金市場ニュース

ニュースレター(2019年6月21日)主要中央銀行が金融緩和へ向かう中で、中東における地政学リスクの高まりで6年ぶりの高さの1400ドルを超える

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1398.10ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.5% 上昇しています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.29ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から1.8%上げています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では802.25ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.5%上げています。

今週は、まずドラギ欧州中央銀行総裁が金融緩和の準備があることを討論会で明言し、その後FOMC、日本銀行、イングランド銀行の金融政策発表でも、それぞれ政策は据え置かれたものの金融緩和への準備が示唆されたこと、そしてイランと米国の関係緊張からも、金相場は2013年8月以来の高さの1400ドルを一時超える水準まで大きく上昇することとなりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

月曜日金相場は、先週の14か月ぶりの高さからトロイオンスあたり25ドルほど下げていたものの、ロンドン時間午後に発表されたNY連銀製造業景気指数が記録的な低さとなったことから、その下げをほぼ取り戻し終えていました。

同日発表されたNY連銀製造業景気指数は、-8.6と前月の17.8を大きく下回り、マイナス数値は2016年のトランプ大統領が選出される前に記録して以来初めてのことでした。

なお、注目の米中首脳会談に関しては、週末米商務長官のウィルバー・ロス氏が「月末の大阪でのG20で米中首脳会談が行われたとしても、これから話し合いを続けるという以上の大きな進展は期待できない。」というコメントが伝えられていました。

また、悪化する米国とイランとの関係については、週末ポンぺオ国務長官は、先週木曜日のホルムズ海峡のタンカーへの攻撃のイランの関与を断定したものの、「トランプ大統領は戦争を避けるためにあらゆる努力をしている」ともコメントしていました。

火曜日金相場は、長期金利が大きく下げる中で、トロイオンスあたり1354ドルと先週金曜日の直近の高値1358ドルには劣るものの前日終値から10ドルを超えて一時上昇していました。

これは、同日欧州中銀のドラギ総裁が、経済・物価情勢が改善しなければ「追加の刺激策が必要になる」と述べた後に、同日発表されたユーロ圏消費者物価指数が低迷し、ドイツとユーロ圏のZEW景況感調査が大きくマイナス数値へと下げたことで欧州中銀の金融緩和観測を広げ、ユーロ圏の株価が上昇し、欧州国債の利回りが全般下げ、米長期国債も2週間ぶりの下げを見せていたことからでした。

また、同日米国が中東に1000人の米兵を追加派遣することを明らかとしたことで地政学リスクの広がりへの懸念もあり、さらに同日2回目の英国与党保守党党首の選挙も、離脱強硬派のボリス・ジョンソン氏の優勢が伝えられていることからも、合意無き離脱の懸念も広がり、金をサポートしていた模様です。

しかし、トランプ大統領がロンドン時間午後に、中国の習近平国家主席と電話で協議し、6月下旬に大阪で開催されるG20で更なる協議を行い、両国代表団は事前交渉も行うとツィートしたことで、金相場が同日の上げ幅をほぼ失う下げを見せることとなりました。

水曜日金相場は、同日ロンドン時間午後7時に発表されるFOMCの結果とその後行われるパウエルFRB議長の記者会見を待つ中で、トロイオンスあたり1345ドル前後5ドルほどの狭いレンジで動いていました。

そしてFOMC後の発表では、予想通り金利据え置きを決定しましたが、発表後の声明文には「先行きの不確実性が増しており、成長持続へ適切な行動をとる」と明記され、参加者17人のうち半数近い8人が2019年中の利下げを予測し、景気減速リスクが強まれば年内にも金融緩和に転じる可能性を示唆したことから、ドルが弱含み金はトロイオンスあたり1360ドルを超えて上昇し、14ヶ月ぶりの高さを付けることとなりました。

木曜日金相場は、米国株式S&P500種が史上最高値を付ける中で、トロイオンスあたり1393ドルとほぼ6年ぶりの高さへと上昇していました。

これは、前夜FOMCの結果を受けて、金利引き下げ観測が広がり、ドルインデックスは12週ぶりの低さへ下げ、米長期金利は一時2%を割り、主要国債利回りも全般下げていたことからでした。

