ニュースレター(2021年2月19日)米長期金利上昇で金は1月初旬以来の下げを見せる中、銀とプラチナは堅調に推移
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1787.28ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.6%安2週ぶりの低さとなっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり26.97ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から0.37%安と下げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1295.70ドルと前週LBMA価格から6.12%高で、3週連続の上昇で、月曜日には6年ぶりの高さの1340ドルを付けていました。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週貴金属相場はそれぞれ異なる動きをすることとなりました。
まず金は、米国の小売売上高や鉱工業生産などの予想を上回る経済指標やワクチン普及などからも早期経済回復期待が広がり、米長期金利が1年ぶりの高さへ上昇して、大きく押し下げられています。ちなみに、金利を生み出さない金は、金利上昇はネガティブ要因となります。
下記に金価格と米長期金利のチャートを添付しますが、ほぼこの2つの関係は逆相対関係であることがご覧いただけます。なお、このチャートのブレークイーブン・インフレ率は、インフレ期待を測る指標で、この数値が上昇することは、実質金利が下がり通貨の購買力が下がることからも、インフレヘッジでもある金にとってはサポートとなります。
それに対し銀は、古来通貨としても使われ富を保全する金と同様な動きをすることもありますが、工業用途需要が60%程であることからもコモディティの側面もあり、今週はその側面からも下げ幅を抑えて本日ロンドン時間夕方には前週終値比では上昇して終えて、2週連続上昇傾向となっています。
プラチナは、やはり60%程が工業用途、特に今年はバイデン政権が打ち出すグリーンエネルギーの用途が注目されており、フォルクスワーゲンスキャンダル以来この数年ディーゼル車の排気浄化触媒利用減少で大きく価格を下げていたことからも、割安感からも上昇の勢いを見せています。
日々の金相場の動きと背景について
週明け月曜日中国を含むアジア諸国が春節の休日、米国は大統領の日で休場である中で、プラチナが6年を超える期間の最高値でトロイオンスあたり1300ドルを超える中で、金はコロナワクチン接種普及や米追加経済対策等による経済回復への期待からもコモディティと株価が上昇しリスクオンとなる中で、トロイオンスあたり1821ドルへと前日終値比0.1%ながら押し下げられていました。
火曜日金相場は米長期金利が昨年3月以来の高さへ上昇する中、心理的節目のトロイオンスあたり1800ドルを割ったこともあり、大きく押し下げられて前日比1.8%安の1789ドルで終え、2週間ぶりの低さを付けていました。
この背景は、早期経済回復期待から株価が史上最高値を更新し、工業用途の高いコモディティが上昇するなどリスクオンで国債が売却されて金利が上昇し、コンピュータプログラム等のアルゴリズム取引の売却が進んだことからでした。
ちなみに、MSCI新興国株価指数は12営業日連続で上昇し17年ぶりの長期の上昇、銅は2012年以来の高値となっていました。
水曜日金相場は前日の基調を受けて米長期金利が1年ぶりの高さの1.33%へ上昇する中で、一時トロイオンスあたり1770ドルも割り1769ドルと3ヶ月ぶりの低さへ下げて、1777ドルで終えていました。これは5営業日連続の下げで前日終値比0.8%安となっていました。
木曜日金相場は、米長期金利が1年ぶりの水準で高止まりする中で、前日付けた低値のトロイオンスあたり1769ドルと前日終値から0.6%安と下げて終えていました。
同日は発表された米新規失業保険申請件数が予想を上回ったことが嫌気され、また長期金利の高さなどからも、株価は全般下げていました。
そのような中、春節の休暇明けの中国の金価格とロンドン受渡価格の差は9ドル弱と、引き続き中国での需要の高まりを示し、価格の下げによるアジアの需要増は金価格をサポートしているとアナリストは分析していました。
本日金曜日金相場は、米長期金利が1年ぶりの高さの1.348%へと上昇する中で、トロイオンスあたり1760ドルと一時昨年7月以来の低さまで下げたものの、その後リスクオンで株が上げてドルが弱含む中で下げ幅を取り戻し、前日比終値0.7%高のトロイオンスあたり1781ドル前後を推移しています。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日9日に貴金属価格がリフレーション観測で、金は多少ながらパラジウムとともに増加し、銀とプラチナは減少していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、0.01%増の329.23トンと増加していたこと。この水準は過去5年間を2.4%下回るもの。建玉は昨年9月末から100万枚を下回り、先週は2019年5月以来の低さ。
