金市場ニュース

ニュースレター(2021年10月22日)インフレ予想の高まりで1800ドルを超えた上げ幅を維持できず下落

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1807ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.97%高で、9月6日以来の高さとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり24.33ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から4.69%高と3週連続の上昇で9月6日以来の高さとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1066ドルと1.64%高で5週連続の週間の上昇で7月19日以来の高さとなっています。

今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要

今週貴金属市場は、インフレ上昇観測、そして市場のインフレ予想を示すブレーク・イーブン・インフレ率が急騰したことへ反応し、上昇することとなりました。

そこで、米国長期金利は5ヶ月ぶりの高さに上昇しているにも関わらず、インフレヘッジ需要からも貴金属が堅固な動きをすることとなりました。

しかし、急騰による利益確定、心理的節目の1800ドルを維持できなかったこと、ロンドン時間午後にパウエルFRB議長のスピーチで、量的緩和縮小が予定通り行われるべきというコメントが出たこと等から、上げ幅をほぼ失う事となりました。

下記に金価格とブレーク・イーブン・インフレ率5年物と10年物の推移を示すチャートを添付します。ここで、5年物が3%により近づいていたこと、10年物も2006年の水準へ上昇していたことがご覧いただけます。

金価格と5年先、10年先インフレ予想のチャート 出典元 セントルイス連銀

なお、金と比べて小さい市場規模からも、より高いボラティリティを見せる銀はほぼ7週ぶりの高さへ上昇しており、金銀比価は今週73台と8月上旬の低さへ下げています。

日々の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は狭いレンジで前週終値のトロイオンスあたり1767ドルを挟んで10ドルほどのレンジで推移することとなりました。

この間米長期金利は1.6%を3営業日ぶりに超えて上昇し、ドルインデックスはほぼ横ばいで推移していました。

これは、原油価格が数カ月ぶりの高値を付け、先週金曜日の予想を上回った米小売売上高等からもインフレ懸念で、米英中央銀行の利上げ観測が広がっていることが背景となりました。

また、同日発表された中国第3四半期GDPは予想を下回り、一年ぶりの低さとなったことで世界株価も下げていたことで、インフレヘッジと安全資産の需要もあり、金は長期金利の上昇にもかかわらず堅固に推移することとなりました。

火曜日金相場は昨日同様に米長期金利に反応する形で一時トロイオンスあたり1785ドルまで上昇後、1768ドルで終えていました。

この間米長期金利はロンドン午前中下げていましたが、午後に再び1.6%を超えて上昇し、ドルインデックスは9月末以来の低さへ下げていました。

ドルインデックスの下げは前日発表の米鉱工業生産が予想を大きく下回ったことが要因と分析されていましたが、米長期金利の上昇は短、中期のインフレ観測が広がっており、市場の利上げ観測が背景となっていました。

水曜日金相場は、長期金利が上昇を一服する中で、ドルが6営業日連続で弱含み、トロイオンスあたり1781ドルと前日終値比0.7%上昇して終えていました。

同日米国株価は6営業日連続の上げで史上最高値の水準へ上昇するリスクオン基調でしたが、エネルギー価格の高騰、サプライチェーン毀損によるインフレ懸念は広がっており、金を支えていました。

なお、ドルの下げはFRBによる早期の利上げ観測は広がりつつあるものの、他の中央銀行よりも遅いという観測からと分析されています。

木曜日金相場は、ドルインデックスが多少ながら上昇し、米長期金利が一時5月末以来の高さの1.7%へ上昇する中で、トロイオンスあたり1784ドルへと上昇して終えていました。

これは、市場の5年後のインフレ予想を示すブレーク・イーブン・インフレ率は、15年ぶりの高さへ上昇していたことが金にとって追い風となっていました。

ちなみに、同日発表の米新規失業保険申請件数は予想を下回り昨年3月以来の低水準で、中古住宅販売件数も予想を上回って今年最高値となっていたましたが、金市場への影響は限定的となっています。

金曜日金相場は、心理的節目のトロイオンスあたり1800ドルを超えて、ロンドン昼過ぎに1813ドルと9月14日以来の高さを一時付けたものの、その後上げ幅を失って前日終値の1786ドルへと下げています。

これは、前日市場が注目した5年物ブレーク・イーブン・インフレ率がデータが2004年に発表されて以来の高さの3.0%を超え、10年物も15年ぶりの高さの2.68%へ上昇したことに反応していた模様です。しかし、急激な上げで利益確定の売りに押されて下げ、1800ドルを割ったところでさらなる売りが進んだ模様です。

また一人のアナリストは、金価格の急激な下げはパウエルFRB議長の本日のコメントであったと分析しています。それは、「現在の経済環境が続く場合は量的緩和縮小の時期で来年半ばまでに終了するであろう。しかし量的緩和縮小の時期は必ずしも利上げの時期ということではない。」というもので、これまでのコメントをより上回るタカ派的なものではないようです。

また、ドルインデックスが弱含んでいることからも、ユーロ、日本円建て金価格は4ヶ月ぶりの高さのトロイオンスあたり1557ユーロ、gあたり6,627円とそれぞれ上昇していましたが、ともにその上げ幅を失っています。