また、同日行われた日本銀行とイングランド銀行の金融政策会合では、政策金利は共に据え置かれたものの、日銀は物価安定の実現に向けた勢いが損なわれるような事態になれば「ちゅうちょなく追加緩和を検討する」と強調するなど、内容は更なる金融緩和への期待を高めるものとなりました。

そのため、金はほぼ全ての主要通貨建てで上昇し、ポンド建て価格ではポンド安もありトロイオンスあたり1091ポンドと6年半ぶりの高さで、ユーロ建て価格では、トロイオンスあたり1227ユーロとほぼ3年ぶりの高さ、そして円建てではグラムあたり4788円と4か月ぶりの高さとなっていました。

本日金曜日金相場はアジア時間にトロイオンスあたり1411ドルを付け、ほぼ6年ぶりの高さを更新していました。

なお、本日ニューヨークタイムズが早朝に、トランプ大統領が20日にイラン革命防衛隊が米国の無人偵察機を撃墜したことを受けて、イランへの攻撃を一旦承認したものの、その攻撃を撤回したことを伝えていましたが、この速報は、高値を付けた後に発表されていたので、ロンドン早朝の高値は買いが買いを呼んだ結果の模様です。

しかし、中東の地政学リスクの高まりは、原油価格を押し上げています。

そして、ロンドン時間午後にはトランプ大統領がイランへの攻撃を承認しながらも取りやめた理由をツィートしていることも、地政学リスクへの懸念を広げ、本日発表の米製造業PMIが予想と前回を下回り、かろうじて経済の縮小と拡大の境目の50を上回っていたことも金をサポートしている模様です。

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに全く変化なく、先週金曜日に達した764トンと11週間ぶりの高さを維持していること。

  • 金銀レシオは今週も木曜日まで水曜日を除き日々90を超える26年来の高い水準(銀が割安)となっていたこと。

  • 先週末に発表された貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週火曜日にS&P500種が6営業日連続で上昇していたように、株価が上昇する中で、プラチナを除いてすべて強気ポジションが増加していたこと。

  • 先週火曜日に発表されたコメックスにおける金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは14.5か月ぶりの高さとなっていたこと。これは、3週間連続の上昇で、前週比33%増の487トンとなっていたこと。

  • 銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは11週連続でネットショートであったものの、そのポジションを2週連続で減少させ、57.1%減の1329トンと、8週間ぶりの低さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは先週火曜日も3週連続のネットショートで、そのポジションも21.6%増の24トンとなっていること。

  • それに対してパラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、4週連続で増加し7.4%増の31.4トンとなっていたこと。

  • 先週日曜日に、香港では2百万人の「逃亡犯条例」改正の撤回を求める抗議デモが市内を埋め尽くしていたこと。なお、香港政府はこの改正の審議無期延期と香港警察はこの抗議デモを暴動と呼ぶことを取りやめるていましたが、金曜日には数千人の市民が警察本部を包囲しているとのこと。

  • イラン原子力庁の報道官の月曜日の発表によれば、イランが保有する低濃縮ウランは、今後10日で核合意に定められた貯蔵量の上限を突破するとのことが伝えられていたこと。

 

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週の主要イベントは、週末28日と29日に大阪で行われるG20とそれに合わせて行われる米中首脳会談となります。また、緊張が高まる米国とイランの状況も注目されることとなります。

その他、主要経済指標としては、月曜日のドイツIFO企業景況感指数、火曜日の日銀金融政策決定会合議事要旨、米国ケース・シラー住宅価格指数とリッチモンド連銀製造業指数と新築住宅販売件数と消費者信頼感指数、火曜日のドイツGFK消費者信頼感調査、米国耐久財受注、水曜日ドイツ消費者物価指数、米国第1四半期GDP、個人消費、コアPCE、金曜日の日本失業率と鉱工業生産、英国第一四半期GDP、ユーロ圏消費者物価指数、米国個人所得と個人消費支出PCEとシカゴ購買部協会景気指数とミシガン大学消費者態度指数などとなります。

