ニュースレター(2018年7月20日)1229.46ドル:パウエル議長の議会証言で下げ、トランプ大統領のコメントで上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1229.46ドルと、前週金曜日のLBMAの金価格のPM価格(午後3時)から1%下げています。この水準は金曜日のLBMAのPM価格としては今年最低となります。なお銀価格においては本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.37ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)からは2.8%の下げとなっています。
月曜日金相場は、米ロ首脳会談の結果を待つ中、トロイオンスあたり1239ドルへと緩やかに下げていたものの狭いレンジでの取引となりました。
同日は、アジア時間に発表された中国の第2四半期のGDPが減速していたことから、日本が祝日の中アジア株は下げていました。その後、EUからの離脱関連で政局が混乱している英株式は3日ぶりに下げ、欧州株も多少ながら下げる中、米国株も下げて始まっていました。
結果的には米ロ首脳会談の市場への影響は限定的なものとなりました。
火曜日金相場は、底値と見られていたトロイオンスあたり1236ドルを割り、1年ぶりの低さの1226ドルへと下げることとなりました。
これは、ドルが強含んだことが要因ですが、その背景はパウエルFRB議長の議会証言で、ここで議長が米労働市場は力強く、当面は段階的な利上げが最善との見方を示したことからでした。
この議会証言は全般米国経済の強さを確認するもので、「第2四半期は経済成長が強まったようだ」、「金融システムはかなり強固で、減税や歳出拡大が米経済の成長を支え続けるだろう」、そして大型減税は「民間需要を2~3年にわたって押し上げる」と指摘したことからも、ドルを強め株価を押し上げるものとなりました。
水曜日金相場はドルインデックスが95を超えて高止まりする中、トロイオンスあたり1221ドルまで一時下げて、1228ドル前後を推移することとなりました。
ドルインデックスが高止まりしているのは、FRBの利上げ観測がパウエル議長の議会証言などで広がっていること、また同日発表された英国とユーロ圏の消費者物価指数も予想を下回っていること等からBOEやECBの利上げが遅れるという認識から相対的にドルが買われるという状況からでした。
また、同日発表されたモーガンスタンレーなどの金融機関の良好な決算からも米株式が上昇していることも金を押し下げる要因にはなっているようです。
木曜日金相場は、前日と前々日のパウエル議長の議会証言がドル高を誘発し、ドルインデックスが95を超えて一年ぶりの高さで推移する中、トロイオンスあたり1220ドルを割り1211ドルと、前週終値から2.7%一時下げていました。
またプラチナ価格はドル建てで2004年7月以来の低値の794ドルを付け、先週終値から4.2%の下げ、そして銀価格はドル建てで15.18ドルまで下げ、前週終値からの下げは4.0%となっていました。
しかし、同日トランプ大統領がCNBCとのインタビューで、「強いドルは私たちにとって不利益だ。」、また「金利上昇は嬉しくない」とも言ったことが伝えられ、ドルが弱含みドル建て金価格が1228ドルまで上昇することとなりました。
本日金曜日は、昨日のトランプ大統領のインタビューに続き、本日朝のCNBCのインタビューで「5000億ドル(約56兆円)に進む準備はできている」と中国から輸入するすべてに関税を課す考えを表明し、貿易戦争への懸念が高まったことからドルが5月以来の下げを見せ、金相場はロンドン時間午後5時半にトロイオンスあたり1229ドルまで上昇しています。
なお、トランプ大統領は本日も「トランプ政権が経済成長のために努力したにも関わらず、FRBが金融引き締めを行うことに対しては満足していない」と述べたことが伝えられています。
その他の市場のニュ―ス
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木曜日人民元が対ドルで一年ぶりの低値となっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアは、今週は昨日4.1トン残高を増加させ、週間での増減は2.9トン増となっていたこと。そこで本日2.9トン減少していなければ、11週ぶりの週間での増加。また、前日比の増加は一月ぶり。 -
先週末に発表されたコメックス貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは先週火曜日に、ドルインデックスが高止まりし株価が堅調な中、全ての貴金属で減少(もしくはネットショートポジションが増加)していたこと。
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金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に24.73%減少し10トンと、2016年1月19日以来の低さとなっていたこと。そして、過去10年の平均の2.7%と低水準となっていたこと。
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銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に22.5%減少し1284トンへと、4週連続で減少していたこと。
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コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日も14週連続でネットショートで、0.05%とわずかながら、そのネットショートを43.74トンと増加させ、このフォーマットになった2006年6月以来の最大のネットショートポジションを引き続き更新していたこと。
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パラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも先週火曜日に19.85%減の16トンと、2016年6月末以来の低さとなっていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週はワールドカップとウィンブルドンも終わり、英国のニュースは再び英国のEUからの離脱(ブレグジット)関連ニュースがトップニュースを飾っています。
ご存知のように、今月初めにメイ政権が打ち出したEUからの離脱案が柔軟すぎることから、この数週間でメイ政権の主要閣僚や閣外大臣や政務秘書官等の要職についている人々が次々と辞職しています。
そして、今週はその離脱関連法案の採決が16日と17日に議会で行われ、賛成305と反対302で僅差ながら可決していました。
しかし、本日はその際に与党の院内幹事長がこの法案を否が応でも通すために、議会の取り決めの「ペアリング:産休中等で投票できない議員等がいる場合に、与野党議員が事前に申し合わせて全体の結果に影響を及ぼすことがないように投票を棄権する行為」を破って投票することを指示していたことがニュースで伝えられています。
この採決が否決された場合、メイ首相の求心力が大幅に低下することは明らかであったことからも、この取り決め破りが院内幹事長によって命じられたようです。
既に綱渡りの政権運営を行っているメイ首相を支えるためとはいえ、今回の行為がメイ政権を結果的に助けることになるのかは、来週以降の政局で明らかになることでしょう。