ニュースレター(2019年2月1日)FOMC、米中貿易協議、米雇用統計を経て金は9か月ぶりの高さへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1321.09ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2%上げて、LBMA価格のPM価格としては今年の最高値で昨年4月27日以来の高値となっています。また銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり16.01ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から4%上げています。これもLBMA価格としては今年最高値で、昨年6月29日以来の高値となります。
今週はFOMCや米中の貿易協議に加えて本日の米雇用統計と、多くの主要イベントがありましたが、その中でも金は堅固な動きで終えることとなるようです。それでは、一日毎にその動きを追ってみましょう。
週明け月曜日金相場は、ロンドンの昼過ぎに先週金曜日の7か月ぶりの高さから多少下げて1302ドル前後の狭いレンジで推移していました。
この上げは、先週金曜日に米国ドルがウォールストリートジャーナルがFEDが金融緩和で購入した資産縮小を終了するという記事を受けて一週間ぶりの低さへ下げていたことからですが、月曜日もその水準を維持していました。
また、米国政府機関の一部閉鎖は、先週金曜日にトランプ大統領が譲歩して一時的解除されましたが、日曜日にランプ大統領は政府機関閉鎖は今後も選択肢であると警告していました。
火曜日金相場は、ドルがほぼ前日の水準を保持する中で、トロイオンスあたり1311ドルと8か月ぶりの高さへと上昇して終えていました。
なお、前日米司法省が中国のファーウェイや同社幹部を起訴した件については、同日ムニューシン米財務長官が貿易協議に影響しないという見解を示し、貿易協議については「大きな進展を期待している」と述べたことが伝えられていました。
水曜日金相場は、今週の主要イベントのFOMCの結果を待つ中トロイオンスあたり1310ドルと1315ドルの間を推移していましたが、FOMCの発表後に1323ドルまで一時上げて、1318ドルで終えていました。
これは、FOMCで予想通り全会一致で金利は据え置かれ、量的緩和で購入されていた資産縮小を近い将来に終了することも確認され、予想よりハト派的内容に市場が反応していることからでした。
なお、同日は金曜日発表の米雇用統計の先行指標とみられているADP全国雇用者数が21万3000人と予想の17万8000人を上回っていました。
木曜日金相場は、前日のFOMCの結果からもドルと米長期金利が下げる中、トロイオンスあたり1326ドルと一時9か月ぶりの高さまで上昇していました。
本日金曜日発表の市場注目の非農業部門雇用者数は、1月に304,000人と予想の165,000人を大きく上回りました。また、失業率は予想と前回の3.9%から4%へと上昇し、平均時給は前月比は0.1%と予想の0.3%と前回の0.4%から下げていました。
この発表を受けて金価格は一時トロイオンスあたり1318ドルまで下げたもののその後トロイオンスあたり1323ドルまで上げてロンドン時間夕方には1318ドルへと押し戻されています。
なお、前日に終えた米中貿易協議について、トランプ大統領は「大きな進展があった」と述べ、貿易協議の最終合意を目指して習近平国家主席と再び2月に会談する方針を示しています。
その他の市場のニュ―ス
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金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までで14.1トン増加し(月曜日に5.9トン、火曜日に8.2トン)、昨年6月26日以来の高さの823トンとなっていたこと。 -
トランプ米政権は本日金曜日に、1987年に旧ソ連(ロシア)と結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を正式表明したこと。 -
ベネズエラの金準備のうちの15トンをアラブ首長国連邦がユーロによる支払いで購入したとのこと。そして、2月までに総量で29トンを国内の必需品を購入するために同様に売却するとのこと。 -
金業界のマーケティング団体のワールドゴールドカウンシルが木曜日に、昨年度の金需給レポートを発表し、過去50年間で最も高い中央銀行からの需要で、全体の金需要が4%増となったとのこと。 -
イタリアの第4半期GDPが前期に続いてマイナス成長となり、景気後退入りしたこと。 -
月曜日格付け会社S&Pは記録的な長さである5週間の政府機関の閉鎖による損失は少なくとも600億ドルと、メキシコ国境の壁の費用の570億ドルを上回ると見積もっていたこと。 -
英国のメイ首相の代替案(バックストップと呼ばれるアイルランドの国境に関する項目に修正が入ったもの)が火曜日に英国議会で承認されたこと。しかし、この案はEUからの何らかの妥協を引き出すことが必要で、EUはその余地はないと述べていること。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は火曜日が旧正月であるために、中国は月曜日から一週間休場することとなります。
そのような中で、中央銀行の政策金利発表が多く行われますが、注目されるのはブレグジットを目前に大きな変化は予想されていませんが、木曜日のイングランド銀行の発表となります。
その他、月曜日のユーロ圏の卸売物価指数、火曜日のユーロ圏の小売売上高と米国のISM非製造業景況指数、水曜日の米貿易収支となりますが、これに加え先週発表予定でしたが政府機関の一部の閉鎖で延期されている米第4四半期GDPも日程は発表されていませんが、来週発表される予定となっています。
ブリオンボールトニュース
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今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2019年1月28日~2月1日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2019年2月4日~8日)来週の予定をまとめています。 -
ロンドン貴金属市場協会の2019年の金価格予想は狭い幅のものとなる -
金価格の2019年:3つのチャートから見えること
ロンドン便り
今週も英国はメイ首相の代替案を含む提出されていた案が英国議会で採決されたことからも、トップニュースはブレグジット関連でした。
そのような中で、今週月曜日からBBCでは「Inside Europe – Ten years of turmoil(欧州の内側から:10年間に及ぶ混乱」という3部形式の興味深いドキュメンタリーの第一回が放映されていましたので、ご紹介しましょう。
今週月曜日の番組では、キャメロン英国元首相が英国のEU離脱を問う国民投票を行うに至った背景と国民投票で敗北するまでの英国と欧州の政情を欧州と英国側の当事者達のインタビューと共に解説しています。
残念ながら、キャメロン元首相とメイ現首相へのインタビューはありませんが、この渦中にいたオズボーン元財務相、ヘイグ元外相、トゥスク欧州理事会議長、ユンケル欧州委員会委員長、サルコジ元仏大統領、オランド仏大統領等などのインタビューで当時の様子がありありと語られています。
ご存知のように英国のEU離脱の国民投票は2016年6月23日に行われましたが、第一回目はその翌日の投票結果が出る中で、キャメロン元首相が辞任を決め、欧州委員会へその結果を報告に行ったところで終わっています。
第2回はギリシャ危機、第3回は移民問題に焦点を当てて、歴史的にも最大のプロジェクトとも呼ばれる、欧州連合内の人とモノの行き来を自由にして、安全保障や司法や内務分野でも更なる統合を進めようとしている欧州連合が、このような混乱を経てどのように生き残っていくのかということを検証していくものとなりそうです。
英国はこの統合へ向かうEUから離脱することを決定し、ほぼ不可能とも見える複雑に編み込まれたようなEUとの関係を解き、新たな関係を作り出そうとしています。
第一回目の最後にトゥスク議長とユンケル委員長が、英国の離脱決定を心から惜しんでいる姿は、英国とのEU離脱協議で見せている強気の姿とは異なるものであり、英国離脱がEU統合という壮大なプロジェクトを進める彼らにとって大きな痛手であったことを感じさせるものでもありました。
次回以降もまた欧州の現代史を作っている当事者の人々から歴史に残るであろうイベントの話を聞ける貴重な機会となりそうです。