ニュースレター(2020年1月31日)主要中央銀行の金融政策発表をこなす中で、新型コロナウイルス感染の広がりで金は7年ぶりの高さへ上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1583.05ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.2%上昇し、銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり17.89ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.3% 下げています。また、プラチナも本日午後3時の弊社チャート上では960.40ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から5.2%下落しています。
今週金相場は、FOMCやイングランド銀行の金融政策発表という重要イベントをこなす中で、引き続きコロナウイルス感染が世界的に広がるニュースで株価が下げて、安全資産として金、国債、日本円が買われ、金価格は7年ぶりの高さを一時付ける水準へと上昇することとなりました。それでは、その動きを日々追ってみましょう。
月曜日金相場は、アジア時間市場開始時に週末伝えられていたコロナウイルス感染拡大への懸念がリスク資産からの資金の逃避を促し、トロイオンスあたり1588ドルまで急騰した後に、1582ドルで終えていました。この間、日本円、主要国債価格が同様にリスク回避で上昇していました。
火曜日金相場は、株価が今週の下げから反発する中で、他の安全資産の主要国債同様に売られて先週終値まだ下げて、トロイオンスあたり1568ドルで終えていました。
また、同日発表の米国耐久財受注とリッチモンド連銀製造業指数も共に予想を上回っていたことも、金を押し下げていました。
なお、同日ポンド建て金相場はポンドが弱含んでいたことからトロイオンスあたり1208ポンドと上昇していました。このポンドの下げは、ジョンソン首相が本日米国の忠告に反して、ファーウェイの5G参入を容認することを発表したことが要因となりました。
水曜日金相場は、同日英国時間夕方のFOMC発表までは株価が前日同様に全般上昇する中でも堅調に推移していましたが、FOMC発表後株価が下げトロイオンスあたり1578ドルまで上昇して終えていました。
同日夕方までの株価の上げは、前日発表されたアップル社の2019年第3四半期の決算で売上高と純利益で過去最高を更新したことからですが、この間もコロナウイルスの感染の広がりもあり上値が抑えられていることから金をサポートしていました。
その後発表されたFOMCでは、政策金利は予想通り据え置かれたものの、その後パウエル議長の記者会見で、コロナウィルスによる感染の広がりが世界の経済活動を抑制する可能性が強いと発言したこと。また、短期金利の急上昇を抑えるために短期国債の購入をしてきたことに対し、4月まで継続した後にそのペースを緩めるとし、株価が下げることとなりました。
木曜日金相場は、世界株価が全般下げる中で、トロイオンスあたり1585ドルまで上昇して、ニューヨーク時間の国際保健機関(WHO)の発表で株価が上昇する中で、その上げ幅を失って1574ドルで終えていました。
このWHOの発表はコロナウイルスの拡大からも国際的な公衆衛生上の緊急事態宣言というものでしたが、中国との取引や渡航の制限を勧告しなかったことから、市場に安心感が広がりリスクオン基調となったようです。
ちなみに同日のイングランド銀行の政策金利発表では政策金利を含む金融政策は据え置かれました。また、イングランド銀行もFOMC同様に新型コロナウィルスによる経済への悪影響を指摘し、緩和的政策継続観測が広がることとなりました。
しかし、イングランド銀行が利下げに入るという観測もあったことから、発表後はポンド高となり、ポンド建て金相場はトロイオンスあたり1201ポンドと前週金曜日の水準まで下げて終えていました。
本日金曜日金相場は、世界株価がさらなるコロナウィルスによる感染が伝えられる中で下げており、前日の下げ幅を取り戻してトロイオンスあたり1586ドルへと上昇しています。
また、本日英国内で初めて感染患者2人を確認したことが伝えられ、そしてフランスの第4四半期GDPが予想に反してマイナスとなっていたことも、欧州株価が3か月ぶりの週間の下げとなる方向へと動かすこととなりました。
なお、ニューヨーク市場開始後米国株価も下げ幅を広げており、これはデルタ航空とアメリカン航空が中国向けフライトを停止したこと、ゴールドマンサックスが中国のGDP予想を引き下げたこと、また発表されたシカゴ購買部協会景気指数が予想を下回ったこと等が要因とされています。
その他の市場のニュ―ス
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今週発表された金業界のマーケティング団体のワールドゴールドカウンシルの最新レポートで、2019年通年の金需要が1%下げ4,355.7トンであったこと。ここで、価格の上昇からも宝飾品需要は前年比6%減となっていたものの、金ETFへの資金の流入からも投資需要は9%増加していたこと。 -
今週米国債の3か月と10年物の利回りが昨年10月以来初めて逆転をしていたこと。この現象は通常景気停滞のサインとも言われていること。 -
