ニュースレター(2018年11月9日)注目イベントが終わり米利上げ観測の広がりで金は急落
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1210.64ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.7%下げています。また銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.34ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から3.2%下げています。
今週は市場が注目していた米中間選挙とFOMCが行われ、共に予想通りの結果となる中、不安材料が出尽くし米利上げ観測が広がる中、金は5営業日連続で下げる方向で、一月ぶりの低さへと下げています。それでは、今週の動きを曜日ごとにお伝えしましょう。
月曜日金相場は、ドルインデックスが先週の17ヶ月ぶりの高さから下げる中で、先週の終値から0.4%減のトロイオンスあたり1230ドルへと下げて終えていました。
今週は米国中間選挙が翌日、水曜日と木曜日のFOMC、米のイラン制裁第2弾が同日再開する中で、米中の貿易摩擦の悪化と政治関連イベントが多い中、比較的狭いレンジのトロイオンスあたり7ドルで動いていました。
同日は中国の周主席がトランプ大統領の「米国第一」の政策を非難するなど、両国の歩み寄りが見えない中アジア株は下げていました。また、イタリア予算案を巡るユーロ圏との交渉に関しては、ユーロ圏の財務相会議が同日行われる中、週末イタリアの副首相はEUとの対立姿勢をファイナンシャルタイムズとのインタビューで示していました。
そして、英国のEU離脱に関しては、最大の難関となっている英アイルランド国境問題で、EU側がメイ英首相に「譲歩」したと複数の英紙が週末までに報じていることに対し、メイ首相官邸は否定していましたが、ポンドが強まりポンド建て金相場が下げていました。
火曜日金相場は米国での中間選挙の投票が同日であることからも、多くの金融市場が取引薄である中、一時トロイオンスあたり1235ドルを付けた後に1226ドルまで下げる等神経質な動きをしていました。
水曜日金相場は、米中間選挙の結果予想通り民主党が下院を抑え上院は共和党が抑えたことから、欧米株価が上昇する中、一時トロイオンスあたり1235ドルまで上昇したものの、その上げ幅を失い1225ドルで終えていました。
なお、この間ドルインデックスは2週間ぶりの低さへと下げ、米長期金利も下げていました。
木曜日金相場はドルが強含む中トロイオンスあたり1222ドルまで下げて終えていました。
ドルが強含んだのは、同日発表の米国新規失業保険申請件数が45年ぶりの低水準になったこと。また、同日夕方発表のFOMCでは予想通り金利は据え置かれましたが、声明の中で米国経済に関する楽観的な内容であり、先月の2012年以来の世界同時株安に振れることもなかったことから、今後の緩やかな利上げが引き続き行われることも確認されたことからでした。
本日金曜日は、米生産者物価指数が予想2.5%を上回り前年比2.9%となったことから、FRBの利上げ観測がさらに広がり、ドルインデックスが上昇する中金相場はトロイオンスあたり10ドルを失い1209ドルへ一時下げ、午後4時の段階で1212ドル前後を推移しているものの一月ぶりの低さへと下げています。
その他の市場のニュ―ス
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金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高は先週まで4週間連続で週間ベースで増加していたものの、今週木曜日までで3.9トン減の755トンへと減少していたこと。 -
田中貴金属が地金型金貨の売買価格を改め、買取時のプレミアム上乗せを止め、買取品の再販をやめて「新品」販売に特化すると伝えられていたこと。 -
先週末に発表されたコメックス金先物・オプションの資金運用業者ポジションは、先週火曜日にドルイデックスが17ヶ月ぶりの高さへ上昇していた際に、16週続けてネットショートで、そのポジションも前週から69%減の141トンへと増加させていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者ポジションも、先週火曜日に16週続けてネットショートで、そのポジションも15%増の3,822トンとなっていたこと。 -
それに対し、プラチナの先物・オプションの資金運用業者のポジションは、4月10日以来30週続けてネットショートではあるものの、そのポジションは87%減で0.7トンと4月25日以来のネットショートとしては最小となっていたこと。 -
唯一ネットロングを維持しているパラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に5.8%減の36トンになっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週も米国の12月の利上げを読むうえでも、米国経済指標を市場は注目し、それは水曜日の消費者物価指数、木曜日のパウエルFRB議長発言、小売売上高、ニューヨーク連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀製造業景気指数等となります。
