金市場ニュース

ニュースレター(2020年2月21日)新型コロナウイルス感染収束が見られない中で、経済指標の悪化からも金は急騰

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1644.78ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から4%上げています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり18.54ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から4.5%上昇しています。そして、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では978.25ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.6%上げています。

今週金相場は、新型コロナウィルス感染の広がりの経済への悪影響への懸念からも、ドル高や株高の中でも主要通貨建てで史上最高値や数年ぶりの高値を記録する大きな上げ幅を見せることとなりました。

月曜日金相場は、米国市場が祝日で閉まっていたことからも薄商いの中で、狭いレンジで動いていましたが、トロイオンスあたり1586ドルと終値ベースで上昇して終えていました。このような中で世界株価は中国の経済刺激策で全般上昇していました。

しかし、日本の第4四半期GDPが2014年以来の下げ幅であったことで、日本株は下げていました。そして、シンガポールが今年の経済成長率を下方修正をしたことも、日本とシンガポールのリセッション入り観測を広げていました。

火曜日金相場は、世界株価が全般下げる中で、トロイオンスあたり1600ドルを超えて年初のイランによる在イラク米軍基地攻撃以来の7年ぶりの高さの1605ドルへと一時上昇していました。

この背景は前夜アップル社が新型肺炎による供給問題で今四半期の売上高予想を達成できないと発表したこと、同日HSBCが前年12月期決算が大きく落ち込んだこと、そして大規模なリストラを発表したこと、そして同日発表されたドイツと欧州のZEW景況感も予想を下回ったことで、センチメントが悪化し、金が買われていたことからでした。

水曜日金相場は、ドルインデックスが2年半ぶりの高値で、世界株価も上昇する中で、トロイオンスあたり1612ドルと再び7年ぶりの高さを付けていました。

同日の株高は中国政府の積極的な景気支援策が、新型コロナウィルスの経済への悪影響を和らげるとの期待から、また前日の下げの調整が要因となりました。

また、同日発表された米生産者物価指数が予想を上回り、2018年10月以来の大きな伸びとなったことで、長期金利が上昇し安全資産の買いもあり、ドルが強含んでいました。

このような中でも金が上昇していたのは、やはり株価のボラティリティや新型コロナウィルスの懸念は消えておらず、安全資産としての買いが入っていたことからでした。

木曜日金相場は、株価が全般下げ安全資金としてドルが買われる中で、トロイオンスあたり1623ドルまで上昇し、今年年初の高値を超えて、7年ぶりの高さとなっていました。

この背景は、日本及び韓国で新型肺炎の死亡者が出たことで、収束の兆しがみられないと見られたこと、また前日までの株高基調を受けて高値警戒感が強まったことが背景となりました。

本日金曜日にドル建てでは7年ぶりの高さのトロイオンスあたり1649ドル、ユーロ建て金相場が7営業日連続でトロイオンスあたり1522ユーロと史上最高値を更新し、ポンド建て金相場はトロイオンスあたり1273ポンドと昨年7月以来の高さ、日本円金相場は40年来の高さのグラムあたり5918円を付けています。

この背景は、アジアで新型肺炎の拡大が弱まらず、投資家心理を冷やして株価が全般下げていること。また、本日発表の米国マークイットサービス業の景気指数が6年4カ月ぶりの水準に悪化し、売りが加速した。

そのために、米国債30年物の利回りが史上最低値に下げたことも、安全資産の金の購入を進めた模様です。

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先11日に世界株価が上昇しリスクオン基調となる中で、金を除き減少していました。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比8.45%増の713トンと4週ぶりに増加していたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比1.5減の8,711トンと減少していたものの、過去平均の2.4倍となっていること。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比2.36%減の73トンと2週連続で減少していたものの、未だ過去平均の3.5倍となっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比11.76%減の18.9トンと6週連続で下げて昨年9月半ばの低さとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で10トン増で934トンと2016年11月11日以来の高さとなっていたこと。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で1.5トン(0.4%)増で374トンと、7営業日連続で増加していたこと。

  • 世界の金ETF全体では、22日連続で増加していること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で全く変化がないこと。

  • 金銀比価は今週88台から木曜日までに87台へと減少(銀が割高)していたこと。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のプレミアムは、今週平均が1.41と少なくとも昨年8月以来最も低い数値となっていること。この間、SGEの価格は史上最高値を付けているものの、人民元が対ドル弱含んで昨年12月11日以来となっていること。

