ニュースレター(2020年9月18日)FOMC、日銀、イングランド銀行の金融政策発表を経て金は2週連続の週間の上昇へ
私は先週休暇をいただきましたので、遅れましたが先週のニュースレターの簡易版をお届けします。
週間市場ウォッチ
先週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)はトロイオンスあたり1950.85ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.18% 上げていました。また銀価格も、先週金曜日のLBMA銀価格はトロイオンスあたり27.06ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から0.69%上げていました。そして、プラチナは先週金曜日のLBMA価格は939ドルと前週金曜日のLBMA価格から1.08%上げていました。このため、先の全ての貴金属は2週連続の上昇を記録していました。
先週はFOMCが水曜日、日銀とイングランド銀行の金融政策が木曜日に発表される中で、それぞれの内容はほぼ予想通りということで、ドルの動きに反応する形でトロイオンスあたり1933ドルと1973ドルの間のレンジ内の動きにとどまっていました。
そこで、それぞれの金融政策発表の内容と市場の受け止め方をまとめてみましょう。
FOMC発表内容
-
(政策金利である)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%に据え置くことを決定した。
-
FRBは少なくとも今後現状のペースで国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を月400ドルの計1200ドルの買取ペースで保有を増やす。 -
雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレが長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。
市場の反応
ゼロ金利政策のフォーワードガイダンスとして①(完全)雇用②インフレ目標2%を長期的に上回ることとしたものの、これは8月の臨時FOMCで発表されていたことからも、市場がすでに織り込み済みで、より緩和的内容を期待していたことから、発表後に上昇したものの時間の経過とともに株価同様に金も失望の下げで反応することとなりました。
日銀金融政策発表
-
長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針の維持を賛成多数で決めた。 -
景気は「持ち直しつつある」との認識を示し、判断を上方修正した。3月会合で判断を下方修正して以降で初めての上方修正となる。
市場の反応
想定通りで反応は薄いものとなりました。
イングランド銀行金融政策発表
-
政策金利を0.1%に据え置き、債券購入プログラムを7450億ポンド(約100兆円)で維持することを全会一致で決めた。 -
マイナス金利の導入方法について年内に英健全性規制機構(PRA)と「体系的調整」を開始する方針も明らかにした。
市場の反応
先もほぼ想定内でマイナス金利導入に言及したことでポンドが一時急落したことで相対的にドルが上昇しドル建て金相場は下げ、ポンド建て金相場が上昇したものの、その後ポンドが持ち直したことで金相場もレンジ内の動きへと戻していました。
なお、先週は先の中央銀行の金融政策以外に、Covid-19のワクチン関連ニュースの、月曜日のファイザーCEOがワクチンを「年内に米国で供給を始める」可能性に言及したことや、火曜日に中国がメディアが中国疾病予防コントロールセンターの責任者の話として、「11月か12月初旬に中国の一般市民に接種できる可能性がある」といったコメント等で株価が上昇する中で、ドルが下げて金が上昇するという動きも出ていました。しかし木曜日には、米疾病対策センター所長の「年内ワクチン供給は非常に限られる」というコメントで前日のFOMCの失望の売りからも株価が下げていましたが、ドルは弱含んでいたことで金はその後緩やかに上昇していました。
その他の市場のニュ―ス
-
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週15日に翌日のFOMCでのハト派的内容の観測が広がり金価格が上昇する中で、全ての貴金属で増加していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比6.87%増の514トンと、3週連続の増加で金相場が史上最高値を付ける直前の8月4日以来の高さへと増加していたこと。そして建玉は11週連続で100万枚を超えていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比9.9%増の6,110トンと7月21日以来の7週ぶりの高さとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比98.81%増で17.84トンと4週ぶりの増加となっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比11.39%増の12.14トンと、3週連続の上昇で6週ぶりの高さとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週1トン(0.1%)減で1247トンと週間で4週連続の減少となっていたこと。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、516.7トンで先週全く変化なく、25週連続の週間増で止めていたこと。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、先週110トン(0.64%)減で17,211トンと、5週連続で週間の減少となっていたこと。 -
金銀比価は、先週71から72台と前週同様の水準であったこと。 -
今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、先週の平均が48と4週連続でそのディスカウント幅を最高値の75から狭めて、人民元高もあり、7週間ぶりの狭いディスカウント幅となっていたこと。 -
コメックスの金取引量は前週金価格がレンジ内の動きをする中で、平均量で前週比からも下げて、ロックダウン後先物価格と現物価格の乖離が起きた際の水準へ下げていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
本日は新型コロナウィルス感染拡大と大手銀行の不正資金洗浄関連ニュースで株価が大きく下げてドル高となる中で、一月ぶりのトロイオンスあたり1900ドルを割る水準へ大きく下げた金相場ですが、今週もウィルス感染及びワクチン、そして中央銀行の動き等が注目されることとなります。
そこで、今週火曜日から木曜日に行われるパウエルFRB議長の議会証言、その他FOMCメンバーの講演等が多く予定されていますので、ここでインフレ2%をある一定期間上回る水準という新たな政策の詳細が説明されるのか市場は注目します。
また、先週金曜日に亡くなったギンズバーグ米最高裁判事の後任人事が絡み更に混迷する追加経済対策をめぐる米議会の動きも注目されます。
その他主要経済指標の要旨は主要経済指標(2020年9月21日~25日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
-
主要経済指標(2020年9月14日~18日)先週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年9月21日~25日)今週の予定をまとめています。
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。
ロンドン便り
先週は休暇をいただいていましたので、お休みとさせていただきます。