金利とドルが高止まりする中で上昇に転じており、本日の良好な米雇用統計でもレジスタンスの1795ドルを追う動きをしています。そこで、直近のサポートラインの1750ドルを固めて、金ETFの資金流出も落ち着きを見せていることからも、金のセンチメントが、行き過ぎた弱気基調から変わりつつある模様です。

また、米株価指数のバブル的高さへの懸念からもポートフォリオ調整等も背景にあるようです。参考までにS&P500種と金価格の推移のチャートを下記に添付します。

金価格とS&P500種の推移 出典元 セントルイス連銀

なお、銀相場は金同様に今週上昇に転じ、終値ベースでは1%を超えて上昇しており、金銀比価を多少ながら下げて銀割安傾向が多少解消されています。

しかし、プラチナは終値ベースで2%安と、前週ロシア政府が鉄鋼などへの輸出税を課すると伝えられ、プラチナの主要産出会社であるロシアのノリルスク・ニッケル社へも懸念が広がったことで2.9%と大幅に上昇していたことからも、下げ幅を広げています。

日々の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は、トロイオンスあたり1780ドルを挟んだ、前週同様のほぼレンジ内での取引となっていました。これは、FOMC後の急落後、Summer Doldrums(夏場の市場低迷時)のように動意を失っていたことからでした。

火曜日金相場は、直近のサポートラインのトロイオンスあたり1755ドルを割り、一時1751ドルと4月29日の低値まで下げた後に1761ドルまで戻して終えていました。

これは、ドルが強含む中でインフレ懸念も後退しており、また同日発表の米住宅指標や消費者信頼感指数等の経済指標が良好であったことからも世界株価が全般上昇してリスクオン基調となっているなど、金のネガティブ要因が揃っていたからでした。

そのために、6月の金の下げ幅は、トランプ氏が大統領に選出された2016年11月以来の月間の下げ幅で7%を超えていました。

なお、この要因の一つとして、前日から欧州の銀行で実施され始めたバーゼル3による、金価格上昇を期待していた人々の売却もあるとも分析されていました。それは、バーゼル3は銀行の健全性確保のための国際ルールですが、ここで新たに、現物の裏付けのないペーパーゴールドに対して、Net Stable Funding Requirements(ネット安定資金調達比率)が課され、金現物の需要が高まり価格が上昇するという期待があったようです。なお、貴金属取引の中心である英国での実施は来年初めからとされています。

水曜日金相場は、ドルと長期金利が強含む中で、トロイオンスあたり1768ドルと前日終値から0.5%上昇して終えていました。

同日ドルと長期金利が強含んでいたのは、発表された米ADP全国雇用者数が、予想の60万人を上回る69.2万人であったこと、そしてFOMCのメンバーのクリストファー・ウォラー理事が2022年の利上げと早期の金融緩和引き締めは可能と述べたことが要因となっていました。

しかし、同日は第2四半期、前半期最終日であることからもポジション調整が起きていたようで、株価の上げ幅が抑えられる中で、2016年以来の月間の下げ幅を付けていた金は上昇していた模様です。

この間米株価指数は、今年前半期は1998年以来最も大きな上げ幅で、S&P500種は5ヶ月連続の月間の上昇を記録していました。

木曜日金相場は、ロンドン昼過ぎにトロイオンスあたり1782ドルまで上昇したものの、その後前日終値比を上回っているものの、1775ドルまで押し戻されて終えていました。

これは、同日発表された米新規失業保険申請件数は市場予想を下回り、また翌日の米雇用統計では強い予想が出ていた事から、先の指標が量的緩和縮小観測を広げていた模様です。

本日市場注目の雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想の70万人を上回る85万人と大幅に増加したものの、失業率は予想の5.7%と前回のの5.8%を上回る5.9%となっていました。

これを受けて金相場はトロイオンスあたり1776ドルまで下げた後に1795ドルと2週ぶりの高さまで一時上昇するなど神経質な動きをしていました。

これは、雇用統計の内容がFRBによる量的緩和縮小を急ぐほどでないという判断からのようで、そのような中で金はドルと長期金利が高いながら一服していることからも、前月大幅な下げを見せていることから買いが入りやすい状況であったようです。

