金市場ニュース

ニュースレター(2018年3月2日)1322.30ドル:パウエル議長のタカ派的議会証言で下げ、トランプ政権の保護主義政策で上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1322.30ドルと前週同価格から0.4%下げています。

週明け月曜日金相場は、ロンドン早朝にドルが弱含む中一時トロイオンスあたり1340ドルまで10ドルほど上昇した後、その後ドルが一転強含み、ドルインデックスが90間近まで上昇したことから、ロンドン午後に1335ドルまで押し下げられることとなりました。
 
また、長期金利は2.9%から2.83%へと2週間ぶりの低さへと下げ、これを好感して米株式は軒並み上昇していました。
 
同日市場にはリスクオンの流れもあるものの、翌日はパウエル新FRB議長の議会証言があり、市場参加者の多くは、これを見極めたいというムードもあったようです。  
 
火曜日は市場注目のパウエルFRB議長の下院での議会証言が行われ、そのタカ派的コメントからドルインデックスが90を超えて上昇し、長期金利も2.9%を超え、金はトロイオンスあたり18ドルほど大きく下げて、2週間ぶりの低さのトロイオンスあたり1317で終えることとなりました。
 
そのコメントとは「金融市場への懸念は無い」、「債券市場も本来の動きをしている。(昨今の動きは)投資家の景気停滞への懸念を示しているものではない」等でした。
 
水曜日金相場は、前日のタカ派的パウエル議長の議会証言後に上昇したドルと長期金利が落ち着く中、前日下げた水準のトロイオンスあたり1318ドル前後の狭いレンジで推移することとなりました。
 
木曜日金相場は、2ヶ月ぶりの低さのトロイオンスあたり1303ドルまで一時下げた後、1317ドルまで上げて終えることとなりました。
 
この下げの背景は、同日発表された米国個人消費支出価格指数が1.7%と予想の1.6%を上回り、その後発表されたISM製造業景況指数も60.8と予想の58.7を上回ったこと、またこのタイミングで始まった市場注目のパウエルFRB議長の議会証言で「緩やかな利上げを望む」「経済の加熱兆候は見られない」というコメントからも利上げ観測を広げ、ドルが7週間ぶりの高さへと一時上昇したことからでした。     
 
しかし、その後ニューヨーク時間にトランプ政権が鉄鋼とアルミニウムに追加関税をすることを発表し、保護主義政策への懸念から米株式が大きく下げ、ドルも弱含む中で金が押し上げられることとなりました。     
 
本日金曜日は、昨夜のトランプ政権による追加関税のニュースで、ドル安が進み、世界株式が下げる中、金は上昇しトロイオンスあたり1325ドルを付けた後多少戻しています。  
 
また本日は、日本銀行の黒田総裁が物価目標2%の達成時期を2019年ごろとし、その頃に出口(金融緩和政策から)を検討していると、時期に初めて明言したことから、円が105円まで強含んでおり、2016年11月以来の高水準ともなっています。

その他の市場のニュ―ス

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までにし4.8トン増加し833トンとなっていたこと。これで、3週連続で週間において増加傾向。
  • ロシア中銀が先月20トン金準備高を増加させ1,857トンと、ワールドランキングで中国を超えたとのこと。ちなみにロシアは2015年3月から毎月金準備を増加させており、2000年からは500%増
  • 今週月曜日に金と銀のレシオ(同じ重さの銀価格に対する金価格の比率)が25年来の高さ近くまで上昇していたこと。つまりは、銀が金と比較して25年ぶりの割安。
  • 先週末に発表された先週火曜日のコメックスの金・銀・プラチナ・パラジウムの資金運用者のネットロングポジションは、銀を除き2週間ぶりに全て増加し、金のネットロングポジションは、4.23%増の582トン。
  • コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週に続きネットショートで1622トンと前週からそのネットショートポジションを31.5%増加させていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも先週火曜日に9.48%増加し44トンと2週間ぶりの増加となっていたこと。
  • パラジウム先物・オプションも少ないながらも0.32%増の49トンと5週間連続の下げから増加となっていたこと。

ブリオンボールトニュース

今週は、ボラティリティが高まる市場から守る目的の金投資について主要英国紙が記事をまとめ、ブリオンボールトのリサーチダイレクターのエイドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。

主要英国経済紙City AM「ボラティリティの高まる市場から資産を守るための金購入」

この記事では金を保有することで荒れる市場のヘッジを提供することができるとまとめ、エィドリアンの「米長期金利が上昇する中で金は堅調に推移している。」、「インフレ上昇の気配と株価への懸念等が、資産保全の目的から金を魅力あるものとしている。そして、英国投資家にとっては2019年3月の英国のEU離脱によるボラティリティの高まりも追加リスクとなっている。」というコメントを紹介しています。

ブルームバーグ「金がインフレと利上げ時に効果的であることを示す5つのチャート

この記事では、パウエル新FRB議長の昨日の議会証言のようなタカ派的スタンスは金相場を押し下げるとしながらも、インフレ上昇はヘッジ目的の金の需要を高めるとしそのチャートを示し、過去に米政策金利が上昇した際にも金相場は上昇したチャート、株価と金相場の相反関係を示すチャート等と共に解説しています。

そして米国の財政赤字がさらなるドル安を生み出す可能性に言及し、エィドリアンの「世界の人々が米国債を購入することを望まなくなった場合、米国債価格は下げることとなり、そのような状況下で金相場が上昇しないことを想像するのは難しい。」というコメントを取り上げています。

今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週は欧州は大寒波に襲われており、欧州大陸では-30度を記録し死者が出るほどの厳しいもので、英国も地域によっては警戒警報がでる気温の低さと積雪からも、このニュースが日々トップニュースとして伝えられています。

この寒波は、シベリアからの寒気が原因であることから「東からの獣(the Beast from the East)」というあだ名が付けられていますが、英国では28日から大雪となり、気温は日中でも氷点下となっており、ロンドン市内の地下鉄は遅延はありながらも動いていますが、ロンドンと地方都市を結ぶ多くの公共交通機関がまひ状態に陥っています。

このような寒波は2013年以来とのことですが、ヨークシャー地域では1000の学校が閉鎖され、スコットランド、英国北東、中部や南西、ウェールズでは数百戸が停電となっており、今朝の段階でこの寒波の影響で4人の死亡が確認されているようです。

そのような中でも、4輪駆動を所有する人々が、雪のために移動できなくなった医療関係者や患者の運搬を助けたり、結婚式に遅れるところだった新郎とその友人を会場まで連れて行くなど、人々の助け合いの精神や強さを伝えるストーリも伝えられています。

記録によると1971年から2000年の英国の冬の平均気温は3.7度で、今世紀ロンドンが最も寒かったのは2009年から2010年で、その年の英国の冬の平均気温が1.51度とのこと。しかし、1962年から1963年の1月の平均気温は-2.1度など、前世紀には平均気温がマイナスとなった冬もあったようです。

ちなみに、英国の過去最低気温は‐27.2度で、1982年と1995年にスコットランドで記録したとのこと。今週はロンドンでも‐4度を記録していましたので、今年の冬の平均気温が過去の記録と比較してどれぐらいになるのか興味深いものです。

先月は春の訪れを示すクロッカスや雪割草が咲き始めていましたが、英国の春はここにきて少し足踏みをしてしまったようです。

英国主要紙のイブニングスタンダードがロンドンの雪景色の写真を集めていますので、ご興味があればこちらでご覧ください。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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