金市場ニュース

ニュースレター(2019年9月27日)米中貿易協議の進展観測から金価格下落

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1491.46ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.7%下げ、4週連続の下げとなっています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり17.51ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から2%と2週連続で下げています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では923.21ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.8%とやはり2週連続で下落しています。

今週は米中貿易協議とドイツ経済への懸念で、2週間ぶりの高さへと一時上げたものの、トランプ大統領の楽観的なコメントや中国が米農産物を購入するなど歩み寄りの姿勢を見せたことで、安全資産の需要が減少し、トロイオンスあたり1500ドルを割り、一週間ぶりの低さへと下げることとなりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

月曜日金相場は一時トロイオンスあたり1526ドルまで上昇した後に1520ドルへと戻して終えていました。

上昇の背景は、トランプ大統領が中国との「部分合意」を否定し米中貿易協議への警戒感が高まったことと、ドイツのPMIのデータで、ドイツ経済が2013年以来初めて縮小したことが明らかとなり欧州経済への懸念が広がったことからでした。

また、前週金曜日にトランプ政権がトランプ大統領曰く「これまででも最も厳しい経済制裁」を発表し、サウジ防衛体制強化に向けた米軍増派や兵器供与を発表し、地政学リスクが高まっていたことも金をサポートしていました。

その後発表された米国のサービス業PMIは予想を下回ったものの経済の縮小と拡張の50をかろうじて上回っており、製造業PMIは予想を上回ったこともあり、その後は利益確定等もあり押し戻されることとなりました。

火曜日金相場は、一時トロイオンスあたり1535ドルまで上昇していました。

同日は米中貿易協議が2週間後に行われる見通しと前日ムニューシン米財務長官が説明したことを受けて進展期待からリスク資産が買われる中で、多少下げていましたが、その後トランプ大統領が国連での演説で中国が為替コントロールをしていること、著作権を侵害していることを非難したことで、再び上昇することとなりました。

また、同日セントルイス連銀のブラード総裁がさらなる利下げに言及したことも金のサポートとなっていました。

なお、同日英国最高裁はジョンソン政権の議会停止を違法と判断したことから、合意がなくとも10月末で離脱を望んでいるジョンソン首相の歯止めになるという観測からも、ポンドが強含みポンド建て金相場はトロイオンスあたり10ポンドほど一時下げていました。

さらに、トランプ大統領が来年の大統領選で民主党の有力候補と目されているバイデン前副大統領の息子の調査をウクライナの大統領へ要請したという問題で、大統領弾劾の可能性が下院情報委員会のシフ委員長によって言及されていたことも、政治リスクとして金をサポートしていました。

水曜日金相場は、ドルが数週間ぶり高さへ上昇する中で前日終値比1.6%の大きくさげ、トロイオンあたり1506ドルで終えていました。

この大きな下げは、ニューヨーク時間に発表された二つのニュースが要因となっていました。

一つは米国の新築住宅販売件数が予想を上回っていたこと、そしてもう一つはトランプ大統領が中国との通商合意が早期に実現する可能性があるとの考えを示したことからした。

これを受けて、トランプ大統領の弾劾懸念で一時下げていた株価もリスクオンで上昇して終えていました。

また、米民主党はトランプ大統領の弾劾調査を正式に開始すると発表したものの、野党民主党が多数となっている下院で弾劾追訴決議が成立したとしても、上院の弾劾裁判で弾劾へと持ち込むのは、与党共和党が多数を占めるために難しいという観測もドルを強めたようでした。

木曜日金相場は、ドルインデックスが前日の高い水準を維持する中で、トロイオンスあたり1504ドルと1512ドルの狭いレンジで推移し、前日とほぼ同じ水準で終えていました。

同日は市場注目の米国GDPや個人消費支出などが発表されましたが、GDPは予想通りで、消費支出は多少上ったものの、FRBが目標としている2%には至っておらず、市場への影響は限定的となっていました。

本日金曜日金相場は、ドルインデックスが多少下げているものの高止まりしていることから、トロイオンスあたり1487ドルへと10日ぶりの低さへと一時下げていました

これは、中国が大豆など米国の1次産品の輸入を拡大したと伝わり、また米中の閣僚級の貿易協議が10月10日から11日にワシントンで開かれると伝えられたことで、協議進展の観測が広がっていることが背景であったようです。