  • コメックスの取引量は今週木曜日までの週平均量で前週比64%増加していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週も新型コロナウィルスの感染関連ニュースで市場が動きましたが、来週もこの傾向は続くことになります。

そして、本日米国サービスPMIが2013年以来初めて経済の縮小を示したことで、市場が大きく反応していますが、このようにこのウィルスの影響が主要経済へ出ているのか等も注目されることとなり、次の指標は重要となります。

月曜日のドイツIFO企業景況感指数、火曜日ドイツ第4四半期GDP、米国ケース・シラー米住宅価格指数と消費者信頼感指数、リッチモンド連銀製造業景気指数、水曜日米国新築住宅販売件数、木曜日米国第4四半期GDPと個人消費とコアPCEと耐久財受注、金曜日の日本の失業率と鉱工業生産、ドイツの失業者と失業率、ユーロ圏とドイツのの消費者物価指数、米国の個人所得と個人消費支出PCEとシカゴ購買部協会景気指数とミシガン大学消費者大度指数等となります。

ブリオンボールトニュース

英国主要経済日刊紙のCity AMが今週「なぜ金投資を行うのかという」記事を発信し、弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが大きく取り上げられています。

この記事では、今年米国とイラン情勢緊迫化、新型コロナウィルス等で金融市場が揺れる中で、安全資産の金の投資需要が高まり金価格が過去3か月で9%上げているとした上で、エィドリアンの解説を次のように紹介しています。

「金価格は、2019年半ばから『デフレーショントレード』で主要国債が買われその利回りが急落する中で、安全資産の日本円やスイスフランクと共に金が買われている。金には金利がつかないために、しかし金を意図的に作ることはできないことからも、インフレを考慮した国債の実質利回りの動きに繊細に反応する。」と述べています。

そして、この記事では金投資の方法を紹介し、弊社で現物を保管する投資方法を金貨や金ETFと共に、その利点と欠点をエィドリアンの解説とともに紹介しています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週も英国では横浜に停泊しているクルーズ船の英国籍乗客について、本日21日英国政府が手配した専用機で帰還予定であることからも、新型コロナウイルスの感染関連ニュースが広く伝えられています。

その様な中で、今週英国ロンドンの現市長とその市長選候補者が共に2020年のオリンピックの日本開催が、新型コロナウィルスの感染広がりのために中止となるような場合は、ロンドンが代替開催地として立候補すると述べたことが伝えられています。

今年5月にロンドン市長選は行われますが、まず与党保守党候補者として出馬するショーン・ベイリー氏が「(ロンドンは2012年のオリンピックとパラリンピックを開催していることからも)インフラと経験がある。」とツィッターで宣言し、現市長の労働党のサディック・カーン市長も「すべての人々が東京での開催へ向けて素晴らしい働きをしている。しかし、もし必要であれば快く引き受けるとしています。」と広報担当を通じて英国主要経済日刊紙のCityAMへコメントを発表しています。

本日はそれに対し、小池東京都知事がロンドンで「代替開催」する案に言及したことに不快感を示したことも同紙でも取り上げられており、日本のメディアでは小池氏は「(ロンドン)市長選の争点にするような発言は適切ではない。」と指摘したことも伝えられています。

ロンドンはこれまでに、1908年と1948年と2012年に夏季オリンピックを開催しています。1908年は当初ローマで行われる予定だった大会がイタリアのヴエスヴィオ火山の噴火で困難となったことから、ロンドンでの開催となっています。

そして、1948年の開催は、本来1944年にロンドンで開催される予定だったものの、第2次世界大戦激化から中止されていたことから、第2次大戦後初めてこの年の開催となったとのことです。

2012年のオリンピックは予定通り開催されたものの、歴史的にも代替開催を経験し、そして2012年大会の記憶も新しいことからも、ロンドンは自信もあるのでしょう。

当初この新型肺炎発生が伝えられた際に、7か月先のオリンピックに影響が出るとは思いもよりませんでしたが、すでに2か月近くを経過していることからも、一日も早い新型コロナウィルス感染の収束が確認され、東京が素晴らしいホストとして、ラグビーワールドカップのように世界に誇れる大会を開催できることを心から祈りたいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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