ニュースレター(2019年7月12日)パウエルFRB議長の議会証言で利下げ観測の広がりから金は再び1400ドルを超え上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1407.84ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.4%上げています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.12ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.6%下げています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では823.79ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.1%下げています。
今週金相場はパウエルFRB議長の議会証言と前月FOMC議事録がハト派的内容であったことから上昇し、予想以上に強い米国消費者物価指数でもトロイオンスあたり1400ドルを維持することとなりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。
月曜日金相場は、先週金曜日に好調な米雇用統計から1%下げた水準から一転上げ基調となり、ロンドン時間昼過ぎにトロイオンスあたり1407ドルまで一時上昇していました。
この間2週間ぶりの高さへ上昇していたドルインデックスは多少ながら下げ、先週金曜日にやはり急上昇していた米国10年債の利回りは再び2.03%へと下げていました。
この背景は、イランが2015年の核合意の上限を超えてウラン濃縮度が高めていることに対し、トランプ大統領が警告をする等イランと米国の緊張が高まっていたことからでした。
また、同日は中国の金準備が6月に10.3トン増加し7か月連続となっていたこと、また、金曜日にはポーランドの金準備も2019年に100トン増加していることも明らかになっていたことも金へのセンチメントをプラスとしたことも追加要因となりました。
火曜日金相場はドルインデックスが3週間ぶりの高さへと上昇する中で、トロイオンスあたり1386ドルまで一時下げたものの、その後1395ドルで終えていました。
これは市場が翌日のパウエルFRB議長の議会証言で、先週の雇用統計が好調であったことからも、よりタカ派的なコメントが出るのではないかという観測が広がったことからでした。
また同日発表された英小売売上高が減少したことを受けて、英国景気の低迷が示され、EUからの合意なき離脱に対する懸念が高まっていることがポンドが対ドルで6ヶ月ぶりの安さとなっていることも、相対的にドルを強めることとなりました。
水曜日金相場は、市場注目のパウエルFRB議長の議会証言後にトロイオンスあたり20ドルほど上げ、FOMC議事録発表後も上昇を続けて1422ドルで終えていました。
これは、パウエル議長が同日の下院委員会で「より緩和的な金融政策の必要性が高まっている」と述べたことで、今月末のFOMCでの利下げ観測が広がったことからでした。
このために、ドルインデックスは0.3%下げ、米長期金利は再び2.04%まで下げていました。
またその後発表されたFOMC議事録でも、近い将来の利下げを示唆するものであったことから、金をさらに押し上げることとなりました。
木曜日金相場はトロイオンスあたり1426ドルをロンドン早朝に付けた後に1404ドルで終えていました。
ロンドン早朝の上昇は、前日の上昇基調を受け継いだものですが、その後の下げは同日発表の米新規失業保険申請件数と米消費者物価指数(コア)が多少ながら予想より改善していたことと、価格の調整も入ったことが要因となりました。
なお、パウエルFRB議長の上院での議会証言も「2%の物価上昇率を大きく下回りたくない。後手に回らないようにするのが、日本から得た教訓だ」と述べるなど、利下げを示唆するものとなりました。
これを受けて、米国株価が上昇し、S&P500種株価指数は史上最高値を付け、ダウ工業株30種平均も一時27,000ドルを超え、終値ベースでも史上最高値を記録していたことからも、金の頭を押さえることとなった模様です。
本日金相場は、ドルインデックスが一週間ぶりの低さへと下げ、米長期金利がひと月ぶりの高さの2.14%へと上げる中で、昨日の終値から若干上げトロイオンスあたり1409ドル前後を推移しています。
その他の市場のニュ―ス
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金のマーケティング団体のワールド・ゴールド・カウンシルの最新のレポートで、今年前半期では、金が最も高い収益率を上げた資産の一つであったことが明らかになったこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週のパウエルFRB議長の議会証言までは2.9トン減少していたものの、水曜日に3.6トン増加し800トンと、木曜日まででは週間で4.4トンの増加と週間での上げを更新する方向で推移していること。 -
