金市場ニュース

ニュースレター(2019年10月11日)米中貿易協議進展への楽観的見方が広がり金は3週ぶりに低い週の終わり値へ

本日から事務所に戻ってまいりました。そこで、遅れましたが先週のニュースレターの簡易版をお届けします。

なお、この度の台風19号により被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。また、被災された方々の生活が一日も早く元に戻れますように心よりお祈り申し上げます。

週間市場ウォッチ

先週金曜日のLBMA価格のPM金価格はトロイオンスあたり1479.15ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.3%下げていました。銀価格においても、同日のLBMA銀価格はトロイオンスあたり17.60ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)とほぼ同水準ですが、多少下げています。なお、プラチナは同日のLBMAのPM価格は888ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.7%と3週間ぶりに上昇しています。

先週は、米中貿易協議の進展への楽観的見方が広がり、金は週後半に1%下げ、3週ぶりの低い週の終値を付けていました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

週明け月曜日の金相場はドルが強含む中でトロイオンスあたり1493ドルへと一時下げていました。

同日は週後半に開かれる米中貿易協議の不透明感から、ロンドン時間午後3時頃までは金は上昇していたものの、その後両国が農産物輸入などで部分的に合意するとの期待から米国株価が買い戻される中で、金は押し下げられることとなりました。

また、この間米長期金利が上昇したことも、金にとっては向かい風となりました。

なお、午前中の上げの要因は、中国の劉鶴副首相が10~11日に予定される米中協議について「中国の産業政策や国有企業への補助金削減など構造改革は提案しない」と述べたと6日に報じられたことで、協議が難航するとの見方から広がったことからでした。

ちなみに、ドルが強含んだ背景として、同日EUがジョンソン政権の離脱案へ難色を示していることが伝えられてポンドが下げていたことも相対的にドルを押し上げる要因となりました。

火曜日金相場は、ドルの動きで上下し、トロイオンスあたり1508ドルまで上昇することとなりました。

同日ドルそして金相場及び株価を動かしたのは、米商務省が、中国が新疆ウイグル自治区でウイグル族を弾圧していることを理由に、監視カメラ大手や政府機関など計28団体・企業に事実上の禁輸措置を課すと発表したことで、先週予定されていた米国で開かれる貿易協議で、中国の交渉団が滞在期間の短縮を検討していると伝わったこともあり、協議進展は見込みにくいとの観測を誘ったことがドル高でありながら、安全資産としての金の買いも誘うこととなりました。

さらに、前日EUとの離脱協定案協議の先行き不透明感から下げていたポンドは、同日離脱案を巡り、ジョンソン英首相とドイツのメルケル首相と電話で対話したものの進展はみられなかったと伝えられたことで、3営業日連続の下げを記録し、ドル高を進める要因となりました。

水曜日金相場はトロイオンスあたり1511ドルへと前週の終値より上げた水準を推移していました。

同日は中国が米国産農産品の購入を拡大するのと引き換えに、制裁関税の一部を撤回する「部分合意」を米国に求めているとの報道をきっかけに、翌日から始まる米中貿易協議の進展期待が高まり、一部英国株式指標を除き欧米株価が上昇することとなりました。

その様な中、トルコ軍は、同日シリア北部でクルド人勢力に対する軍事作戦を開始しましたが、トランプ大統領は声明で、トルコがシリア北東部でクルド人勢力に対する軍事作戦を開始したことについて「支持しない」との立場を示したものの、トルコを明確に非難する文言を盛り込んでおらず、容認したとも取られたことで、この動きによる市場への影響も限定的となっていました。

また、同日市場注目のFOMC議事録は、いつ緩和を終了するのか議論したことが明らかとなったものの、大半がインフレが9月の利下げを正当化したこともあり、やはり市場への影響は限定的となっていました。