ブリオンボールト・リアルタイム金価格チャート

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、全般強気基調で、先週米国消費者物価指数の発表の前に長期金利とドルインデックスが上昇を一服する中で、金と銀はネットロングを増加させ、プラチナはネットショートからネットロングへ転換し、パラジウムはネットショートを減少させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、2.9%増の217トンと3週連続で2019年5月28日以来の低さから増加していたこと。しかしその規模は5年平均を41%下回っていたこと。建玉は2週連続で若干ながら増加していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比7.4%増の773トンと3週連続で2019年6月11日以来の低さから増加していたこと。5年平均からは81%下回っていること。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのポジションは、10週ぶりにネットロングで、0.9トン。5年平均を91%下回っていること。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは5週連続のネットショートであるものの、17%減の6.5トンと、このレポートが発表された2006年以来最大規模を4週連続で更新後減少していたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で2.0トン(0.21%)減で978トンと、引き続き2020年4月3日以来の低さで、週間で5週連続の減少傾向となっていること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、7営業日連続で変化なく、週間でも3週連続の減少後変化なしの傾向。その残高は引き続き495トンと2020年4月5日以来の低さとなっていること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で217トン(1.27%)減で、17,000トンと週間で減少傾向で、10月は月間でネットで減少傾向経と前週から転換していること。
  • 金銀比価は、今週75台から徐々に下げて木曜日に73台と8月初旬以来の低さへと推移していること。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消:過去5年の平均は80、過去10年は72。)
  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週も700ドル台前半を推移していること。
  • 上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対し、プレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で、今週の平均は人民元価格が前週金曜日から下げる中で、8.29と前週の平均6.11を上回る水準であったこと。
  • コメックスの金、銀、プラチナの先物の取引量は、木曜日に銀価格がほぼ一月ぶりの高さへと上昇したことで、週間で銀は前週比26%増と前月平均を上回る水準へ上昇したものの、金とプラチナはともに前週比13%、24%減と下げて未だ前月平均を下回る水準であること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はインフレ及びそれに対応するFRBの金融政策予想が米長期金利を動かしていますが、来週は木曜日に日銀とECBの政策金利発表があり、量的緩和縮小や利上げ関連コメントによっては他の中央銀行とFRBの政策比較で米長期金利を動かす事になり重要となります。

また、引き続きFRBの金融政策に影響を与える指標へ市場は注目し、火曜日のリッチモンド連銀製造業指数、水曜日の耐久財受注、木曜日の米第3四半期GDPとGDP個人消費とコアPCE、新規失業保険申請件数、金曜日のユーロ圏の消費者物価指数と第3四半期GDP、米国第3四半期雇用コスト指数と個人所得と個人消費支出とシカゴ購買協会景気指数とミシガン大学消費者態度指数等となります。

詳細については主要経済指標(2021年10月18日~22日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では先週金曜日に有権者との面談中に刺殺されたエィメス英国下院議員について伝えられ、議員の安全をどう守るかなどについて広く議論されています。

そのような中で、今月末に始まる国連気候変動枠組み条約第26回会議(COP26)を前に、ジョンソン首相が2030年までに環境技術やクリーンエネルギーなどに900億ポンド(約14兆2000億円)の民間投資を呼び込む計画を発表していましたので、これについて本日はお伝えしましょう。

これは、温室効果ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)を50年までに実現するためにまとめた「ネットゼロ戦略」の一環とのこと。

また、今週米フォード車は英国工場に2億3000万ポンド(約360億円)を投じて同社の欧州初の電気自動車部品の製造拠点とすることを発表していました。

この投資には英政府の補助金も投入されるとのことですので、まさに官民上げてネットゼロを目指すということなのでしょう。

ちなみに、英国は2030年までにガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止し、2035年ま電位ハイブリッド車の販売も廃止することを発表しています。

そのために電気自動車への支援として下記も昨年11月に発表されていました。

  • EV充電設備の普及やインフラ整備に13億ポンドを支援
  • ゼロ排出車(ZEV)および超低排出車の購入者に対し総額5億8200万ポンドの補助
  • EVバッテリーの開発・拡大生産支援のため今後4年間で約5億ポンドを投入

ジョンソン首相は「最初に行動を起こし、大胆な取り組みを行うことで、電気自動車(EV)や洋上風力発電、二酸化炭素(CO2)回収技術などで決定的な競争力を築く」と強調し、その上で「グリーン産業革命を起こす」と表明しています。

しかし、先月の大型トラック運転手不足によるガソリンスタンドでのガソリン不足、天然ガス価格の高騰でエネルギー会社の破綻が相次ぐなど、英国はエネルギー危機最中にあります。

天然ガス価格の急騰は世界的なものではありますが、英国は原子力発電所の老朽化による緊急保守で一時停止、フランスからの電力ケーブルが火災で消失、悪天候で風力発電よりの電力供給減少、備蓄施設への補助金切れで2017年施設閉鎖で備蓄量は年間需要の2%以下と、電力政策の失敗も要因となっています。

環境問題を考えると、英国においてクリーンエネルギーへの転換を明確にすることは必要でしょう。しかし、それが現実的に達成できるまでに移行期間に、未だ必要となる化石燃料への政策は十分なものであるのかなど、昨今のエネルギー危機の背景を学ぶ中で懸念も持たざるを得ないところではあります。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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