金銀比価は今週も木曜日まで92を超える新たな26年半来の高い水準(銀が割安)で、木曜日には93.23と1992年10月9日以来の高さとなっていたこと。 -
トランプ大統領は木曜日ツィッターで中国が約束したように米国の農産物を購入していないことを不満だと述べていたこと。 -
イランが金曜日に英海兵隊が先週、EUの制裁に違反してシリアに原油を輸送していた疑いがあるとして英領ジブラルタル沖で拿捕したイランの大型石油タンカーを、即時解放するよう英国に要請したこと。 -
ドイツ銀行が月曜日18000人という大規模な人員削減を発表したこと。 -
週末行われた総選挙でギリシャの最大野党で中道右派が、反EUの与党に圧勝したことで、ギリシャ国債利回りが記録的な低さへ下げていること。 -
ダロック駐米英国大使がトランプ政権は「機能不全」等と述べていたメールが漏洩したことに関して英国政府は月曜日正式な調査が開始されることを伝えていたこと。その後駐米英国大使は木曜日に辞任したこと。 -
金消費国として世界第5位のトルコのエルドアン大統領が金融政策を巡り対立していた中央銀行の総裁を週末更迭したことで、通貨リラが月曜日大幅に下げていたこと。 -
今週はコメックスデータは先週米国が独立記念日で週末ではなく月曜日に発表されていましたが、貴金属先物オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、銀を除いて先週火曜日に強気ポジションを増加させていたこと。 -
コメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、10週続けてネットロングで、6週連続で増加して750トンと5%増加させていたこと。なお、この建玉は2週連続で100万を超えて、2011年8月23日以来の高さとなっていたこと。 -
コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、3週連続でネットロングだったものの、そのポジションは7.3%下げて3384トンとなっていたこと。 -
コメックスプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、6週連続でネットショートであったものの、34%減の24トンであったこと。 -
コメックスパラジウム先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、7週連続で増加し、10.5%増の39トンと3月19日以来の高さとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週のパウエルFRB議長の議会証言で利下げ期待が高まっていることからも、来週も引き続き米国指標へ注目すると共に、米中貿易協議関連ニュースと共に中国の指標も注目されることとなります。
そこで、月曜日の中国小売売上高、鉱工業生産、第2四半期GDPと米国ニューヨーク製造業景気指数、火曜日の米小売売上高と鉱工業生産、水曜日の英国とユーロ圏の消費者物価指数、米国住宅着工件数と米地区連銀経済報告、木曜日のフィラデルフィア連銀製造業景気指数と金曜日のロイターミシガン大消費者信頼感指数等となります。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2019年7月8日~12日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2019年7月15日~19日)来週の予定をまとめています。
ロンドン便り
今週も英国はウィンブルドンテニストーナメントが日々トップニュースで伝えられていますが、英国でサッカーやラグビーと共に人気のスポーツのクリケットのワールドカップも英国で行われ、イングランドチームが決勝に進んだことから、大きく盛り上がっています。
そこで、日本ではあまり知られていないクリケットについて簡単にご紹介しましょう。
クリケットは16世紀初頭のイングランドチューダー朝時代までさかのぼることができるとのこと。1チーム11人で2チームで行うスポーツで、野球と似て投手が投げたボールを打者が打って、打ったボールがフィールドを転がる間に打者が走って点を重ねる点は同じであること。ただ、バットの形が異なることを含めて、投手の投げ方や打者がどの方向にも打てること等とルールにはかなりの違いがあります。
世界では元大英帝国、現在の英連邦諸国を中心に競技人口は3億人を超え、サッカーを上回っているとのことです。
クリケットワールドカップは1975年に第一回が開催され、前回は14チームが参加してオーストラリアが優勝していました。
今回イギリスチームはこのオーストラリアチームを昨日破って27年ぶりに決勝へ進んだことから、一挙にウィンブルドンに奪われていたスポットライトが再びクリケットに戻ったようです。
イングランドチームはこれまでワールドカップで準優勝は3度経験しているものの、未だ優勝したことが無いとのこと。決勝は今週日曜日でやはりウィンブルドンの男子決勝と同じ日となりますが、ニュージーランドとの試合では悲願の優勝を今年こそ成し遂げてくれることを祈りたいと思います。