金市場ニュース

ニュースレター(2019年8月2日)トランプ大統領の中国への追加関税で金は2週間ぶりの高さへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1440.83ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.4%上げ、2週間ぶりの高さとなっています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり16.19ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から1.5%下げとなっています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では846.77ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2%下げています。

今週は米中貿易協議、米中央銀行の金融政策発表、米雇用統計とイベントの多い一週間でしたが、結果的には水曜日のパウエルFRB議長の記者会見と昨日のトランプ大統領の中国への追加関税のニュースで市場が大きく動くこととなりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

月曜日金相場はドル建てはドルインデックスが2か月ぶりの高さへ上昇する中で、多くのイベントを前にして同日はトロイオンスあたり1424ドル前後の狭いレンジで動くこととなりました。

この間ポンド建ては、合意無きEU離脱の懸念からもポンドが2年ぶりの低値を更新する中、週末から1.8%上げトロイオンスあたり1165ポンドと大きく上昇し、8年来の高さで終えていました。

また、ユーロ建て金相場は、先週のECBの近い将来の利上げコメントからもユーロも2年ぶりの低さへ下げ、ドイツ国債が3週間ぶりの低さへ下げる中で、0.2%上げのトロイオンスあたり1278ユーロで終えていました。

火曜日金相場はドルが高止まりする中で、トロイオンスあたり1428ドルまで緩やかに上昇していました。

これは、翌日のFOMCの発表を前に25ベーシスポイントの利下げはほぼ確実と見られており、トランプ大統領が上海で貿易協議が行われている中で中国を非難したことで、株価が全般下げていたこともあり安全資産の需要が出ていたことからでした。

水曜日金相場はFOMC後の発表で、25ベーシスポイントの利下げが予想通り行われたことから、噂で買ってニュースで売るの典型で、トロイオンスあたり1418ドルへと10ドルほど下げた後に、パウエルFRB議長のインタビューで、今後の利下げについて「中盤の政策調整」と述べたことで今後の継続的な利下げ観測が一気に後退し、ドルが2年ぶりの高さへ上げる中で、トロイオンスあたり1412ドルへと下げて終えていました。

なお、「米国債などの保有資産を縮小する『量的引き締め』も、予定を2カ月早めて7月31日で終了することにした。」と25ベーシスポイントの利下げと共に声明で発表されていました。

木曜日金相場は、前夜のパウエル議長の発言で大きく下げた基調を受け継ぎ、ロンドン昼過ぎにトロイオンスあたり1400ドルまで一時下げていました。

この間ドルインデックスは、前日2019年一番の上げで27か月ぶりの高さを一時付けた後の終値からは0.2%増の8週間ぶりの高さへと上昇していました。

なお、同日日行われたイングランド銀行の金融政策会合では金利は0.75%で据え置かれましたが、2020年の経済成長率は、前回の1.6%から1.3%へ引き下げられ、合意の無いEU離脱が経済に及ぼす悪影響、そしてそのような場合はポンドがさらに下げると再び警告していましたことからも、ポンド建て金相場は、ポンドが30か月ぶりの低さへ下げていたことからも、トロイオンスあたり1160ポンドと下げ幅は0.2%と限定されていました。

そして、ロンドン時間午後に発表された新規失業保険申請件数とISM製造業景況指数が予想から悪化していたことから、金相場はほぼ全ての主要通貨で上昇していたところで、ロンドン時間夕方にトランプ大統領が米中貿易協議が遅々として進まないことから、中国の製品3000億ドル相当へ追加の10%の関税を9月1日から課すことをツィートし、株価が下げる中で再び金相場がトロイオンスあたり1447ドルと2週間ぶりの高さまで上昇することとなりました。

この間日本円も安全資産として買われたことで、円建て金相場はの上げ幅は限定的なものとなりました。

金曜日市場注目の米雇用統計は非農業部門雇用者数が164,000人と予想と一致し、前回数値は224,000人から193,000人へと下方修正されていました。また、失業率は3.7%で予想と前回と変化なく、平均時給は前月比0.3%と予想の0.2%を上回り、前回数値も0.2%から0.3%へと上方修正される全般的に良好な数値となりました。

この発表後金相場はトロイオンスあたり1440ドルまで下げましたが、米中貿易戦争の激化懸念から世界株価が全般下げている中でその下げ幅を取り戻し、ロンドン時間午後5時に1445ドルまで上昇しています。

