ニュースレター(2021年6月18日)早期の利上げ観測で金は一月半ぶりの低値へ急落
来週のニュースレターは休暇をいただいていますので、翌月曜日28日にお届けします。
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1773ドルと、LBMA価格のPM価格では4月30日以来の低値で、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から5.7%安で3週連続の下落となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり26.37ドルと、この価格では5月5日以来の低値で、前週のLBMA価格(午後12時)から6.3%安と下げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1069ドルと、LBMA価格ベースでは1月29日以来の低値で、前週LBMA価格から7.22%安と3週連続で下げています。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週貴金属相場は、先でもお伝えしているように数カ月ぶりの低さへと大きく下げることとなりました。
この要因は今週行われた米中央銀行の金融政策が話し合われる連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策は維持されたものの、金利予想でこれまで2024年まで無いと見られていた金利引き上げが2023年中に行われるとされ、しかも2回行われるという、これまでよりもタカ派的スタンスがサプライズとなったことからでした。
そこで、貴金属市場では売りが売りを呼び、パニック売りとも見られる売却が進み、金の今週の週間の下げ幅を上回ったのは、過去10年間でにおいては7回のみという急落となっています。
ちなみに、多くのアナリストは売りが一巡したら相場は落ち着きを取り戻すであろうと分析していますが、この間中国の需要は上海黄金交易所とロンドン受け渡し価格の差からも高まっていることがみられ、弊社顧客も買い機会と見ているようで購入需要が高まっています。
なお、銀とプラチナ相場も金と同様に先の理由から下げており、今週はドル建てで価格付けされているコモディティ市場も、ドルインデックスが早期の利上げ観測で2ヶ月ぶりの高さに上昇していることからも、銅がパンデミック以来の週間の下げを記録するなど、ほぼ総下げとなっています。
そして、FRBによる早期利上げでインフレが急激に上昇する観測が後退することで、実質金利はマイナスながらも上昇していることは、この数値とほぼ負の相対関係である金を押し下げることとなっている模様です。
下記に実質金利と金価格の推移を示すチャートを添付します。
日々の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、トロイオンスあたり1845ドルと、5月17日以来の低値まで一時1.7%と大きく下げていました。しかし、その後は買いが入り1867ドルで終えていました。
この間ドルはほぼ横ばいで、長期金利は上昇していたものの、その幅を超える大きな動きとなっていました。
この要因として、強気ポジションが積み増されていたコメックス金先物とオプションでの動き、生産者のヘッジ売りがまとまって入っている可能性、そして前週金曜日にマクロン仏大統領がIMFの金準備を発展途上国のために売却すべきとコメントしていたことなどが挙げられていました。
火曜日金相場は、翌日のFOMC後の米金融政策発表を待つ中で、トロイオンスあたり1857ドルと前日終値比0.5%下げていました。
この間同日長期金利は1.5%、ドルインデックスは90を超える水準で、前日からほぼ横ばいとなっていました。
そのために、FOMCを前にコメックス等のポジション整理が進んでいる模様でした。それは、金ETFに関しては、最大銘柄SPDRゴールドシェアと第2銘柄iShareゴールドはそれぞれ価格の動きが激しかった金曜と月曜日を含む数日間ポジションを変えていなかったことなどからでした。
水曜日金相場は、ロンドン時間FOMCの結果を待つ中で、トロイオンスあたり10ドル内の狭いレンジでの取引となっていました。
その後FOMC後の発表で、金利予想が2023年末迄に利上げを予想するメンバーが18人中13人と前回の7人から増加していたこと、しかも2回の利上げが予想されていたことがサプライズとなり、金相場はトロイオンスあたり55ドル一時下げて、1818ドルと5月7日以来の低さへと下げていました。
この間ドルは2ヶ月ぶりの高さへと強含み年初からの下げ幅の半分ほどを取り戻し、長期金利も10ベーシスポイントほど上昇し、金と強い負の相関関係を持つ実質金利も一日の上げ幅としては過去5年間でも7番目の高さとなっていました。
木曜日金相場はトロイオンスあたり1800ドルを割って一時1767ドルと、4月30日以来の低値を付けて、前日終値比2.3%下げていました。
これは、前日のFOMCの結果を受けた弱気基調を受け継ぎ、コメックス先物・オプションの取引高が数カ月ぶりの高さに上昇していたことからも、ファンドの損切りなどのポジション手仕舞いの売りで更に下げていたようでした。
本日金曜日ロンドン時間夕方に、金相場はトロイオンスあたり1772ドルと前日終値から多少下げているものの狭いレンジの取引となっています。
この間長期金利はFOMC以前の水準に下げているものの、ドルインデックスが4月半ば以来の高さを維持していることから、金の頭を押さえている模様です。
また、本日ハト派として知られているセントルイス連銀のブラード総裁が「インフレ加速でFRBは2022年にも最初の利上げをするだろう」と述べたことで、今週のFOMCの金利予想による2023年利上げよりも早まる可能性が示唆されたこと、またFRBがインフレをある程度抑え込む観測も広がり、金はインフレヘッジとしての需要が増加していたことからも、ネガティブな要因となっている模様です。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週8日に、米国消費者物価指数を待つ中で金がトロイオンスあたり1900ドルを割った際に、、金とプラチナは減少する中で、銀とパラジウムは増加していたこと。