木曜日金相場はトロイオンスあたり1494ドルへと下げて終えていました。

これは、トランプ米大統領が前日に、「中国の副首相と明日(11日)ホワイトハウスで会う」とツイッターに投稿し、米中貿易協議での両国の歩み寄りを期待したことで、安全資産への需要が下がったことが要因となりました。

また、同日は先のようなことから米長期金利が上昇していることも金を押し下げることとなりました。

なお、同日発表の市場注目の米消費者物価指数は、コアを除き予想を下回っていましたが、市場への影響は限定的となりました。

金曜日金相場は、米中貿易協議への楽観的観測からドルが弱含み、株価が上昇する中で、トロイオンスあたり1477ドルへと先週の高値1516ドルから2.5%一時下げていました。

これは、米中貿易協議で追加関税の先送りを含む何らかの合意があるとの期待が高まっていたことからでした。

なお同日ポンドは英国のEU離脱問題をめぐり英国とアイルランドの両首脳が前日会談し合意に至ることが可能とし、同日EUのバルニエ首席交渉官が英国のバークレイEU離脱担当相と建設的な話し合いをしたと述べたことから、約3カ月半ぶりのポンド高となり、ポンド建て金相場は先週の高値から5.6%大きく下げていました。

その他の市場のニュ―ス


  • 中国の中央銀行人民銀行は、先月9月も5.4トン金準備を増加し、昨年12月から100トンを超える金を購入していたことが同銀行のサイトで明らかとなったこと。

  • 金を裏付けとするETFの残高が9月に75.2トン増の2808トンと、2012年の記録を塗り替えて史上最高値を更新したこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週一週間で2.1トン減で921.7トンとなっていたこと。これは、3週間ぶりの週間の減少。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、先週一週間で7.58トン(2.19%)増の351.5トンと、引き続き史上最高値を更新したこと。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、先週0.38%増加していたこと。

  • 金銀比価は先週は水曜日に86.56まで上げたものの、金曜日は再び85.13まで下げていたこと。

  • 先週末に発表されたコメックスデータによると、貴金属先物・オプションの資金運用業者の強気ポジションは、先週火曜日にトランプ政権が中国のウィグルの人権問題を理由に、ビザの制限をかけることが発表され、米中貿易協議の進展への懸念からも、プラチナを除き増加していたこと。なお、前週1日の貴金属先物・オプションの資金運用業者の強気ポジションは、前日に30ドルの急落を見せた翌日にパラジウム以外はすべて減少していたこと。

  • コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは8日に6.15%と776.4トン増加していたこと。その前週1日は19.48%と大きく減少していたこと。

  • コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に4.9%増の7386トンとなっていたこと。その前週1日は、10.6%減の7039トンとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、前週1日の31.7%減に続き、先週火曜日も17.8%減で22トンと、4週連続の下げとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは1日に2.17%増、先週火曜日に6.9%増で46.8トンと昨年2月末の高い水準となっていたこと。

今週の主要イベント及び主要経済指標

今週は、本日米中部分合意に中国が「継続協議を求めている」と報道されて不透明感が出て市場を動かしたように、引き続き米中貿易協議の行方について市場は注目することとなります。

また、本日の中国の貿易指標が予想を下回るものであったことから株価が弱含みましたが、明日の消費者物価指数や金曜日の鉱工業生産と第3四半期GDPなどの中国の重要指標も発表されることから、引き続きこれらにも注目することとなります。

そして、今週は日米欧や中国など20カ国・地域(G20)が木曜日から2日間の日程で財務相・中央銀行総裁会議を開くことから、この会議の内容も注目されることとなります。

その他の指標では、火曜日のドイツとユーロ圏のZEW景況感調査、米国のニューヨーク連銀製造業景況指数、水曜日の英国とユーロ圏の消費者物価指数、米国の小売管理と地区連銀経済報告、木曜日の米穀小売売上高とフィラデルフィア連銀製造業景気指数と鉱工業生産等となります。

ブリオンボールトニュース

先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

先週は旅行で英国を留守にしていましたので、お休とさせていただきます。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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