ニュースレター(2019年8月30日)米中貿易戦争激化懸念でポンド建てとユーロ建てで史上最高値を更新したものの、米中態度軟化でその上げ幅を戻す
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1528.14ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.4%上げています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり18.39ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から7.9%の上昇となっています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では937.67ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から10%上昇しています。
今週金相場は、米中貿易戦争関連ニュースを主に、それに加えて主要国国債利回りやイタリアと英国の政局への懸念等で動きましたが、8月の月間ベースでは7%高でトロイオンスあたり100ドル上昇で終えることとなりそうです。また、銀相場とプラチナ相場が、それを上回るそれぞれ月間11.4%、7.4%高となっています。それでは、一日毎の動きを追ってみましょう。
週明け月曜日金相場は、ロンドンが祝日で休場の中、すでに先月史上最高値を付けていたポンド建てがその値を更新すると共に、ユーロ建てでも史上最高値を付けていました。また、ドル建てでも6年半ぶりの高値の、心理的節目の1550ドルを超えて1554ドルを付けていました。
これは、前週中国がトランプ政権の追加関税「第4弾」の報復措置を発表したことに対し、トランプ大統領態度を強化させていたことが背景にありました。しかし、その上げ幅の大きさからも利益確定の売りなどもあり、また、トランプ大統領が「中国側が交渉を再開したがっている」と述べたこともあり懸念が後退したことで値を削って終えていました。
火曜日金相場はトロイオンスあたり1540ドルへと上昇することとなりました。
同日の上昇は、中国外務省報道官が「米国に電話をしていない」と述べる等、トランプ大統領の言い分と異なる内容であったことや、市場のボラティリティーの高さが嫌気される中で、同日発表のドイツの第2四半期のGDPが-1%と経済が縮小していたことや、イタリアの連立政権成立が困難な見通しであったことなどもサポートとなっていました。
水曜日金相場は、ドルが強含む中で株価は全般下げていましたが、トロイオンスあたり1538ドルへと下げて終えていました。
この背景は米中貿易戦争の解決糸口が見られないことで世界経済の減速懸念が広がり、国債が買われ利回りが下げ、長短国債の金利が逆転する景気後退のサインの逆イールドが進んだことを市場が警戒して株価を下げていましたが、金相場を押し下げていたのはドル高となりました。
同日は、英国の合意無き離脱の懸念が、同日朝にジョンソン政権が議会を10月半ばまで停止することをエリザベス女王へ要請することが伝えられて広がっていましたが、ロンドン時間午後にエリザベス女王が承認したことが伝えられ、午前中の急落から多少戻していたポンドが再び下げていたことも相対的にドルを強めていたようです。
木曜日金相場は、ドルが強含み、株価が全般上昇する中でトロイオンスあたり1521ドルと今週の上げ幅を失って更に下げた後に1528ドルで終えていました。
この背景は、中国商務省の報道官が同日「中国は貿易戦争のエスカレートに断固反対する。冷静な態度で協議と協力をし問題を解決したい」と述べたたことが伝えられ、追加の報復措置で米中対立が一段と激化するとの警戒感が和らいだことからでした。
また、同日発表の米国経済指標で第2四半期のGDPは2.0%と全四半期2.1%から下げたものの、GDPの7割を占める個人消費は4.7%増と速報値を0.4ポイント引き上げたことも、ドルを強め株価を上昇させていました。
本日金曜日金相場は、中国の外務省担当者が「米中の交渉団は効果的な意思疎通を続けている」と述べたことで、市場心理が改善し株価が上昇し、主要国債利回りも多少上昇する中で、トロイオンスあたり1528ドルと前日の終値とほぼ同水準で推移しています。
その他の市場のニュ―ス
-
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに20.5トン増加し880トンと、一昨日から2.1トン減少してはいるものの、2016年11月末以来の高さとなっていること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、月曜日から水曜日まで動きは無かったものの昨日0.7%増加し、再び史上最高値を記録していること。 -
金銀比価は今週水曜日に83台へと下げ、本日お昼には83も割って、記録的な銀割安傾向に変化が見えていいること。 -
先週末に発表されたコメックスデータによると、貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週火曜日に米中貿易戦争激化やドイツ国債利回りの下げからの広がっていた前日の懸念が多少落ち着く中で、プラチナを除きすべての貴金属で強気ポジションが増加していたこと。 -
コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは2.56%増の887トンと、史上2番目の高さで、また建玉は先週火曜日も100万枚を再び越え、再び史上最高値をつけていたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に27%増の7,460トンとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、5週連続でネットロングではあったものの、50%減で5.4トンとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは3.5%減の32.3トンとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週もまた米中貿易協議関連ニュースで市場が動くこととなりました。そこで、水曜日の米国貿易収支やこの関連ニュースは来週も注目されます。
また来週は、米国非農業部門雇用者数が金曜日に発表され、この先行指標と見られている木曜日のADP全国雇用者数、そして水曜日の米地区連銀経済報告が今後のFRBの金融政策を予想する上でも重要指標となります。
その他としては、月曜日の中国Caxin中国製造業PMI,ドイツとユーロ圏と英国の製造業PMI、火曜日の米国製造業PMIとISM製造業景況指数、水曜日の中国、ユーロ圏、英国のMarkitサービス業PMI、ユーロ圏小売売上高、木曜日の米国サービス業PMIとISM非製造業景況指数、金曜日のドイツ鉱工業生産と小売売上高等となります。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
-
主要経済指標(2019年8月26日~30日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2019年9月2日~6日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2019年8月27日)ドル建て金価格が1530ドルを試す間、ユーロ建て金価格は史上最高値へ
ロンドン便り
今週英国では、ボリス・ジョンソン政権が議会を1か月間閉会する案をエリザベス女王に提出し承認されたことで、議会が10月31日に迫る英国のEU離脱デットラインまでにEUとの合意無き離脱を防ぐことがより困難となり、残留派の人々の反発や、離脱派であってもこの強硬手段を取ったことへの反発、そして歴史的にも稀な閉会に対する解説などがニュースで取り上げられているので、少し詳しくご紹介しましょう。
この背景は英国議会では与党保守党内にも、経済や市民生活に過大な悪影響を与えると考えられている合意無き離脱に反対する議員は多く、離脱となる10月31日までに議会で審議時間が十分にあると、すでに野党労働党党首が他の残留派の野党と協議していた、合意無き離脱を防ぐ手段として離脱延期をEUに要請することを強制する法案が可決する可能性があったからでした。
議会は来週3日に夏休みを終えて再開されますが、その後まもなく9月10日から10月14日まで長期間閉会します。閉会は休会とは異なるために、閉会前に審議されている法案は閉会で期限切れとなり、14日に再び新たな法案として審議をしなければならないために日数的に残留派が求める離脱延期をEU要請することをジョンソン政権に強制する法案を可決することはほぼ不可能とのこと。
既に選挙区が残留を望んだスコットランドの保守党代表が昨日個人的な理由とはしていますが辞任をしており、議会内の反発は野党のみに限らず与党内も強いものがあります。
そこで、本日75名の議員がこの閉会を阻止すべく裁判所に求めていたケースは、裁判官が閉会は違法ではないために、阻止はできないという判断を下していました。
保守党党首選でも10月31日にEUとの合意が無くても離脱することを公約していたジョンソン氏は、かつてない異例な手段である長期の閉会を行い、その実行へ向けて一歩大きく踏み出したようです。
今週英国では、ボリス・ジョンソン政権が議会を1か月間閉会する案をエリザベス女王に提出し承認されたことで、議会が10月31日に迫る英国のEU離脱デットラインまでにEUとの合意無き離脱を防ぐことがより困難となり、残留派の人々の反発や、離脱派であってもこの強硬手段を取ったことへの反発、そして歴史的にも稀な閉会に対する解説などがニュースで取り上げられているので、少し詳しくご紹介しましょう。
この背景は英国議会では与党保守党内にも、経済や市民生活に過大な悪影響を与えると考えられている合意無き離脱に反対する議員は多く、離脱となる10月31日までに議会で審議時間が十分にあると、すでに野党労働党党首が他の残留派の野党と協議していた、合意無き離脱を防ぐ手段として離脱延期をEUに要請することを強制する法案が可決する可能性があったからでした。
議会は来週3日に夏休みを終えて再開されますが、その後まもなく9月10日から10月14日まで長期間閉会します。閉会は休会とは異なるために、閉会前に審議されている法案は閉会で期限切れとなり、14日に再び新たな法案として審議をしなければならないために日数的に残留派が求める離脱延期をEU要請することをジョンソン政権に強制する法案を可決することはほぼ不可能とのこと。
既に選挙区が残留を望んだスコットランドの保守党代表が昨日個人的な理由とはしていますが辞任をしており、議会内の反発は野党のみに限らず与党内も強いものがあります。
そこで、本日75名の議員がこの閉会を阻止すべく裁判所に求めていたケースは、裁判官が閉会は違法ではないために、阻止はできないという判断を下していました。
保守党党首選でも10月31日にEUとの合意が無くても離脱することを公約していたジョンソン氏は、かつてない異例な手段である長期の閉会を行い、その実行へ向けて一歩大きく踏み出したようです。