しかしながら、米政府はファーウェイへの禁輸措置の一部猶予を延長しない方針とも伝わっており、市場の警戒は完璧には解けていなかったところへ、ロンドン時間午後5時過ぎに、トランプ政権が米投資家による中国への資金流入制限を検討とブルームバーグ等が速報として伝えたことからも、リスク回避の動きで金がトロイオンスあたり1500ドル近くまで上昇をしています。

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに30.8トン増加し924トンと、2016年11月半ば以来の高い水準となっていること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで4.34トン(1.3%)増の約338トンとなっていたこと。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週1.7%増加していること。

  • 金銀比価は今週は火曜日に81台へ下げたものの、本日は85台の高さ(銀割安)となっていること。

  • インドの金需要減少が継続しており、Refinitivによると、この四半期は数十年ぶりの最も低い需要量で宝飾品需要は60トンを超えない量で、投資需要はほぼ存在しない状況とのこと。

  • 先週末に発表されたコメックスデータによると、貴金属先物・オプションの資金運用業者の強気ポジションは、先週火曜日に前日のサウジへの攻撃から市場が落ち着く中で、金とパラジウムが増加し、銀とプラチナが減少していたこと。

  • コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは5.71%増の815トンとなっていたこと。

  • コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に11.4%減の8,478トンとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、2.83%減で41.9トンとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは7.9%増の40.7トンと7週間ぶりの高さとなっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週は米国雇用統計が金曜日に発表され、その他多くの重要な指標が発表されます。

それらは、月曜日の中国の製造業及び非製造業のPMIとCaxin製造業PMI、ドイツ小売売上高と失業率及び失業者数と消費者物価指数、英国の第2四半期GDP、ユーロ圏の失業率、火曜日のドイツ、ユーロ、英国、米国のMarkit製造業PMI、ユーロ圏の消費者物価指数、米国のISM製造業景況指数、水曜日の米雇用統計の先行指標と見られているADP全国雇用者数、木曜日のドイツとユーロ圏と英国と米国のMarkitサービス業PMI、米国のISM非製造業景況指数、金曜日の米国貿易収支などとなります。

また、市場は継続米中貿易協議関連ニュースに注目しますが、合わせてFRBによる今後の利下げ予想に関して、FOMCメンバーの講演会での内容でも市場が動く可能性がありますので、予定されているメンバーの講演会日程は、火曜日と木曜日のシカゴ連銀エバンズ総裁講演、火曜日のセントルイス連銀ブラード総裁講演、水曜日のFOMCメンバーのウィリアムズ氏の講演、金曜日のボストン連銀ローゼングレン総裁講演となります。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週英国では、今週火曜日にジョンソン首相が議会を閉鎖した措置の是非をめぐる訴訟で、最高裁が違法とする判決を下したこと、そして議会が翌水曜日に再開され、そこでの激しい討議の模様が日々伝えられています。

その様な中で、今週は英国王室のヘンリー王子一家が初の公式外遊でアフリカを訪問している写真もまた、主要日刊紙の一面で取り上げられていました。

まず、ヘンリー王子の一家は南アフリカを訪問し、生後5か月のアーチー王子も公式外遊に参加した最年少の王室メンバーとして公の場に初めて姿を見せていました。

そして昨日は、一人でアンゴラを訪問中のヘンリー王子が、故ダイアナ元妃が1997年に交通事故で亡くなる数か月前に、地雷原跡地を歩いてアンゴラの地雷問題にスポットライトを当てたように、地雷原跡地を歩いている写真が、本日は当時の故ダイアナ元妃の写真と並べて大きく取り上げられています。

アンゴラでは、2002年までの27年間の内戦中に埋設された100万個以上であったとのこと。そして、これによる負傷者は1975年から2015年までに1600人以上となっているとのこと。

元ダイアナ妃は、アンゴラを訪問した年に亡くなったことからも、その年の12月に対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約が署名されたことを知ることはなかったとのこと。

22年を経て、10万個の地雷を撤去後もいまだ多くの地雷が残っているアンゴラを訪れ、ヘンリー王子が故ダイアナ元妃のレガシーを受け継ぎ活動をする姿は心を打つものがあります。

ヘンリー王子の息子のアーチー王子が成長する頃には、ヘンリー王子が望んでいるように「地雷撤去を終え、コニュニティーに平和が訪れ、多くの機会を人々が得ることができることになっていること」を私も祈りたいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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