金市場ニュース

ニュースレター(2019年9月13日)ECBの金融緩和再開で上昇した金は、米中貿易協議進展期待からさらなる下げを見せる

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1503.54ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.3%下げ、2週連続の下げとなっています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり18.14ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)とほぼ同じ水準となっています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では961.64ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.5%上昇しています。

今週市場は欧州中央銀行による金融政策発表に注目していましたが、その前後に発表された米中貿易協議ニュースでも動かされることになりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

月曜日はトロイオンスあたり1496ドルと心理的節目の1500ドルを割って終えていました。

これは、ムニューシン米財務長官が「中国の貿易交渉担当者が米担当者と協議を再開したことは中国の誠意の表れだ」と述べたことが伝えられ、S&P500種やダウ工業株が6週ぶりの高さへと上昇したこと等からも、金は押し下げられることとなりました。

火曜日金相場は、4日連続の下げを記録し、トロイオンスあたり1487ドルでおえていました。

これは、翌日何らかの金融緩和政策が発表されることが予想されているECBの金融政策発表を待つ中で、ポジション調整が起きていたことからでした。

また、同日中国通信機器大手のファーウェイが米政府に対する訴訟の一部を取り下げたと発表し、米中の歩み寄りの兆しと投資センチメントが改善したことも要因となりました。

なお、金利のつかない金にとって、国債利回りが下げている場合はプラスですが、同日は利回りがほぼ全般上昇し、ドイツ国債10年物と米国債10年物はひと月ぶり、2年物は2週間ぶりの高さていることも金の頭を押さえることとなりました。

また、同日トランプ大統領がツィッターで国家安全保障問題担当大統領補佐官のボルトン氏を解任したことを発表したことで、ボルトン氏は「強硬派」と知られていたことから、イランリスクの後退とも見られ、原油価格が急落し、日本円と共に金も下落することとなりました。

水曜日金相場は、株価が全般上昇し、S&P500種とダウ平均株価が6週間ぶりの高さに上昇する中で、前日の終値からは上昇し、トロイオンスあたり1493ドルで終えていました。

同日の株価の上昇は、中国が追加関税をかける米国製品の対象から16品目を除外すると発表し、米中協議に向けて柔軟な姿勢が見られたことが好感されたことからでした。

木曜日金相場は、ECBの金融政策発表で予想通り利下げと緩和再開が発表され、トロイオンスあたり20ドル近く上げて1523ドルまで上昇したものの、その後上げ幅を失って1497ドルで終えていました。

これは、まずトランプ米大統領が昨夜、2500億ドル分の中国製品への関税率の引き上げを2週間延期すると発表し、中国政府も本日米国産農産物の輸入手続きを再開したと表明したことで、米中対立が和らぐとの観測が強まったことでドルが弱含んだことがロンドン午前中金をサポートしていました。

その後、ロンドン昼過ぎにECBは11月から月200億ユーロのペースで国債などを買い入れ、銀行が中央銀行に余剰資金を預ける際の金利を現在の‐0.4%から‐0.5%に引き下げることを発表したことで、金相場は全般上昇し、特にユーロが大きく下げたことからも、ユーロ建て金相場がトロイオンスあたり30ユーロほど急上昇していました。

しかしその後ブルームバーグが米中協議を巡り、トランプ大統領の側近が追加関税の先送りや撤回を視野に入れた合意案の提示を検討したと報じたことで、株価や長期金利が全般上昇したこともあり、金は同日の上げ幅をほぼ失うこととなりました。

本日金相場は、株式市場が3週連続の上昇を記録する方向の中で、週間としては下げを記録する方向で、ロンドン時間午後5時過ぎにトロイオンスあたり1491ドルへと下落しています。

この株価上昇の背景は本日発表された小売売上高が予想を上回り6週間連続の上昇であったこと、前日夜にトランプ政権が米中間の暫定合意の可能性に言及したこと、そして中国が対米報復関税の対象から大豆や豚肉を除外すると本日発表したことを市場が好感していることが要因のようです。そして、この株価の上昇が金を押し下げている模様です。

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに9.4トン減少し880トンと、週間としては6週ぶりに減少となる傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週1.86%減少しており、週間の下げとなる傾向となっていること。

  • 金銀比価は今週は月曜日と火曜日に83まで上げていたものの、その後本日までほぼ82台で推移していること。

  • 先週末に発表されたコメックスデータによると、貴金属先物・オプションの資金運用業者の強気ポジションは、先週火曜日に米国ISM製造業景況感指数が予想より悪化していたことで全ての貴金属で増加していたこと。

  • コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは0.99%増の904トンと、史上最高の高さを先週に続き更新し、また建玉は先週火曜日も100万枚を再び越え、再び史上最高値をつけていたこと。

  • コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に9.2%増の9,870トンとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、7週連続でネットロングで、169%増で35トンとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは10.4%増の37トンとなっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はECBの金融政策発表後に予想を超えるハト派的政策で市場は動いたものの、米中貿易協議関連ニュースでその動きを消すこととなりました。

来週は水曜日のFOMCの金融政策発表に市場は注目しますが、同時に米中貿易協議関連ニュースも注意が必要となります。

その他指標としては、月曜日の中国の小売売上高、鉱工業生産、米国ニューヨーク連銀製造業景気指数、火曜日のドイツのZEW景況感調査、英国とユーロ圏の消費者物価指数、米国住宅着工件数、木曜日の日本と英国の金融政策発表、米国のフィラデルフィア連銀製造業景気指数、中古住宅販売件数、金曜日のユーロ圏消費者信頼感指数などとなります。

ブリオンボールトニュース

今週も弊社が主要メディアで取り上げられています。  

ロイター「ブレグジットによるポンド安がポンド建て金相場を押し上げる

弊社リサーチ取締役が先月高騰した金相場の背景についてインタビューを受けています。

ここで、金相場がユーロ建てとポンド建てで史上最高値を付けていることに触れ、これは、何らかの危機を示唆しているとしたうえで、その背景には国債金利の下げがあると解説しています。

そして、8月に新規顧客が2016年11月のトランプ氏が大統領に選出されて以来の高さとなったとし、既存の顧客による利益確定はある中で、新たな金の需要が高まるというセンチメントの変化について言及しています。

そして、金と銀価格の先行きについて問われ、英国の顧客にとってはブレグジットが為替レートを動かすことからも、合意なき離脱等はポンド建て金相場を上昇させる等と影響を与えるだろうとしています。

ファイナンシャルタイムズの投資セクションの「安全資産投資として金を保有する4つの方法」この記事では、弊社が金現物投資サービスを提供する会社として取り上げられています。

ここでは、今週Citigroupのアナリストが2年以来に金相場がトロイオンス当たり2000ドルへ達することを予想したことを紹介した上で、今週英国造幣局が金のETF商品を開発することを発表したも取り上げ、金の4つの投資方法を解説しています。

それは、金ETF、金現物投資、金関連株、金のファンドの4つの方法で、金現物投資ではBullionVault.comではオンラインで投資ができると紹介しています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週も英国メディアは英国のEU離脱をめぐる議会と政府の攻防、そして議会休会後はスコットランド裁判所がジョンソン政権が議会を休会したことを違法と判断したことからも、その議論などが広く伝えられています。

しかしながら、今週は昨日9月12日が世界の金の指標とみられているLBMA価格誕生100年であったことから、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)が会員を招いて祝賀パーティーを行い、私も参加してきましたので、その模様をお伝えしましょう。

このパーティは、100年前にこの価格の当時は値決め(Fixing)と呼ばれるオークションが行われたロンドン金融街の中心にあるロスチャイルド&カンパニー本社の屋上のSky Pavilionで行われました。

この会場には、ロスチャイルド家で保管されている値決め価格に関連する写真や資料が、この日のために飾られていて、それを参加者は閲覧することができました。

それは、当時の値付け価格を記録するノートブックであったり、値付け価格が始まる前の1919年9月9日にこの価格に関してイングランド銀行へ出された手紙の原本、価格のオークション時に注文のバランスがつくまでは机の上で立てておき、注文のバランスがついて価格が決まる際に倒されていた小型の英国国旗などでした。

そして、LBMA価格の歴史を研究しているコロンビア大学のRachel Harvey教授がこの価格について簡単に歴史やエピソードを話してくださったので、いくつかご紹介しましょう。


  • 1919年9月12日午前11時に付けられた最初の価格はトロイオンスあたり98シリング80ペンス(GBP4.9375)。

  • 戦争中は為替管理が行われたことから、1939年から1954年まで行われなかった。

  • 2004年にロスチャイルドが値付けのオークションへの参加を辞めたことで、バークレイズ銀行がその役割を担い、ロスチャイルドで長年続けられていたオークションの場所は、一年毎に参加企業の持ち回りとなった。

  • 価格がの売買注文のバランスがつくまでに最も長くかかったのは2時間45分で19回価格が提案された。

また昨日は、LBMA価格のPM価格がつけられる際にパーティーは行われていましたので、この価格を運営しているICE Benchmark Administrationの社長のThimothy Bowler氏がそのメカニズムを実際のコンピューター画面を映し出して、解説をしてくださいました。

100年の時を経て、いまだ英国ロンドンからで世界指標として発信されているLBMA価格を祝う貴重な機会に参加できたことは光栄なことであり、忘れ難い経験となりました。

昨日の写真をいくつか下記に添付させていただきます。

(左からスカイパビリオンからのロンドン金融街の風景、スカイパビリオン内、ロスチャイルドの保管する資料で使われていた電話や英国国旗、当時値付け価格を記載したノートブック)

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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