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに9.6トン増加し、827トンと昨年6月20日以来の高さとなっていること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、先週史上最高値を記録した後に今週は0.13%減少したこと。

  • 金銀比価は今週水曜日まで86台と3か月半ぶりの低い水準であったものの、昨日米中貿易戦争激化懸念再燃で再び銀が売られ金が安全資産で買われたことで87を超えたこと。

  • 木曜日ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によって発表された最新レポートによると、中央銀行の金需要が今年前半期に記録的な高さで374トン、そして全体の需要は2187トンと過去3年間で最大となっていたこと。

  • またWGCのレポートによると、中銀の需要の高まりと、金ETFへの資金の流入からも、今年上半期の金需要が8%増で2016年以来の高い水準となったこと。

  • 先週末に発表されたコメックスデータによると、貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週火曜日に米中貿易協議が上海で今週行われるなど良いニュースが伝えられたことから、ドルが上昇し金相場が下げていた際に、金以外のすべての貴金属で強気ポジションが増加していたこと。

  • コメックスの金先物・オプションの資金運用業者の建玉は、先週火曜日も5週連続で100万枚を超え史上最高値を付けていたこと。

  • コメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週1.08%と少ないながら減少して676トンとなっていたこと。

  • コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に6週連続でネットロングで、92.8%増の8423トンと、2017年11月18日以来の高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、8週間ぶりにネットロングで、1.4トンと10週ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは0.43%増の43.8トンとなっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

昨夜はトランプ大統領による中国への追加関税で市場が大きく動きました。本日も米国のロシアへの追加経済制裁、そして米国と旧ソ連が1987年に締結した中距離核戦力(INF)廃棄条約が本日失効することが伝えられていることからも、地政学リスク関連ニュースへ注目が行くこととなります。

その他主要経済指標は、今週のFOMC後のパウエル議長のの記者会見で利下げは一時的な調整と答えたことで、今後の利下げ観測が後退しましたが、米国指標次第ではその観測が高まることもあり、米国関連指標が注目されることとなります。

そこで、月曜日の中国、ユーロ圏、米国サービス業PMIと米国ISM非製造業景況指数、火曜日の米国JOLT労働調査、セントルイス連銀ブラート総裁講演、水曜日ドイツ鉱工業生産、木曜日中国貿易収支と輸出入高、金曜日中国消費者物価指数、米国生産者物価指数等となります。

ブリオンボールトニュース   

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

先週は与党保守等の党首選で勝利したボリスジョンソン氏の首相就任の関連の裏話などをお伝えしましたが、実は時期を同じくして、英国野党の自由民主党党首選も行われ、この党としては初めて女性、しかも最年少で39歳のジョー・スウィンソン党首が就任していました。

また本日は、英国で行われた補欠選挙の結果が発表され自由民主党議員が保守党現役議員を打ち破ったことからも、スウィンソン党首が多くのメディアで勝利宣言をしていましたので、この補欠選挙とスウィンソン党首についてご紹介しましょう。

自由民主党は第一次キャメロン政権で保守党と連立を組んだものの、そこで自由民主党が当初反対していた大学の授業料値上げ等の政策をキャメロン政権が実施することを許したことからも、2015年の総選挙では大きく議席を減らし少数党となっていました。

スウィンソン党首自身もこの総選挙で議席を失ったものの、2017年のメイ前首相が行った総選挙ではEU離脱反対を自由民主党が掲げていたことからも議席を取り戻したのでした。

そこで、今回の補欠選挙でも保守党議員が他の離脱を支持する党へ票を取られる中で、残留派として唯一候補者を立てた自由民主党が議席を勝ち取ったのでした。

スウィンソン党首は17歳で自由民主党の党員となり、21歳で国会議員へ立候補したものの当時のジョン・プレスコット副首相と同じ選挙区であったことからも落選しましたが、25歳で当選し1980年代に生まれた最初の議員となったのでした。

そして、2018年に第2子を儲けた際は、議会に抱き紐で乳幼児を連れてきた最初の議員ともなっていました。

英国でもビジネス関連の大学としてはトップクラスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで科学を学び、最優秀の学位で卒業した才媛でもあるスウィンソン党首が、野党一党の労働党がジェレミー・コービン党首の下で混迷を続ける中、いまだ少数党ではあるもの自由民主党を率いて、新風をもたらすことになるのかを興味深く見ていきたいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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