原油価格が中国政府が春節の休暇を翌週まで延長し、政府が公共事業会社や医療と医療品関連、そしてスーパーマーケット以外のビジネスは感染拡大を避けるために休暇後も2月9日まで閉めるべきとしたことから、需要減少からも3か月ぶりの低さへと下げていたこと。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、今月21日に中国で新型コロナウィルス感染が拡大しながらも、中国政府の処置がさらなる拡大を抑えるという観測も出る中で、プラチナを除く全ての貴金属で減少していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比1.2%減の806トンと2週連続で、市場2番目の規模から減少していたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.6%減の9,030トンと3週連続で減少していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比2.85%増の82トンと再び史上最高値の高さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比13.27%減の31.94トンと3週連続で下げていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で2.9トン増で903.5トンと11月7日以来の高さとなっていたこと。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で3.31トン(0.9%)増で、7営業日連続で増加し、371トンと史上最高値となっていたこと。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で0.83%増加していること。 -
金銀比価は今週水曜日に89.94と昨年7月半ばまで上昇し、木曜日に88.43まで下げていること。 -
今週上海黄金交易所(SGE)は春節の休暇がコロナウィルスによる感染拡大で休暇が来週まで延長されているために、データ発表がないこと。 -
コメックスの取引量は今週木曜日までの週平均量で前週比11%増加していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週も今週市場を動かしている新型コロナウィルス感染関連のニュースに市場は注目することとなりますが、その他の重要指標としては金曜日の米国雇用統計となり、その先行指標の水曜日のADP全国雇用者数となります。
その他の経済指標としては、月曜日の中国Caixin 製造業PMI、ドイツとユーロ圏と英国の製造業PMI、水曜日の中国のCaixinサービス業PMIとドイツとユーロ圏と英国と米国のサービス業PMI、ユーロ圏小売売上高、米国貿易収支とISM非製造業景況指数、木曜日の米国新規失業保険申請件数、金曜日の中国とドイツの貿易収支、ドイツの鉱工業生産となります。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2020年1月27日~31日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年2月3日~7日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2020年1月27日)金価格が中国のコロナウイルス危機で株価が下げる中で3週間ぶりの高さへ
ロンドン便り
今週英国は、中国及び世界のコロナウィルス感染のニュースがトップで伝えられていましたが、本日午後11時に英国は47年間加盟していたEUを離脱して移行期間へと入ることからも、その関連のニュースも多く伝えられています。
しかし、本日の英国のEU離脱後も日々の生活は今年12月末までの移行期間中は全く変わず、英国を含むEU圏内の人と物の自由な移動は継続行われます。そのような中でも、この日を記念していくつかのイベントが計画されていますのでそれについてお伝えしましょう。
まず、先日こちらでお伝えした離脱を記念して改修中のビックベンの鐘を午後11時に鳴らすキャンペーンは、結果的には通らなかったとのことです。
しかしながら、本日閣僚会議は英国北部のサンダーランドという、2016年の英国のEU離脱の是非を決める国民投票の結果で、最初に離脱という開票結果が伝えられた場所で行われています。
そして、欧州議会の英国議会議員は本日でその職を解かれることから、英国独立党の議会議員は、バグパイプと共に皆で議会を去っている模様がニュースで伝えられていました。
また、国会議事堂近くのパーラメントスクエアでは離脱派の人々がこの離脱に合わせて午後11時にパーティを行うとのこと。そして、首相官邸ではジョンソン首相が記念レセプションを主催し、内閣閣僚やEU離脱協議に携わる人々と共にこの離脱を迎えるとのことです。
EU離脱を決めた国民投票から3年半を経ても、国民投票の結果(離脱52%対残留48%)のように英国のほぼ半数に至る人々がEU残留を望んでいることは変わらず、残留派の人々にとっては祝える日でないことは確かです。
実際にスコットランド国民党党首でスコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は、スコットランドは国民投票でも残留を選択していたことからも、「スコットランドは意思に反してEUを離脱せざるを得なくなった」とコメントを本日発表しています。
その様な人々を納得させ、国を一つにまとめ上げること、そして11か月という短い期間でEUとの貿易協議合意へ達することができるのか、ジョンソン首相とその政権が成し遂げなければならないタスクは壮大なものです。しかし英国はその道を選択し、その一歩を踏み出そうとしていることからも、この道のりをしっかり見極めたいと思います。