金市場ニュース

ニュースレター(2019年5月31日)米中貿易戦争激化に対メキシコ追加関税からも1300ドルを超えて上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1296.01ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1%上昇しています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.52ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.2%下げています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では793.96ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.8%下げています。

今週金相場は、米中貿易戦争激化傾向からドルが大きく上げたことで、頭を押さえられていましたが、昨日のトランプ大統領のメキシコへの追加関税からも上昇し、1月以来の月間の上昇を記録する方向で上昇しています。

火曜日金相場は、英米が祝日を終えて市場に戻る中で、ドルが一週間ぶりの高さへ上昇していたものの、トロイオンスあたり1285ドルと前週終値を多少上回る水準で終えていました。

ドルの上昇は、トランプ米大統領が前日「米国は(中国と取引する)準備はできていない」と発言し、対中関税に対しても「大幅に上がるだろう」と述べたことから、米中摩擦が長引くとの懸念が市場で広がり、安全資産としてドルと米長期国債が買われていたことからでした。

なお、週末発表の欧州議会選の結果では、EU懐疑派の議席獲得が限られたものの、 大連立を組む二大会派の中道勢力も過半数を割った こと、 イタリアの財政赤字をめぐり、欧州委員会が課徴金を命じる可能性があると報じられ、ユーロと欧州株が売られ、ドルを支えていました。

また、英国においても、ブレグジット党が欧州議会選で2大政党の保守党や労働党を抑えて圧勝したこと、また 先週金曜日に退陣を表明したメイ英首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選で、立候補者の顔ぶれから「合意なき離脱」のリスクが高まりポンド売りが進み、やはりドルを支えることとなりました。

水曜日金相場は、世界株価が全般大きく下げ、ドルインデックスが5カ月ぶりの高さへ上昇し、米10年物国債と3か月国債の金利が逆転する中で、トロイオンスあたり1276ドルまで一時押し下げられていました。

ドル高の背景は、中国が電気自動車やデジタル家電の部材に欠かせないレアアースの対米輸出規制を示唆していると伝わったことから、米中対立が激化するとの警戒感から、ダウ工業株30種平均が1月以来の低さへ下げたことからも、安全資産への逃避が起きていたからでした。

そのため、米国債同様ドイツ10年物国債も買われて3年ぶりの低さの-0.17%を付けていました。また、長短金利逆転は景気後退を示唆する事もリスクオフセンチメントを増幅させ、ドルと長期国債への資金の逃避が起きていました。

木曜日金相場は、ドルインデックスが前日同様に5か月ぶりの98を超える高い水準であった中で、トロイオンスあたり1290ドルへと上昇して終えていました。

前日長短金利が逆転したことで景気後退の懸念が出ていましたが、それが同日拡大しなかったことで、多少投資家心理が改善し、世界株価は前日の大きな下げから反発していました。

そのような中、中国が米国産大豆の購入を一時的に停止していることが伝えられ、また、中国の外務省高官が米国の対中政策が「経済テロリズム」と強く批判していたことから、米中貿易戦争の警戒感は和らいではいないことからも、安全資産としての金がやっと買われることとなった模様です。

本日金曜日金相場は、前日の上げ幅をさらに広げて一時トロイオンスあたり1300ドルを超え、ロンドン時間夕方に1302ドルへ達しています。

これは、昨夜トランプ大統領が、メキシコの不法移民対策が不十分だとして、6月10日から同国からの全輸入品に5%の関税を課す経済制裁をツィッターで発表したことから、また米中の貿易摩擦の激化も改め意識されたことが要因となっている模様です。

このニュースを受けて、米国長期国債が買われ、利回りが21か月ぶりの低さの2.15%まで下げ、また先に加えイタリア政治リスクからも、ドイツの10年物国債も-0.21%と史上最低の低さへと下げ、世界株式も軒並み下げています。

なお、日本円も安全資産として買われていることから、円は対ドル108円まで強含んでいます。

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに2.1トン増加し740トンと、先週に続き3週連続の週間の増加傾向を見せていること。