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コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、ロングポジションが7週ぶりに減少し、ショートポジションも減少する中で、2.1%減で395トンと減少していたこと。また、建玉は3週連続で減少していたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.4%増の6,902トンと3週ぶりに増加していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.09%減で13.67トン減少していたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.8%増で12トンと2週連続で増加していたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で2.6トン(0.25%)減で1042トンと週間の減少傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで週間で0.77トン(0.15%)増で504トンと4月5日以来の高さで7週連続の増加の傾向。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で57.68トン(0.32%)減で17,843トンと2週連続の週間の減少傾向であること。 -
金銀比価は、今週半ばに67台を一時割ったものの、週後半の価格の下げで67台後半へと戻していたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格は、ロンドン価格に対し先週に引き続きディスカウント(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)を付けていたものの、本日プレミアムに転換していたこと。しかし、週間平均は未だマイナス5ドルであったものの、前週からは幅を狭めていたこと。 -
コメックスの金、銀、プラチナの取引量は、昨日の価格の急落で大幅に増加してそれぞれ、1月、4ヶ月、6ヶ月ぶりの高さとなったことで、週間平均も全ての貴金属で増加していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は水曜日のFOMCの結果とパウエル議長の記者会見等でよりタカ派スタンスが確認されたことで、金融市場は全般ゆるぐこととなりました。
そこで、来週も主要中央銀行の動きや主要中央銀行の政策金利に影響を与える指標は注目材料となります。
それは、火曜日の主要国製造業及びサービス部門PMI、水曜日のイングランド銀行政策金利発表、米国の耐久財受注と新規失業保険申請件数と第1四半期GDP、金曜日の米個人所得と個人消費支出(PCE)とミシガン大学消費者態度指数等となります。
それでは、詳細は主要経済指標(2021年6月21日~25日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
英国主要日刊紙タイムズの「インフレ再来と共に金購入が進む」の記事で、弊社データとリサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここで、弊社での金購入需要が先月に前月比97.5%増となっていたことに触れ、エィドリアンの「金は他の投資商品のパフォーマンスが悪い際に良くなる傾向がある」というコメントが引用されています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2021年6月14日~18日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2021年6月21日~25日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2021年6月14日)IMF金準備売却が呼びかけられ、強気ポジションが削られ、金ETFは積み増される中で、金価格は急落
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、今月21日に予定されていたイングランドのロックダウン最終解除が月曜日に一月延期されたこと、ベルギーで行われていた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議やバイデン大統領とプーチン大統領の首脳会談などが大きく伝えられていました。
そのような中で、先週土曜日からサッカーの欧州選手権であるユーロ2020が欧州の国々で開催されていることから、サッカー好きな英国ではほぼトップニュースで伝えられています。
このタイトルからもお分かりになるように、本来は昨年行われるべき大会がパンデミックで今年に延期されていたのでした。
この大会には欧州の24カ国のチームが予選を勝ち抜いて出場権を得て6つのグループに分けられ、グループステージを戦い、各グループ上位2チームと3位チームのうち上位4チームの計16チームが決勝トーナメントに進みます。
ご存知のように、英国は多くのスポーツは構成される4つの国でそれぞれ参加し、今回の大会にはイングランド、ウェールズに続き、23年ぶりにスコットランドがこのようなメジャー大会出場し、今夜イングランドと戦うことからも、その試合が行われるウェンブリースタジウムがあるロンドンは、多くのスコットランドからのサッカーファンで賑わっている模様がニュースで伝わっています。
ここでもお伝えした、英国の地方総選挙でスコットランドはスコットランド独立を推し進めるスコットランド民族党が大勝し、独立への気運も高まっており、イングランドにだけは負けたくないという気持ちもスコットランドの人々にはあるようです。
そのような中、本日この大会の決勝戦が開催される場所についてのニュースが伝えられています。それは、当初の予定となっている英国ロンドンウェンブリースタジウムですが、英国は現在英国外からの渡航者へ国別の感染者数などでカテゴリーを分けて自己隔離を入国後強いているために、大会関係者やスポンサーがそのような規則を緩和しない限りは、ブタペスト開催へ変更すると提案したようで、英国政府が何らかの措置を取る準備があると答えているとのことです。
サッカーファンにとっては決勝が英国ロンドンで行われる事が重要なようですが、Covid-19を抑え込むために設けられている規則に例外を作ることにを一般の人々は受け入れるのか、個人的には疑問視しているところです。