また、対ドル為替レートを動かす可能性のある、先ほどイタリア政府は予算案の柱は変更せずと述べたことが伝えられていますが、月曜日がデットラインとされているイタリアの予算案修正関連ニュースや水曜日のユーロ圏第3四半期GDP等も市場は注目します。
ブリオンボールトニュース
今週は弊社が毎週まとめている金投資家の傾向を示す金投資家インデックスのプレスリリーが発信され、日本語で金に関する情報を網羅しているゴールドニュースサイトで「[金投資家インデックス] 株式市場の6年ぶりの大幅な下げは個人投資家を金投資へ向かわせる」と取り上げられています。この内容は弊社市場分析ページの「世界同時株安で金投資が記録的な水準へ」でご覧いただけます。
その他、先月の世界同時株安もあり金関連記事が発信される中で、主要メディアで弊社やリサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
英国主要経済サイトのThis is Money「英国のEUからの離脱が迫り、株価急落等とボラティリティも高まる中、金を買うべきなのか」
8月の1180.40ドルから10月末には1233.85ドルへと上昇している金がポートフォリオの分散目的上重要であると考える投資の専門家がいることし、そのコメントを取り上げ、ブリオンボールトを含む金投資の様々な方法を紹介しています。
米主要経済サイトのMarket Watch「金が良好な雇用統計で週間の下げへ」
ここでエィドリアンは、「火曜日の米中間選挙やFOMCを翌週に控えて先行きが不透明であることからも、金は1月以来の上昇基調を一旦休止している。」とし「しかし翌週以降でより重要なイベントはインドのディ―ワーリーである可能性もある。しかし、世界第2位の消費国は最も需要が高まる際にルピー安からもルピー建て金価格が6年ぶりの高さとなっている。そのために、贈答や投資目的の金需要へ悪影響を与えている。」とコメントしています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2018年11月5日~9日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2018年11月12日~16日)来週の予定をまとめています。 -
世界同時株安で金投資が記録的な水準へ
今週ロンドンでは第一次大戦終戦100周年であることから、様々な催しが行われているのでご紹介しましょう。
毎年、11月第2週の日曜日は1918年11月11日の第一次大戦終戦を記念してリメンバランス・サンデーという名で様々な戦没者追悼式典が行われます。
この頃に英国を訪れた方々は気が付いたかと思いますが、退役軍人や戦没者福祉団体のロイヤル・ブリティッシュ・リージョンがこ の頃に英国を訪れた方々は気が付いたかと思いますが、退役軍人や戦没者福祉団体のロイヤル・ブリティッシュ・リージョンが駅やスーパーマーケットなどで募金を募り、 寄付をした人が返礼としてもらえる造花のポピーを胸につけます。また、第2日曜日には、追悼記念式典がロンドン市内で行われ、昨年からエリザベス女王に代わりチャールズ皇太子や王室の人々出席して慰霊碑にリースを捧げます。
今年は特に100周年であることから、ロンドン塔では「Beyond the Deepening Shadow(深まる影を超えて)」というインスタレーションを今週一週間行っており、多くのメディアが伝えていますのご紹介しましょう。
2014年には、第1次大戦開戦100周年ということで「Blood Swept Lands and Seas of Red(流血の大地と紅の海)」というインスタレーションが行われました。この舞台デザイナーのトム・ハイパー氏と陶芸家ポール・カミンズ氏がによるインスタレーションでは、戦没者と同じ数の88万8246本の陶器のポピーがロンドン塔の堀に埋め尽くされました。
今年も、トム・ハイーパー氏のインスタレーションとのことですが、ロンドン塔の堀に1万の小さな灯をつけるというものです。これは、毎日17時に始まり、50分間かけてビーフイーターと呼ばれるロンドン塔の衛兵隊で退役軍人の方々であるヨーマン・ウォーダーズや現役の軍人やボランティアによって灯に点火されます。
この間 ヨーマン・ウォーダーズの影を壁に浮かび上がらせたり、戦争文学で知られるメアリー・ボーデンの詩から構成された合唱などもあり毎晩21時まで行われています。
この他にもロンドン東にあるクィーンエリザベス・オリンピックパークでは「Shrouds of the Somme(ソンムの聖骸布)」という白い布に包まれた人形7万2396体が並べられている、ロブ・ハード氏のインスタレーションも今月18日まで行われています。この人形は、第一次世界大戦中にフランスのソンムで犠牲になった英連邦の兵士を象徴しているとのこと。
第1次世界大戦や第2次世界大戦を戦った人々が高齢となり、人々の中でも戦争の記憶が薄れる中、このようにインパクトのあるインスタレーションで、戦争の悲惨さを伝えていく試みは、 歴史を風化させずに次世代に伝えていくことへの英国の人々のコミットメントでもあるようで心強く思い、ここでも紹介させていただきました。