  • 金銀レシオは今週も昨日まで88を超える26年来の高い水準でしたが、水曜日は89.29と1993年3月末以来の高さへと上昇していたこと。

  • 先週末発表のコメックス貴金属先物・オプションの資金運用者のポジションは、トランプ政権が前日導入したファーウェイの事実上の輸出禁止を、米商務省が一部猶予期間を設けるとしたことで株式市場が上げ、金相場が3週間ぶりの低さへ下げていた先週火曜日にパラジウムを除き、弱気ポジションを増加させていたこと。

  • コメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、火曜日に4週連続でネットロングではあるものの、そのポジションは前週の増加分をほぼ失う63%減の75.82トンとなっていたこと。

  • コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日に8週連続でネットショートで、そのポジションも106.5%増の4,799トンと昨年11月27日以来の高い水準となっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、かろうじてネットロングであったものの、そのポジションは0.19トンと前週から99.11%減と大きく下げていました。これは、5週連続の下げで、昨年2月19日以来の低い水準であったこと。

  • それに対し、需給ひっ迫状況が長く継続し、他の貴金属に比べて市場規模も小さいパラジウムにおいては、その先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、2%増の25.76トンとなっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

本日は昨夜のトランプ大統領のメキシコからの全輸入品に5%の関税を課す異例の経済制裁で、市場が大きく動いていますが、来週もトランプ政権の対外貿易政策関連ニュースに市場は注目することとなります。

そのような中でも、来週の重要指標は金曜日の米雇用統計となりますが、その先行指標と見られているADP雇用統計が水曜日に発表され、同日の米地区連銀経済報告(ベージュブック)も重要となります。それに加え、木曜日のECBの政策金利発表とその後のドラギECB総裁の記者会見も注目イベントとなります。

その他、本日中国の経済指標が予想を下回る数値で懸念が広がっていることからも、来週も中国関連指標へは注目が入り、月曜日の中国製造業PMI、同日のドイツ、ユーロ圏、英国、米国のPMI、そして米ISM製造業景況指数、火曜日はユーロ圏の失業率と消費者物価指数、水曜日は中国、ドイツ、ユーロ圏、英国、米国のサービス部門PMI、ユーロ圏の卸売物価指数と小売売上高、そして米ISM非製造業景況指数、木曜日のユーロ圏の第1四半期GDP、米国貿易収支等となります。

 

ブリオンボールトニュース     

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週英国では、先週のメイ首相の辞任表明から、すでに12人が党首選出馬の表明をするなど、メイ首相後継関連ニュースが日々伝えられています。

そのような中で、次期首相として最も有望視されている、前外相でロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が、2016年のEU離脱の国民投票の選挙期間中に、虚偽の情報を拡散したとして、民間人が検察を通さずに追訴する裁判に出頭を命じられることとなったというニュースをご紹介しましょう。

ボリス・ジョンソン氏は、離脱派のキャンペーンを当時主導していましたが、このキャンペーンで一つの大きなスローガンとなっていたのが、今回虚偽の情報とされている、「英国のEU加盟分担金は週3億5000万ポンド(約480億円)に上り、離脱すれば国内の医療制度を充実できる」というものでした。

提訴したのは活動家のマーカス・ボール氏で、この裁判に向けてクラウドファンディングで20万ポンド(約2700万円)を集めたとのこと。

ジョンソン氏は、訴えの背後に「政治目的」があると反論していることが伝えられていますが、出頭命令を出したマーゴット・コールマン裁判官は「被告人が発言内容が虚偽だと知っていたとする十分な証拠が出ている」と説明しています。

ちなみに、英国の独立したチャリティー団体FullFact.orgサイトによると英国のEU加盟分担金は、週3億5000万ポンド(約480億円)であるものの、EUからの払戻金などを加味すると実質週2億5000万ポンド(約340億円)ぐらいであろうとのことです。

主要英国日刊経済紙City AMは、今回の件を「英国は政治上の意見の違いを裁判所に頼らなければならないような国ではない。」とし、「政治家が他が誤解する意見を述べることで、刑務所に送られる可能性があってはならない。」と、強く非難しています。

また、ジョンソン氏を支持する離脱派の元離脱相のデビット・デービス氏も「悪意に満ちた行為だ。」と非難し、「残留派が離脱派が勝利することで、英国の経済は破綻する。」と警告していた間違った情報に関しては、何の手続きも取られていないとも反論しています。

英国のEU離脱論議が、英国をこれ以上二分することなく、また言論の自由を制限することが無いことを心から祈るばかりです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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