金価格ディリーレポート(2021年10月18日)米英中央銀行の利上げが示唆される中で金価格は下落
月曜日ロンドン昼過ぎに金価格は前週終値から下げて推移していました。
この間、原油価格が数年ぶりの高値を記録する等インフレ懸念が高まる中で、市場は英国と米国の中央銀行の近い将来の利上げを予想し、世界の債券利回りが上昇していました。
また、中国の経済成長率がアナリストの予想を大きく下回り、一年ぶりの低であったことも最新のデータで明らかになっていました。
工業用途が主要需要である 銀の価格は、先週2.8%上昇した後、本日ロンドン昼過ぎまでに0.2%下げてトロイオンスあたり23.27ドルとなっていました。
また、工業用需要が3分の2を占めるプラチナは、本日1.6%安のトロイオンスあたり1043ドルとなり、先週の3%高から一転して下落していました。
そして、金現物価格は0.2%安のトロイオンスあたり1764.33ドルと、先週米消費者物価指数が30年ぶりの高さであったことを受けて一月ぶりに1800ドルを付けた後に、金曜日に 1.6%急落した水準から更に下落していました。
英国の保険大手ロイヤル・ロンドンのマルチアセット投資部門の責任者であるトレバー・グリーサム氏は、「市場は高いインフレ率、中央銀行が(利上げを開始する) 引き金に指をかけていること、そして成長が鈍化していることを見ている」と述べています。
2022年9月の米国の金利を予想する派生商品のポジションにおいては、 80%近くが、現在からそれまでの間に連邦準備制度理事会(FRB)が少なくとも1回25ベーシスポイントの利上げを行うと想定しており、1ヶ月前の30%以下から増加していました。
サクソバンクは、金が先週の高値を更新できなかったことを指摘し、「金は先週の一時的な急騰の後、再び大きく下げることとなった」とレポートで述べていました。
この急騰により、金価格は「 強いリスク基調と米国の利回りの急激な上昇を受けて、金曜日には急激に売られて直近のレンジに戻った」としていました。
しかし、今日のアジアの株式市場は、中国のGDPデータを受けて下落し、欧州のストックス600株価指数は、先週の2%を超える上昇分の0.5%を帳消しにしていました。
中国の7-9月期の経済成長率は前年同期比で4.9%にとどまり、2020年第3四半期以降で最も遅いペースとなり、アナリストの予測を下回り、前四半期の7.9%から減速していました。
政府や多くの金融機関、商業施設の借入コストの基準となる米国の10年物国債利回りは、月曜日の朝に1.6%を超え、5月下旬以来の高値を記録していました。
先週木曜日に発表された米消費者物価指数を受けて国債利回りは下落したものの、金曜日に発表された9月の米小売売上高が前月比0.2%減の予想に対し、0.7%増となったことで再び上昇に転じていました。
英国債利回りも、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁が、英国中央銀行が夜間金利の引き上げを準備していると発言したことで、2年債利回りは2年半ぶりの高水準となる0.747%まで上昇していました。
「金融政策は供給側の問題を解決することはできないが、行動する必要があり、特に中期的なインフレと中期的なインフレ期待にリスクがあると判断した場合にはそうしなければならない」と日曜にの スピーチで述べていました。
また、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、土曜日に「インフレはほとんど一過性のものである」という見解を繰り返し、ユーロ圏の政策担当者がよりハト派的な姿勢を示しているにもかかわらず、月曜日のユーロ圏の債券利回りは上昇していました。
しかし、ラガルド総裁は、ECBは賃金交渉や、物価をより恒久的に上昇させる可能性のあるその他の二次的効果に「 非常に注意を払っている」と述べていました。
ユーロ圏の指標となるドイツの10年債利回りは、4ベーシスポイント上昇の-0.13%となり、先週の5ヶ月ぶりの高値に向かって上昇していました。
一方、原油価格は本日、数年来の最高値を更新し、ブレント原油先物は1バレル86ドルと2018年10月以来の高値を記録しました。
そして、米国のウエスト・テキサス・インターミディエイト原油先物は84ドル弱まで上昇し、2014年10月以来の高値となっていました。
これら原油価格の世界指標は先週は少なくとも3%上昇し、8週連続の週間の上昇を記録していました。
英国と欧州のガス価格は、プーチン大統領が追加供給の可能性を示唆したにもかかわらず、ロシアのガスプロム社が来月の追加供給への 期待を低下させたことで、月曜日に約18%急騰していました。