最新の銀需給レポートが2020年にCovid-19の影響を大きく受けることを予想する中で銀需給金銀比価が下落
今週に入り金銀比価が2ヶ月半ぶりに100を割っています。
そこで、その背景と先月発表されたシルバーインスティチュートの2019年の銀の需給のレポートをまとめてみましょう。
まず金銀比価というのは、ドル建てのトロイオンスあたりの金価格をドル建てのトロイオンスあたりの銀価格で割ったものです。
2020年3月までの過去50年間の平均は57,7で、1980年1月1日に一時的に14まで下げたのが最低値で、最高値として100を超えたのは1991年2月に一度のみでした。
しかし、新型コロナウイルスの世界的感染拡大で多くの国で移動制限が起きたことにより、工業用途が60%ほどと10%に満たない、しかも安全資産としての需要が高まった金との需要の変化が生まれました。
そこで、3月からの金銀比価の平均は109と、3月19日の123をピークに高止まりをしています。この際に金は金融市場が大きく下げたことで現金化が進みトロイオンスあたり200ドル下げ、銀はトロイオンスあたり5ドル近く下げて、LBMA価格では2009年4月以来の低さとなっていました。
「世界の国々が移動制限を解除するニュースが伝えられる中で、今週世界市場に楽観的観測が広がっている。」とロンドンのマーケットメーキングバンクの最新のレポートでコメントされています。「そのために、安全資産としてのn金の需要は下がっている。」と続けています。
「他の貴金属も今週下げているものの、銀は他の貴金属よりも良いパフォーマンスをしている。これは、投機的要因とリスクオン基調がサポートをしているようです。」と続けています。
「金がその上昇基調を失う中で、昨今の上げ幅からも多少割高に見られているようです。」と米主要経済サイトのMarketWatchはMarex SpectronのDeavid Govett氏のコメントを引用し、「より割安な銀が魅力を増しているようです。」と紹介しています。
なお、ロコ・ロンドン銀現物価格が今週半ばに下げる中で、コメックスの7月決済のコントラクトの銀価格は40セントほどのプレミアムを付けています。
3月から4月にかけて金先物価格がロコ・ロンドンに対しプレミアムを付けていたことで、大西洋を超えて金地金が輸送されたことがデータから明らかとなっています。
コメックスが承認する保管場所には、今週9,656トンの銀が貯蔵されており、これは新年に貯蔵が確認されていた量から多少のみの減少となっています。
そして、今週銀のETFとして最大のiShareシルバーの残高は、今年に入り25%増の14,117トンと史上最高値を更新しています。
このコメックスの在庫と銀のETFの残高を合わせると、貴金属調査会社のMetals Focusがシルバー・インスティチュートのためにまとめた最新の需給レポートで今年の産出量と予想する24,800トンの95%となります。
そして、ロンドンで保管されているiShareシルバーの銀保管量を除いても、ロンドン専門市場が1月末の時点で保管する銀の総量は、年間の銀産出量の101%に達していることも、LBMAが発表したデータで明らかとなっています。
「構造的な供給過多は近年銀において見られています。」とシルバーインスティテュートが発表した最新の需給レポートSilver Survey 2020で解説されています。ここでは、過去10年間に7年間の供給過多が確認され、その結果地上に存在する在庫は7,905トン増加しているとのことです。
「この量は公的機関(中央銀行)と一般投資家が保有する銀貨や地金の量を含まず、これは72,312トン増加しています。」と解説されています。
Silver Survey 2020の要点
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銀価格は2019年にドル建てで年間で15%上昇。 -
供給量は全体で前年比1%増。そのうち産出量は-1%、リサイクル量は1%。 -
需要においては前年比横ばい。投資需要の12%の増加が宝飾品需要の-1%と銀製品の-9%減少を埋め合わせる。工業用途は前年比-0.1%とほぼ横ばい。 -
2020年の需給はCovid-19の影響を大きく受ける可能性を示唆。供給は4%減。需要は3%減を予想。