なお、直近のレジスタンスは1795ドルであり、ここを超えなかったことで下げていたようです。しかし、1750ドルのサポートラインは固まりつつあるようです。

ブリオンボールト・リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週22日に、前週のFOMCの結果を受けて価格が大きく下げる中で、全ての貴金属で減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、33%減の237トンと、%の減少率は2019年5月19日以来で、5月4日以来の低さとなっていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比36%減の4,647トンと、%減少率は3月3日以来で、4月16日以来の低さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.06%減で13.69トンへ減少していたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比43%減で6.8トンと3月9日以来の低さとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で0.3トン(0.03%)増で1046トンと週間の増加傾向であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで全く動きがなく505トンと3月30日以来の高さで8週連続の増加後に横ばいの傾向。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で34.6トン(0.2%)減で17,361トンと4週連続の週間の減少傾向であること。

  • 金銀比価は、今週木曜日に68台を一時割ったものの、ほぼ68台で推移していたこと。

  • 上海黄金交易所(SGE)の価格は、ロンドン価格に対し先週に引き続きプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で、週間平均が4.22ドルと前週から増加していたこと。

  • コメックスの金、銀、プラチナの先物の取引量は、金が週平均で10%増加している中で、銀とプラチナはそれぞれ10%と28%減少していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週市場は、FRBの緊急緩和引き締め時期を予想するためにも、米雇用統計へ注目していましたが、来週の重要指標は、やはり今後のFRBの動きを見るためにも水曜日のFOMC議事要旨となります。

その他、来週は月曜日が米国の独立記念日の振替休日で休みになりますが、同日中国、ユーロ圏、英国のサービス部門PMIが発表され、火曜日に米国のサービス部門PMIとISM非製造業景況指数、木曜日は米新規失業保険申請件数、金曜日は中国の消費者物価指数と、これらも市場は注目することとなります。

詳細は主要経済指標(2021年7月5日~9日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国はデルタ変異種の感染者数の増加、日産自動車が英国で電気自動車向け電池の生産を強化すること、ダイアナ妃の銅像が建立されたことなど、コロナワクチン接種普及が更に広がり、感染者数が必ずしも入院者数や死者につながらないことが見え始めたことからも、Covid-19のみに偏らず様々なニュースが伝えられています。

そのような中で、ウィンブルドン、サッカーの欧州選手権のEuro2020、ツール・ド・フランス等で英国選手やチームが活躍するスポーツ関連ニュースで国中が湧いていますので、本日はEuro2020でのイングランドチームの活躍ぶりをお伝えしましょう。

Euro 2020は名前からもお分かりになるように、本来は昨年行われるべき大会が今年に延期されていた、4年に一度開催される欧州選手権で、今回が16回目とのことです。

すでにグループステージが終わり、16チームが決勝トーナメントへ勝ち抜き、先週末から対戦が始まっています。そして、グループステージを1位で勝ち抜いたイングランドは今週火曜日にドイツと戦ったのでした。

この2チームの対決は過去にもあるのですが、イングランドチームがドイツに主要大会のトーナメントで勝ったのは、1966年以来無いということで、その盛り上がりと緊張感は、サッカーとは比較的無縁な生活をしている私にも伝わるものがあり、イギリス中が息を潜めて待っているようでした。

そのような中、同日の対戦ではイングランドがドイツを2対0で破ったことからも、イギリスのファンの興奮状況は想像いただけることでしょう。そして、メディアも同日と翌日のニュース番組では、この結果がトップニュース、そして新聞の一面となるなどと大きな盛り上がりとなっていました。

ちなみに、現在のイングランドチームの監督はガレス・サウスゲイツ氏で、彼はイングランド代表として現役時代に主要大会で戦ったサッカー選手です。

そして、彼もイングランドチームでドイツと1996年の欧州選手権のセミファイナルで対戦していますが、残念なことにPK戦で彼がペナルティーキックを外したことからドイツに破れ、イングランドファンからかなり非難されるという経験をしていたのでした。

そこで、今回の大会は彼にとっても因縁であり、試合後のインタビューで、1996年の苦い思い出の中で今回の勝利の意味することについて問われた際の彼の言葉が、多くの人々の心に響いていましたのでお伝えしましょう。

「会場の巨大スクリーンで(当時のチームメイトの)デービット・シーマンをスタンドで見かけた。私は彼を含むチームメイトのために(1996年の結果)を変えることはできない。だから未だに心は痛む。しかし今日、人々に忘れがたい日を与えることができたことは素晴らしいことだ。」

25年を経て未だ心を痛めていたサウスゲイト監督が、イングランドチームの新たな歴史を作ることができたことを嬉しく思います。

そして、明日のウクライナとの準々決勝でイングランドチームが再び歴史を作ることができるのか。この試合に再び人々は釘付けとなることでしょう。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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