ニュースレター(2019年9月6日)数年来の金価格高値更新後、米中会談日程設定で下落し、予想を下回る米雇用統計で多少戻す
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1525.15ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.2%下げています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり18.14ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から1.3%の下げとなっています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では960.69ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2.3%上昇しています。
今週金相場は、米中貿易戦争の激化や経済指標の悪化が嫌気されリスク資産が下げる中で、ほぼ主要通貨建てで史上最高値、もしくは数年来の高さへと上昇した後に、米中貿易協議の日程が発表され、また米国の良好な経済指標や英国とイタリアと香港の地政学リスクの後退等もあり、2週間ぶりの水準へ下げて、米雇用統計を迎えていました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。
米国がレイバーデーの祝日で商い薄の月曜日に金相場は、アジア時間に0.9%上昇して始まることとなりました。
これは、週末に米国が中国製の靴やテレビなどの日常用品への15%の追加課税を発動し、中国も原油などの米国製品への追加関税を発動したことからでした。
また、同日の民間企業発表の中国PMI製造業データは拡大・縮小の節目となる50を上回っていましたが、週末発表された政府発表の中国PMI製造業のデータが50を割っていたことも市場センチメントを悪化させていました。
また、香港の抗議デモの激化、アルゼンチンが資本規制を行うと発表し、英国の合意無きEU離脱への懸念も高まっていました。
火曜日金相場はトロイオンスあたり1549ドルへと一時一週間ぶりの高さへと上昇し、ポンド建てとユーロ建てでは史上最高値を更新していました。
このきっかけは、同日発表された米国のISM製造業景況感指数が市場の予想を下回り、しかも景気の減速を示す50を割る2年ぶりの低い数値であったことから、米中貿易戦争の悪影響が米国製造業に現れているとの判断で、ドルが弱含み金が上昇したことからでした。
その後、トランプ大統領も中国を非難するツィートを出すしており、また貿易協議の日程も決まっていないなどと、米中貿易戦争の解決の見込みも見えないことも市場心理を悪化させていました。
なお、銀価格は金の動きに反応して同日トロオンスあたり19.15ドルと2019年9月以来の高さへと上昇し、金銀比価は81を割る水準へ銀割安を解消していました。
水曜日金相場はドルが弱含む中でトロイオンスあたり1557ドルと先週の6年半ぶりの高さを超えて一時上昇していました。
この背景は、まず香港政府が「逃亡犯条例」の改正案を撤回したこと、英国議会がEUからの離脱延期を政府に義務付ける法案を可決したことで「合意なき離脱」が避けられるとの観測も出たこと、そして同日発表された中国や欧州のサービス業のPMIが全般予想を上回ったことで投資家心理が改善したことからでした。
また、同日米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が講演し「FRBは景気拡大を持続させるため適切に行動するだろう」と述べて、今月17~18日に開くFOMCでの追加利下げを示唆したことも、ドルを弱含め金を押上げた模様です。
そして、同日夕方発表されたベージュブックは、米国経済の成長が製造部門が世界的な還俗の影響を受けたことで「控えめ」としていたことも、金をサポートすることとなりました。
なお、前日81を割る水準へ下げた金銀比価は本日もトロイオンスあたり19.60ドルとほぼ3年ぶりの高さへ上昇する中で80を割っていました。
木曜日日金相場は米国株が1%を超えて大きく上昇する中で、一時トロイオンスあたり1507ドルと前日の6年半ぶりの高値から3.2%と大きく下げていました。
これは、同日米中両国が閣僚級の貿易協議を10月初めにワシントンで開くことを合意したことが伝えられたこと、また英国時間昼過ぎに発表されたADP全米雇用者数が予想の14万人を上回り19.5万人であったこと、そしてISM非製造業景況指数も予想を上回ったことから、投資家心理が改善したことが要因となりました。
また、香港情勢の鎮静化への期待や英国の合意無きEU離脱回避観測の広がりも背景となっていました。
本日金曜日は、市場注目の雇用者統計が発表され、非農業部門雇用者数は予想の15.8万人を下回る13万人で、前回数値16.4万人は15.9万人に下方修正されていました。
これを受けて金価格は上昇を始め、本日午後5時半の段階でトロイオンスあたり1523ドルと昨日の下げ幅の半分ほどを削っています。なお、本日パウエルFRB議長は経済見通しのスピーチをロンドン時間午後4時半から行っているようですが、その影響は現時点では限定的です。
その他の市場のニュ―ス
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金曜日午前中には中国人民銀行が預金準備率を下げ今月16日から0.5ポイント下げることが発表されていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに11.4トン増加し889トンと、今週水曜日の895トンから減少はしているものの、引き続き2016年11月以来の高さとなっていること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週水曜日と木曜日に2日連続で減少し、前週末より0.4%減となっていること。 -
金銀比価は今週水曜日に79台へと下げたものの、本日午前中には83へと銀割安へと戻しています。 -