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コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比2.3%減の6,173トンと減少と2週連続の下げとなっていたこと。しかし過去5年間の平均よりは2.7%上回っていること。建玉は昨年9月以来の高さで、小口の報告不要のロングポジションは、レディットの投稿以来急増しており、2019年8月以来の高さ。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比5.4%減の13.9ンと9週間連続で減少し、昨年11月17日週以来の低さとなっていたこと。これは、5年平均を5.6%下回る。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比3.7%増で3.7トンと4週ぶりに増加し、5年平均の-1.1トンを上回るものであったこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で9.3トン(0.8%)減で1132トンと6週連続の下げの傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で1.36トン(0.26%)減で524トンと、5週連続の減少傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週は週間で234トン(1.2%)減で19,315トンと2週連続の減少傾向であること。 -
金銀比価は、今週66前後で推移し、週後半に多少ながら下げ(銀の割安傾向が解消)ていること。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格は、今週春節の休暇後の木曜日から引き続き、ロンドン価格に対しプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で、2日間の平均はド6.49ドルと、春節前に需要増加が見られていた前週からは、人民元が対ドル弱含み下げていたこと。 -
コメックスの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、今週貴金属価格が大きく下げる中で、それぞれ71%、31%、33%と増加していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は米長期金利の動きに金は反応し大きく下げていますが、来週も長期金利の動き、その動きを作る要因に市場は注目することとなります。
それは、米追加経済対策関連ニュース、新型コロナウィルスワクチン普及及び感染率関連ニュース、そして来週は月曜日にラガルドECB総裁の発言、そして火曜日にパウエル議長の議会証言があり、この内容へも市場は注目することとなります。
その他、木曜日の米国の新規失業保険申請件数や米GDPや耐久財受注、金曜日の米個人消費関連指標も経済回復やインフレ観測等の観点からも重要となります。
主要経済指標の詳細は主要経済指標(2021年2月22日~26日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2021年2月15日~19日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2021年2月22日~26日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2021年2月15日)株価とコモディティ価格が上昇する中でプラチナが6年ぶりに1300ドルを超える
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、新型コロナウィルスワクチン接種普及からも感染率が下がりつつあり、来週月曜日にジョンソン政権が発表する今後のロックダウン解除のステップの観測や、先行して発表されているスコットランドやウェールズ自治政府のステップなども大きく伝えられています。
そのような中、個人的には昨日のNASA火星探査車着陸のニュースに心踊らされましたが、英国王室関連のニュースもいくつかトップニュースで伝えられていますのでご紹介しましょう。
まず、本日はトップニュースでヘンリー王子とメーガン妃が王室の公務に戻らないこと、そのために軍の名誉職や団体の後援者の職も返上することが伝えられています。
昨年3月末に公務を退いて以来、1年後に王室との取り決めを見直すとされていたことの結果であるようですが、全般メディアは当然の結果と受け止めて伝えています。
ただ、ヘンリー王子とメーガン妃は、プライバシー侵害などでメディアとの対立を深めていたこともあり、軍の名誉職や団体の後援者の職も返上することを英国王室が発表後に夫妻が出した声明が、必ずしもこの王室の決定を受け入れていると思えないなどとの厳しいコメントもでています。
夫妻は先週末バレンタインデーには、第2子妊娠の発表を仲睦まじい写真とともにしていましたが、来月初めには米人気トークショーでのTVインタビューを受けることも伝えられており、王室を離れて米国での生活を築いていく意思を明確にしたようです。
そのような中、エリザベス女王の夫である、エジンバラ公フィリップ殿下が体調不良で17日から入院しており、新型コロナウィルスに感染したことではないようですが、本日も週末も大事を取って入院をされることがニュースで伝えられていました。
エジンバラ公は、ことし6月10日で100歳を迎え、すでに公務から引退をされていますが、94歳を超えて未だ現役で公務をこなすエリザベス女王を長く精神的にも支えていらっしゃることからも、一日も早い快復を心から祈りたいと思います。