その他、火曜日にパウエルFRB議長、水曜日にはカーニーイングランド銀行総裁が発言するために、内容によっては市場を動かす可能性があります。

ブリオンボールトニュース   

今週金相場が大きく動いたことで、主要メディアが弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントを取り上げることとなりました。

英国の主要経済サイトのThis is Money

この記事では、同日の市場のニュースを紹介し、ポンドが6か月ぶりの低さへ下げている中で、英株価FTSE 100は堅調であること、そしてポンド建て金相場が6年ぶりの高さへと上昇していることを取り上げて、次のエィドリアンのコメントを取り上げています。

「2019年の初夏に、世界の経済指標が経済の停滞、もしくは景気後退が近いことを示していることから、金価格は急激に上昇しています。金は先週金曜日に6年ぶりの高さでトロイオンスあたり1072ポンドを付け、それを受けてトランプ大統領が2016年に選出された際以来の高い取引量の500万ポンドを記録していました。ポンド建て金価格は、昨年夏の低値から19.1%上昇しているのです。5年前に8500ポンド投資していたのであれば、今月の金売却者の平均ネット利益は36%となります。これは、FTSE All Share指標の31%を超えるものです。」

米主要経済サイトのMarketWatch

今週金相場が昨日の段階で4%近く上昇し、5年ぶりの高さとなっていることを伝える、記事で

エィドリアンは、「新たな貿易戦争に面して、多くの中央銀行は、金利を引き下げて量的緩和を始める準備をしている。これは、通貨引き下げの競争で、金は政策立案者が価値を下げることができないただ一つの通貨だ。」と述べています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週は、英国次期首相となる与党保守党の党首の立候補者を保守党議員が2名に絞る投票が行われていたために、立候補者によるテレビ討論、投票前後の立候補者とそのサポーターへのインタビュー等が英国主要メディアでは日々伝えられていました。

結果は、離脱強硬派で元外相のボリス・ジョンソン氏と現外相の離脱派でもあるジェレミー・ハント氏となり、保守党員によって決選投票が行われ、来月22日の週に結果が発表される予定です。

そのような中、私は今週英国のJapan Societyが主催するキングスカレッジのAnand Menon教授による「欧州選挙後の英国とEUを分析」というセミナーに参加してきましたので、概要をお伝えしましょう。

ここでは、英国がEUからの離脱を選んだ背景、そしてなぜここまで離脱案を巡り政局が混迷してしまったのか、そして今後の英国とEUを予想をお話しいただきました。

まず歴史的な背景としては、他の主要EU諸国であるドイツやフランス等が、将来の戦争を回避する目的でEUの起源である欧州石炭鉄鋼共同体を設立したことからも、これらの主要EU諸国にとっては、EUが経済以上に政治的意図があったのに対し、英国は経済上の恩恵を目的に加盟したものの、単一通貨のユーロを導入していないという、EU諸国の中でも異なる立ち位置があったことをまず説明いただきました。

そして、保守党が前回の総選挙で過半数を失ったことで北アイルランドの民主統一党からの閣外協力が必要となり、アイルランド問題が避けられないものとなったこと、また保守党と労働党の中にも離脱派と残留派が混在していること、そして英国内の世論も同様に意見が分かれていることからも、どのような離脱を行うかをまとめること自体が困難であること。

そして、今後としては英国は離脱以外の道は無いであろうが、現在の保守党候補者が訴えている、10月31日までにEUから離脱案に関して妥協を得るということは、英国議会とEUサイドの日程等を考えると、実質協議可能な日数が新首相就任からひと月もないことから、不可能であるとのこと。

そして、世論調査によると国民の32%が必要であれば良しとしている「合意無き離脱」は、英国政府自体も把握していない以上の経済への悪影響があることを警告していました。

なおEUの今後としては、英国離脱後、現加盟国が離脱することは、政治的意図を持つ主要EU諸国と経済的恩恵を受けている他のEU諸国にとってあり得ないとしながらも、移民問題、経済格差等の問題は累積しているために、分裂は無いとしても、決して安易な道のりではないとしていました。

英国のEU離脱は、英国近代史の中でも戦争を除いて最大の危機とも見られているとのことですが、合意無き離脱も有りというEU離脱へと動き出そうとしている英国の行方をしっかり見届けたいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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