先週末に発表されたコメックスデータによると、貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週火曜日に米中貿易戦争激化やドイツGDPの悪化やイタリア政局混乱で全ての貴金属で強気ポジションが増加していたこと。 -
コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは0.97%増の895トンと、史上最高の高さで、また建玉は先週火曜日も100万枚を再び越え、再び史上最高値をつけていたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に21%増の9,034トンとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、6週連続でネットロングで、143%増で13.17トンとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは2.82%増の33.2トンとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週も米中貿易協議関連ニュースや米中関連経済指標で市場は動き、ポンド建て価格は英国議会のブレグジットを巡るニュースで動きました。
そこで、来週もこの関連ニュースに市場は注目しますが、木曜日のECB金融政策発表はユーロを対ドル動かし、相場を動かす可能性があるのと、米国の9月のFOMCが翌週であることからも、FRBが注目材料とする指標も重要となります。
そのようなことから、週末日曜日に発表される中国の貿易収支と輸出入高、月曜日のドイツ貿易収支と輸出入高、火曜日の中国消費者物価指数、水曜日の米国生産者物価指数、木曜日の米国消費者物価指数、金曜日の米国小売管理及び小売売上高とロイターミシガン大消費者信頼感指数等となります。
ブリオンボールトニュース
今週は弊社が毎月まとめている金投資家インデックスが発表されたことからも、多くの主要メディアで取り上げていただきました。
金の情報を日本語で網羅するゴールドニュース「【金投資家インデックス】2016年以来のペースで金投資を進め、新顧客数は159%増」
ここでは、弊社プレスリリースを取り上げていただいています。
ロイター通信「ブレグジットが安全資産への金への資産逃避を記録的に進める」
ここでは、米中貿易戦争の激化に加えて英国のEU離脱の混乱への懸念が安全資産と見られている金需要を高めているとし、英国で上場している金のETFが今年前半期に63トン、評価額では30億ドル相当の残高を増加させていることを紹介し、世界の金ETFが60%増となっている中で、78%が英国ベースのものと伝えています。
そして弊社の担当者のコメントとして「今朝の状況では、世界全体の顧客の売買のバランスがほぼ取れている中で、英国の顧客は明らかに購入が売却よりも多い」を紹介しています。
米主要経済サイトのMarket Watch「ISM数値が2016年以来の低さで金が6年ぶりの高さへ上昇」
この記事では、昨日金相場が米国ISM非製造業景況指数の悪化で急騰していたことを伝え、その背景として米中貿易戦争やUKのBrexitやイタリア政局などの懸念が金や貴金属需要を高めていると説明し、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメント「もし、金価格と金の需要が、市場の懸念の度合を測るものであれば、欧米の投資家や貯蓄家は急激に近い将来の市場環境の悪化を感じているようだ。」を取り上げています
そして、弊社の金投資家インデックスが先月11か月ぶりの高さへ上昇したこと、新規顧客数が6年ぶりの高さであること等を紹介しています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2019年9月2日~6日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2019年9月9日~13日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2019年9月2日)金強気ポジションが急増し貿易戦争が継続する中で、金価格上昇 -
金投資家インデックス】金価格が急騰する中で新たな金投資家数が159%増となる
ロンドン便り
今週も英国は英国のEU離脱を巡る英国議会での与野党の攻防がトップニュースで伝えられています。
現時点では過半数を持たない与党を率いるジョンソン政権の劣勢が明らかですが、かといって、野党連盟がEU離脱の明確な道を持っているということでもなく、混迷は今後も続くことになりそうです。
そのような中、本日は趣を変えてスコットランドのネス湖の伝説の怪物(もしくは未確認動物)ネッシーの研究を行ったニュージーランドのチームがその結果を今週発表していたので、お伝えしましょう。
ネス湖のネッシーは、記録としては古くは西暦565年の聖職者子ルンバの障害に関する伝記ですでに言及されていたとのことです。
その後、1933年以降目撃例が多く報告されていましたが、1975年のボストン応用科学アカデミー研究チームによって撮影されたネッシーのほぼ全身と後部のアップを写したという水中写真は世界的なニュースとなり、20世紀最大の神秘としてその逸話は広がったとのことです。
そして、最新では2005年にネス湖の湖畔でシカの死体と共に長さ10センチほどの牙状のものが見つかっており、これをネッシーの牙と信じる人がいるとのことです。
しかし、今回の研究結果では、湖の250か所以上で採取した水のDNAからネス湖に住む全ての生物リストを作成した上で、恐竜などに結びつくDNAは発見できなかったものの、巨大なウナギの可能性は否定できないとのことでした。
ただ、研究チームの代表はインタビューに答え、証拠がないからと言って存在しない証明にはならないとも述べており、個人的にはDNAが取られていない地球外の生命体である可能性も残しておきたいともコメントしていました。
1500年近く伝説の怪物として信じられてきたネッシーが実はウナギだったということでは、ネッシー信者にとっては辛いところでしょうが、すでに解明されているDNA以外の物であればその断定はできないと夢を残すところは粋な計らいとも思えました。